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C-HR 大友克洋

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MOVIE

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PROFILE

漫画家・映画監督。宮城県出身。
1973年『漫画アクション』にてデビュー。代表作に『童夢』『AKIRA』など。1988年、自ら制作したアニメーション映画『AKIRA』は日本国外でも高い評価を受け、海外における日本アニメムーブメント(ジャパニメーション)のさきがけとなった。
2013年、日本政府より紫綬褒章。2014年、フランス政府より芸術文化勲章オフィシェ。2015年、第42回アングレーム国際漫画祭・最優秀賞(フランス)。

INTERVIEW

今回の作品は、最初の絵コンテの段階ではとてもシンプルだったんですよ。車が走ってるところにどんどん寄っていって、そしてトンネルの向こうに消えて行く、というだけ。
そこに、あとから龍だとか虎だとかいろんなモチーフがどんどん増えてきて、すごい味付けになっていったんです。

基本的には、「AKIRA」の舞台である「ネオ東京」のイメージなんですよ。あの作品の中で主人公の金田たちが縦横無尽に走り回っている場所。ただ、あれはもう30年以上前の作品なので、あの頃見ていた東京と現在僕たちが見ている東京が違う以上、それを元にしたネオ東京の姿も変わらざるを得ない。だから、今回の舞台はいわば、ネオ東京の2017年版という感じです。

今はアニメーションを作るにしても、『AKIRA』の頃と違ってCGでいろいろなことができる。車やビルなどのテクスチャーもかなりリアルに作り込むことができるので、スタッフと「思いっきりリアルにやろう!」といって取りかかりました。

一番苦労したのはビルの描き方ですね。本当は一からデザインを起こして、もっと奇抜な、未来的な造形にしたかったんだけど、時間の制約もあったからね。ビルの外観や中の照明の具合などは、実際にスタッフに東京の様々なビルを写真に収めてきてもらい、それをもとに描き込んでいきました。
今って、ドバイでも上海でも、もっととんでもなく変わった造形のビルがたくさんあるでしょう。現実がアニメを超えている。SFを作るのはしんどい時代ですね(笑)。

もちろん、フルCGにしないで、もっとアニメーションにしても良かったんだろうけど、それは『AKIRA』 で一回やっていることですからね。それを再生産するより、今の技術を使って、やったことのないことに挑戦してみたかったんです。そういう「新しいことをやりたい」という衝動に加え、「具体的にどうやったらできるか?」と考えて「これならできる!」という計算が立ったからこそ、実現したことではありますが。

このC-HRの写真を最初に見たときは、「おっ、やるな」と思いましたね。トヨタって質実剛健というか、悪くいうと地味な印象もあるけど、この車は新しいことをしようという意志が感じられて。

とはいえ、最終的には実車を見ないとわからないなと思って、愛知のトヨタの工場まで行ったんです。この車は走りのかっこよさを追求したということで、トヨタの人に「(映像の中では)これ、法定速度を超えて、ビュンビュン飛ばしてもいいですか?」と聞いたら「いいんじゃないですかね」っていうから、心おきなくスピード感を表現することができました(笑)。

その車と共に登場する金剛力士像や龍なんかも、ネオ東京からの流れですね。あの街はキレイな未来都市というより、古いものも新しいものもないまぜになった猥雑でゴチャゴチャした場所だったので、2017年の新しいネオ東京にも、そうした雰囲気を持ち込んだんです。走っている場所が高速道路なのでスッキリして見えると思いますけど、僕のイメージの中では、下道はもっとゴチャゴチャしてる。ただ、それを描き込み始めると、また時間が足りなくなるんだけど(笑)。路面の制限速度表示がLEDで光っていたり、行き先案内板が一緒についてくるといった未来っぽい要素も、考えるのは楽しかったです。

現実でも東京の街はどんどん姿を変えていきますし、次々に登場する新しいテクノロジーによって、さらにその変化はスピードと規模を増していく。いわば、都市そのものが生き物のようなものです。その、生きているがゆえに一つのテイストに統一され切らない感じを、ネオ東京の猥雑さに託した感じですね。

そして、そうやって世界観を作ったネオ東京の風景が車に写り込んで流れていく様子をリアルに描くということにも、かなり神経を使いました。この車は複雑なカーブをしていますから、ボンネットやボディに反射する光、ウインドウに歪んで映るビルの形など、かなり計算をして作り込んだんです。ぶっ飛んだ仏像なんかも出てくる虚構の世界ではありますが、その中にもそうした細部のリアリズムは絶対に必要ですからね。

僕は漫画家なので、このイメージボードのように当然ながら自分で絵を描くことが一番自分らしさを発揮する手段なんですけど、今回はフルCGですから、なかなかそういうタッチの部分は出しにくい。ではどこで自分らしさを表現するかというと、このネオ東京の世界観と、そしてリアルなディテールへの徹底したこだわり。この二つがうまくマッチして、大友克洋らしさが出ているんじゃないでしょうか。

日本人だからか、昔の仏像とか絵が、最近はしっくりくるところがあるんです。この舞台も未来とはいえ日本だから、近代的な風景の中にこういう金剛力士のようなモチーフが突然現れても意外とマッチする。ビルの壁面にプロジェクションマッピングされていく桜の絵なんかも、そうですね。

豪華絢爛な古い絵や仏像と、今の東京にもあるような高層ビル群と、LEDの道路標示と、そして新しい車。そうしたものが全て渾然一体となった、僕にとっての「日本」を楽しみながら表現することができたので、見てくださる方にもそれが伝わるといいと思います。