開発責任者が語る環境への想い

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦 2015年4月取材

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦

2012年8月、初代のDNAである『直感性能』をブランドイメージとして確立させるべく、よりスポーティでダイナミックに生まれ変わった日欧戦略車「オーリス」。欧州ではCセグメントと呼ばれるクラスに属する大きさで、このセグメントにはVWゴルフ、フォードフォーカスといった強力な競合車がひしめいています。その中で2代目オーリスは存在感のある外観デザインと内側に秘めた環境性能と快適性能をバランスよく融合させ、ライバル車を凌駕する性能に仕上がりました。
そして2015年4月、お客様の評価や市場の動向を踏まえ、スポーティさにさらなる磨きをかける大規模な商品強化を実施。トヨタ初となる1.2Lダウンサイジングターボエンジンを導入し、オーリスの走りのテーマであるレスポンスの良さに磨きをかけるとともに、標準設定のアイドリングストップ機能とも相まって高レベルの環境性能を実現しています。また、競合に埋没しない存在感とともに、時代が求める安全性能など時流に合わせた商品力強化アイテムも付与しクルマの魅力をさらに高めたオーリス。
その設計・開発の責任者として現場の指揮を執り続けた遠藤邦彦が、スポーツハッチバックという明快な個性に盛り込んだ2代目オーリスの環境性能を語ります。

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦
プロフィール(2015年4月取材)

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦

所属
製品企画本部ZE 主査
略歴
1968年福島県生まれ。東北大学工学部大学院終了後、1994年トヨタ自動車入社。入社後、エンジン部で1.5~2.4Lクラスの直列4気筒ガソリンエンジンの機能評価、本体設計を担当。2001年、製品企画本部に異動し、初代カローラバーソ、初代オーリスを開発するとともに、新コンセプト車の企画、開発に従事。2014年より2代目オーリスを担当。

エンジン開発で経験した環境性能向上の真剣な毎日

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦

-環境の世紀ともいわれる21世紀において、環境対応をどのように捉え、開発に取り組んでいますか。

私は大学時代、航空機用ラムジェットエンジンの燃焼改善(燃料の微粒化)を研究していたこともあり、それなりに環境技術を意識はしていたものの、身に染みて環境技術の大切さを実感し始めたのは、トヨタに入り業務に携わるようになってからです。
入社当時、エンジン部で機能評価を担当していたNZエンジン、ZZエンジンは、小型・軽量エンジンの先駆けで、車両重量の低減とセットで低燃費を実現しました。その後、カムリやエスティマ、RAV4などに搭載された直列4気筒のAZエンジンの本体設計を担当することになりましたが、「走りを犠牲にせず、燃費の良いエンジンをお客様に提供するのは自動車メーカーとしての責務である」と、当時の上司からも強く指導を受け、軽量化だけでなく、直噴技術を用いた燃焼改善にも取り組みました。環境を常に意識して、実践的な知識を身につけるためにクルマの環境性能を徹底的に学び直したのはこの頃からです。
信頼性が高く、安全で安心して乗ることができ、環境にやさしいクルマをお客様にご提供するのは自動車メーカーの責務であり、当然のことだと思います。ただ、こうしたことに加え、クルマは楽しくなければならないという考え方は、このエンジン部時代に指導をいただいた諸先輩の教えに強く影響しています。

オーリス開発責任者 遠藤 邦彦

環境意識の高い欧州で受け入れられたスポーツハッチバック

-オーリスはトヨタにとってどのような位置づけにあるクルマですか。

初代オーリスは世界累計販売台数113万台、うち欧州では約77万台が販売されました(日本は約10.7万台)。この数字は、ヤリス(日本名ヴィッツ)とともに欧州におけるトヨタ車販売台数の屋台骨を支える1台です。
2012年のモデルチェンジ後は、欧州でご好評いただきハッチバック市場における販売台数順位を上げることができました。欧州におけるトヨタ車の販売シェアはまだまだ小さいものですが、その中でオーリスがこうして欧州市場で受け入れていただけたのは、利便性や実用性はもとより、欧州のトレンドである環境性能の高さも寄与したのではないでしょうか。

欧州にはクルマをクラス分けする際、ボデーサイズとボデータイプを目安にしたセグメントという分類法が使われます。AからFまで6段階ある中でオーリスはCセグメントと呼ばれるクラスに属し、欧州では最も大きな販売ボリュームを占めています。
オーリスのようなハッチバックは、以前は国内でも若い方を中心としたエントリーモデルとして見られていたのですが、近年のダウンサイジングの傾向に伴い、大きなクルマからこうしたハッチバックに乗り換えるお客様も多く、今ではますますCセグメントの市場規模が拡大しています。そのため競合車も多く、大激戦区と呼ばれるこのクラスで存在感を出すためにはあらゆる面で高レベルの仕上がりが要求されます。欧州は石畳の舗装環境に加え、都市部は狭い路地も多い。農業国であれば不整地のため悪路も多いうえ、背の高い欧州人のために広い室内空間も重要視されます。こうした条件をクリアしながら、環境性能も高いレベルで要求されます。また、厳しさを増すグローバル競争の中で生き残るためには、一目見てお客様に何かを感じていただけるインパクトが大切です。今回のマイナーチェンジでは、「スポーツハッチバック」のコンセプトをキープしながら、外観スタイルはよりダイナミックでスポーティに、内装も感性品質を大幅に向上させ、さらに時代が求める安全性能を高めるなど大幅な商品強化を実施しています。環境性能や快適性能をベースにクルマが本来持つ魅力『カッコよくて走りのいい一台』に焦点を当てたクルマ、それがオーリスです。

Cセグメントは最もバランスが良くパッケージングされているため欧州で人気

「パワーの象徴」から「燃費とトルクのためのデザイス」へと大きく変化したターボエンジン

1.2L直噴ターボエンジン「8NR-FTS」
1.2L直噴ターボエンジン「8NR-FTS」

-エンジンのバリエーションとその環境性能について教えてください。

エンジンは、従来の1.5L車と1.8L車に加え、走りの楽しさと低燃費を高次元で両立する、高熱効率の新世代直噴ターボエンジンを搭載する1.2L車を新グレードとして設定しました。
新グレードの1.2L車は、走りの楽しさと低燃費を高次元で両立する新世代ターボエンジンで、その特性を最大限に引き出すために「駆動力ディマンド」という新制御を採用したSuper CVT-iとの組み合わせによってアクセル操作に対するレスポンスの良さや滑らかで爽快な走りを実現しています。また、シリンダーヘッドと一体化したエキゾーストマニホールド、可変角を拡大したVVT-iW(吸気側)、先進の燃料噴射システムD-4Tの採用などにより高熱効率を追求するとともに、アイドリングストップ機能(Stop & Start System)などの燃費向上技術を採用することで、JC08モード燃費はシリーズ最良の19.4km/Lを実現しています。

1.2L直噴ターボエンジン「8NR-FTS」
1.2L直噴ターボエンジン「8NR-FTS」

そもそも「なぜ今ターボなのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、一昔前はパワーの象徴であったターボは、「燃費とトルクのためのデバイス」へと大きく変化しています。過給することでエンジン排気量を増やすことなくトルクをアップし、熱効率を改善するというターボの機能は、今も昔も変わりませんが、以前のターボは高回転重視のパワーアップデバイスとして注目され、一気にパワーとトルクがアップするスポーツカー向きのエンジンに主に使われていました。反面、低回転域ではターボが効かず、常用域での燃費改善効果は期待できませんでした。
現在の過給ダウンサイジングエンジンは、常用域を含む低回転でもターボが効くように改良されており、走りと燃費を両立するようにできています。
こうしたトルクがあってしかも低燃費なダウンサイジング(小排気量)エンジンにおけるターボチャージャーの働きは、加速時にエンジンのパワーをサポートするハイブリッド車の電動モーターの働きに似ており、欧州でも人気が高く、数年前からエコ技術としてトレンドとなっています。

小さな個々の技術を積み重ねて実現した環境性能

-開発において環境性能を向上させるために大変だった点は何ですか

過給ダウンサイジングターボエンジンは、トヨタも久しく号口モデル(量産車)でやっていなかったため、ターボをどのように使うかということを改めて検討し、そのためには先行技術をうまく活用しながら、そこに新技術を盛り込むように開発を進めていきました。大変だったのは、小排気量で燃費を稼ぎ、走りの部分はしっかりターボでトルクを補う、そのためにCVTでどのような変速性能を取らせるのか、といった使い方の部分に苦労しました。
エンジン部でいえば、筒内に燃料を吹く際、一発で吹かずに小分けに吹くことで排ガスがきれいになるといった工夫をはじめ、バルブタイミングをワイドレンジで調整可能になるよう新しい機構を取り入れたり、シリンダブロックが早く暖まるように暖気時にブロックの冷却水の循環を止める機構やウォータージャケットに少しスペーサーを入れる工夫、といった要素技術一つひとつを量産化することが大変でした。

高熱効率・低燃費過給ガソリンエンジンの採用技術
高熱効率・低燃費過給ガソリンエンジンの採用技術

意匠と環境性能を両立したトヨタのクルマづくりの新機軸

板金一体成型のリアスポイラー
板金一体成型のリアスポイラー

-エンジン以外の環境に貢献する取り組みを教えてください。

2代目オーリスは、空力や衝突安全性能、居住性に配慮しながら、空力向上と低重心化を実現しています。
エクステリアは、低重心化とパッケージを活かすことによってダイナミックなデザインを実現し、同時に全高を下げたことで前面投影面積を小さくして空気抵抗を減らしています。
高剛性を維持しながら軽量化を実現するために、たとえば前後ドア開口部の下側のサイドボデーパネルなどに980Mpa級の高張力剛板を採用して補強パッチの数を減らしたり、板厚を下げることで軽量化を行っています。これによりボデーパネルでは6.3kgの軽量化に成功し、初代モデルに設定のあった樹脂製リアスポイラーは板金一体型とすることで0.8kgを軽量化しています。
軽量化は燃費の他に、資源の節約、運動性能や乗り心地の向上にもつながっています。
また、プリウスやアクアなど、空気抵抗の値が小さいトヨタ車に共通してみられるリア後端を削ぎ落としサイドを細く絞った角形形状は、車体後方の渦を車体から遠ざける手法ですが、この手法を2代目オーリスも取り入れています。

板金一体成型のリアスポイラー
板金一体成型のリアスポイラー

感性質感を高める美しさと環境配慮の機能性を併せ持つファブリックを新採用

-資源にこだわった点は何ですか。

ラゲッジルームのパッケージトレイとデッキボードの材料に、軽くて強い植物原料由来のケナフを採用しています。ケナフは生育が早くCO2の吸収能力が高い一年草で、これにPP(ポリプロピレン)を混合した基材を成型し製品化しています。ケナフの成分は繊維質なので細かく粉砕したぐらいでは型内に流れず、また形状が複雑なため成型が難しいのですが、さまざまな工夫を重ね製品化することができました。

また、1.2L車のシート表皮にスエード調の人口皮革「Ultrasuede®(ウルトラスエード)」を採用しています。この素材は、超極細繊維が束状になって緻密に絡み合った天然スエードと同じような構造をした次世代素材であり、上質な素材感、滑らかな手触り、そして豊富なカラーバリエーションとその耐久性は、オーリスの内装の感性質感を高めると同時に、原料にはリサイクルPETを使用した環境に配慮した素材でもあります。

  • ケナフを採用したラゲッジルーム内のとデッキボード
    ケナフを採用したラゲッジルーム内のとデッキボード
  • シート表皮に採用されたUltrasuede®
    シート表皮に採用されたUltrasuede®

個性を磨き、クルマ本来の魅力をさらに高めたオーリスはトヨタ車の新しいクルマづくりの象徴

-オーリスのようなクルマは、トヨタのクルマづくりの新機軸として今後も増えてくるのでしょうか

オーリスの車名の語源は英語の「Aura」からの造語です。独自のオーラを放ち、存在感のあるクルマになってほしいという想いから命名されました。
ひと目でオーリスとわかるアイデンティティは、今回のマイナーチェンジで、よりダイナミックに、さらに先進的に進化しました。新グレードとなる1.2L車のインテリアは、上級2BOXに相応しい上質で洗練された空間を演出しています。

トヨタのビジョンの一つに『もっといいクルマづくり』がありますが、「誰のために、何のためにトヨタという会社が存在し、クルマをつくっているのか」、本来の使命がこの言葉には盛り込まれています。モノづくりへの信念を持って開発陣が自分達の意思を貫いてひとつのクルマに仕上げる、それがオーリスのDNAです。そのためには環境性能や快適性能だけではなく、クルマはカッコよく走りもよくなければなりません。この単純明快なクルマ本来の魅力があってこそお客様に笑顔になっていただけるクルマをお届けすることができます。そういった意味で、今回新たに設定した1.2L車は、1.5L車の燃費と1.8L車の走りのいいとこどりをしたようなクルマであり、走りだした瞬間に感じられる個性と、走りの良さは、”操る楽しさ”を感じていただける仕上りになっているので、スポーティで上質なハッチバックを好むお客様に満足していただけるのではないでしょうか。事前の試乗会でも、お客様から「懐の深い走りになった」「1クラス上の排気量のクルマに感じる」「期待通りに操ることができる」などのコメントをいただいています。
時代の変化に合わせ進化し、スポーツハッチバックの新しい価値を提案し続けるオーリスのように、お客様を笑顔にするクルマづくりを続けていきたいと考えています。

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