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サステイナブルな開発ストーリー アクアの環境性能への想い アクア開発責任者 小木曽聡

アクアが2011年12月に発売されました。ハイブリッド車をより多くの人、若い人にも楽しんでいただくことを目的に、2020年のコンパクトカーのあるべき理想の姿を追求したモデルです。JC08モードの走行燃費値は35.4km/L。燃費の重要性を増すコンパクトクラスの中でもその数値は際立っており、日常のさまざまなシーンで世界No.1の低燃費(2011年12月時点)を実現します。
開発責任者は初代プリウスを市場に送り出し、以来、量産ハイブリッドの企画・開発に携わり続ける小木曽聡チーフエンジニア(CE)。妥協を許さずこだわりぬいて造り上げたコンパクトハイブリッドは、小木曽CE の19年間の知恵と技術が結集された渾身の作といえます。環境性能を中心にクルマづくりを通じた社会への貢献とはどういうことなのか、理想の姿を追求したコンパクトカーに何が求められ、どのような革命を起こしたのかを小木曽CEがモノづくりの視点で語ります。

アクア開発責任者 小木曽聡
2012年1月撮影

※プロフィール
アクア チーフエンジニア 小木曽聡
所属 製品企画本部製品企画チーフエンジニア(常務理事)
略歴 1983年トヨタ自動車入社。
入社後、シャシー設計部に配属され、主にFF車のサスペンションの設計などに携わる。1993年に東富士の研究所に異動となり、新しいプラットフォームとシャシーの先行開発を担当。同年、初代プリウスの開発プロジェクトにつながる『G21プロジェクト』の立ち上げに参画。以来、19年間にわたり、歴代プリウスをはじめ、プリウスα、PHV、EV、FCVにいたるすべての製品企画・開発に携わる。

環境対応はクルマにとって当然の取り組み、その核がハイブリッド

環境の世紀ともいわれる21世紀において、環境対応をどのように捉え、開発に取り組んでいますか。

私は、子どもの頃からクルマが大好きで、自動車メーカーに入社したのも、「自分の手でクルマを開発したい」という想いからでした。そんな私にとって、自動車が将来にわたりお客様に喜んで受け入れていただくための生命線は、ずっと「安全」と「環境」だと考えています。それは、私の中ではごくごく当たり前のことだという認識です。
私が初代プリウスの開発プロジェクトにつながる「G21プロジェクト」に参画したのは1993年のことですが、それ以前から社内では、環境問題とかエネルギーの枯渇のこと、都市の大気汚染、それにCO2のことを大きな社会問題として捉えていました。
初代プリウスは、「21世紀のコンパクトセダンのあるべき理想の姿」を追求したクルマですが、それを具現化する手段がハイブリッドシステムでした。
燃費を良くして、エネルギー資源の負荷を減らすというハイブリッド車の価値は大きく、ハイブリッド車を普及させ、乗用車のスタンダードとなるようにすることが私の仕事です。
2011年のトヨタ車の国内販売台数の約25〜26%がハイブリッド車ですが、いずれ従来型のエンジン車とハイブリッド車の台数が逆転する日が来ると思います。燃料の多様化を見据え、ハイブリッド車を核に次世代環境車の開発・普及を促進したいと考えています。

2020年のコンパクトカーのスタンダード、それがアクア

では、アクアというクルマはトヨタにとってどのような位置づけにあるクルマですか。

アクアは、ハイブリッドカーをより多くの人、特に若い人にも当たり前の選択として選んででいただくことを目的としたクルマで、全世界に展開するグローバル戦略モデルです。
開発コンセプトは、「2020年を見据えた、コンパクトカーの革命を起こすようなハイブリッド車の提案」です。アクアは、決してプリウスの小型版という位置づけではなく、また、ハイブリッドありきという狭義の視点で開発したクルマではありません。
よりコンパクトで軽く、使いやすく楽しいクルマ、そして手の届く価格で、燃費性能No.1を誇るハイブリッド車、それがアクアです。
そんなコンセプトの下に開発されたクルマですから、理想的と考えられる目標はどれも高く、実現するには開発チームの総力を結集して取り組まなければならないようなテーマばかりでした。しかし、妥協を許さずこだわりぬいて造り上げたコンパクトハイブリッドは、自信を持ってお客様にお届けすることができました。
なお、ネーミングも、より多くの人に楽しんでもらおうということを意識し、水のようにクリーンで自由なイメージを持つという意味で、ラテン語の水を意味する『アクア』と名付けました。

コンパクトクラスにハイブリッド車を投入するインパクトはどのようなものですか。

トヨタは、技術開発によって環境負荷を低減するとともに、環境資源に貢献するためにも“エコカーの普及”が大切だと考えています。そのためには、市場でもっとも需要の高いコンパクトクラスにハイブリッドシステムを搭載することが必要でした。
コンパクトクラスのハイブリッド化という構想は、初代プリウス発売後からずっとあったのですが、技術を成熟させないと現実的な製品に結び付かない。今までは、ハイブリッドのメリットを出すためには必然的にある程度大きな車体のクルマが必要で、これまでにガソリン車から派生したトヨタのハイブリッド車も大きく高価なクルマがほとんどでした。
もともと燃費の良い小型車にハイブリッドシステムを搭載してメリットを出すのは容易ではないのです。
しかし、初代プリウス発売から14年、そして3代目プリウス発売から2年半の歳月で積み重ねた技術進化によって、製品化に至りました。
コンパクトクラスにハイブリッド車を設定したことで、ハイブリッド車が“普通のクルマ”という認識がこれまで以上に社会に定着し、クルマ選びの際にも“当たり前の選択肢”として受け入れていただけるのではないでしょうか。

では、具体的にコンパクトサイズのアクアにハイブリッドシステムを搭載する上で大変だったことは何ですか。

今回、アクアに搭載した動力システムは「THSU」で、エンジンは2代目プリウスのそれと同じ1.5Lアトキンソンサイクルエンジンを採用しました。しかし、単にプリウスのシステムを流用したわけではなく、根本から見直しを図りました。
まず、開発段階で、コンパクトハイブリッドを成立させるため、先にパッケージとシルエットを決めました。するとパッケージからの要求が多いため、様々な点で従来の考え方を見直さなければいけません。小さなクルマにハイブリッドシステムを搭載するためには、システムやパーツを、より小さく、軽く、安く作らなければなりません。原理としては、小さく、軽いものを作れば安くなるはずですが、作り方が難しいと安くはなりません。しかも、無理やり小さくすると効率が下がってしまいます。もちろん環境性能だけでなく、手の届く価格で、使いやすく楽しいクルマでなければなりません。室内サイズも十分なスペースを確保しなければいけません。モーターや電池を搭載するからといってスペースが確保できないといった言い訳はできないのです。

こうした多くの課題を解決するため、エンジンは部品の約70%を新設し、クールドEGR(排出ガス再循環)システムや電動ウォーターポンプなどを新たに採用することで、さらなる効率化と小型・軽量化を両立させました。また、モーターに巻く銅線の断面を従来の丸型からきしめんのように角形の平たい形状にして隙間なく巻くことで効率を上げ、軽量化に結びつける工夫なども盛り込まれています。
小型化した最新のハイブリッドシステムは、燃費や走行性能はもちろん、室内の広さにも貢献しています。

車室内では、通常リアシートの後ろに設置する駆動バッテリーを、アクアではバッテリーの容量を減らして小型化しリアシートの下に積んでいます。これもハイブリッドシステムの性能をコンパクトカーで成立させるための革命の一つだったんです。もちろんバッテリーの容量を減らしても、プリウスと同等のEV走行性能を確保し優れた燃費を実現しています。
リアシート下に設置されたバッテリーは、かかとの出っ張りを逃げるよう下部を絞った形状としている
リアシート下に設置されたバッテリーは、かかとの出っ張りを逃げるよう下部を絞った形状としている
【車両重量比較】
アクア(L) 2代目プリウス(L)
1,050kg 1,350kg
【小型・軽量化の一例】
ハイブリッド・トランスアクスル 駆動用・発電用モーターと動力分割機構などで構成されたトランクアクスルを専用設計。モーターに巻いてある銅線を糸状ではなく、平たい形状にすることで効率化を図り、銅線の量を削減。加えてギアトレーンなどの最適設計などにより、トランクアクスル全体で8kg軽量化(3代目プリウス比)
ニッケル水素電池 2代目プリウスの168セルから120セルに低減しリアシート下に設置。加えて、効率的な各部品を配置することで電池サイズを約29%コンパクト化、重量で約10kg軽量化(3代目プリウス比)
高張力鋼板(ハイテン材) 高張力鋼板と呼ばれる材料をボデーの57%に採用
エンジン+ハイブリッドシステム システム全体で42kg軽量化(3代目プリウス比)
【ハイブリッドシステム構成図】
ハイブリッドシステム構成図

ゲーム感覚で運転する楽しさを広げるエコドライブサポートシステム

“使いやすく楽しい”は開発テーマの一つですが、環境面でもそのような工夫はありますか。

実走行燃費向上のためには、運転の仕方が大切ですが、トヨタはクルマの燃費向上に力を尽くすとともに、実走行燃費向上へ貢献するエコドライブ支援装置の開発・普及に努めています。今回、このエコドライブサポートシステムに“運転する楽しさ”を広げる機能を盛り込みました。
アクアには、エコドライブの状態をわかりやすく確認できるハイブリッドシステムインジケーターを全グレードに標準装備していますが、さらにオプション設定として、ゲーム感覚で楽しくエコを実践できるトヨタ初の「エコジャッジ」と「エコウォレット」というコンテンツを採用しました。
エコジャッジは、走行シーンを「エコ発進」「安定走行」「エコ停止」の3パターンに分けて、それぞれのエコ運転レベルを5段階でリアルタイムに表示します。また、一回の発進・停止毎に、総合評価を100点満点で採点します。
エコウォレットは、走行距離に応じて消費したガソリン価格がわかります。お得画面というのがあるのですが、比較したい燃費を入力しておけば、それと比べて自分のクルマがどれだけお得に走っているかをガソリン価格で表示します。燃費の履歴が表彰台のように表示されたりするので、「燃費のハイスコア更新!」といったように、まさにゲーム感覚でエコドライブを楽しんでいただけるのではないでしょうか。
アクアのパッケージオプション「TFTマルチインフォメーションディスプレイ」ついて詳しくはこちら
エコジャッジ エコウォレット
ゲーム感覚でエコ運転ができる「エコジャッジ(左)」と「エコウォレット(右)」

新たなプロモーションで目指した姿は、企業として成長しながら社会にも貢献

アクアでは今までにない一般参加型のプロモーション活動『AQUA SOCIAL FES!!』を展開していますが、それについて詳しく教えていただけますか。

このプロモーションは、アクアの商品プロモーションと社会貢献活動を両立させて、一般の参加者に楽しんでいただく活動です。スローガンには、アクアが未来のスタンダードになる製品として、「あしたの『いいね!』をつくるんだ。」を掲げています。
具体的には、日本全国50ヵ所で地域やNPOの方々とトヨタグループが共に、車名にちなんだ“水”をテーマにした自然環境の保護・保全する地域社会貢献活動を行います。アクアは、作業のサポートをしていきます。
この活動には、このクルマで社会に貢献したいという強い想いがこめられています。そして、環境社会貢献活動は、短期間で成果を出せるものではないので、1年以上のスパンで取り組んでいく予定です。開発コンセプトの「10年先を見据えた」という視点からも、私たちはこのプロモーションを、企業と社会と個人が垣根を超えて共に成長する“共成長マーケティング”と捉えています。活動を行う中で、企業として成長しながら社会にも貢献する、そんな活動を目指しました。
『AQUA SOCIAL FES!!』のウェブサイト(http://aquafes.jp/)では、各地の活動が紹介されており、情報はFacebookページ(http://www.facebook.com/aquafes)でも告知されるので、興味を持っていただいた方は、是非一度サイトをチェックしていただきたいですね。
『AQUA SOCIAL FES!!』のウェブサイトについて詳しくはこちら
『AQUA SOCIAL FES!!』のFacebookページについて詳しくはこちら
『AQUA SOCIAL FES!!』のウェブサイト(2012年1月時点)
『AQUA SOCIAL FES!!』のウェブサイト(2012年1月時点)