開発責任者が語る環境への想い

プロボックス開発責任者 下村 修之 2014年9月取材

プロボックス開発責任者 下村 修之

長い景気の停滞から世界経済が徐々に回復基調を辿り始めた2002年、「荷物を運ぶ道具」として徹底した便利さを追求した商用車「プロボックス」が誕生しました。以来、数多くの改良を重ねて商品性を高め、ビジネスを支えるプロの道具として高い評価を得てきました。
そんなプロボックスが2014年9月、発売12年目で大規模マイナーチェンジを実施。基本性能から細かな使い勝手まで大幅刷新したその中身は、時代をリードする環境性能と先進の安全性を向上。エンジンの進化やCVTを全車に採用するなど燃費を向上し、全車エコカー減税の対象となりました。
さらに疲れにくい乗り心地、使いやすい室内空間、積みやすくて広い荷室といった働く人の求める要件をレベルアップし、商用車を購入決定する車両管理担当者や経営者に加え、実際に毎日仕事で使っていただく皆様にも納得いただけるクルマに仕上がりました。そんなプロボックスの設計・開発の責任者として、現場の指揮を執り続けたのは製品企画本部主査の下村修之。多くの商用車の開発に携わってきた経験を活かし、日本の産業を下支えしてきたプロボックスの環境性能を中心にクルマづくりを通じた社会への貢献についてその想いを語ります。

プロボックス開発責任者 下村 修之
プロフィール (2014年9月取材)

プロボックス開発責任者 下村 修之

所属
製品企画本部 開発主査
略歴
1981年トヨタ自動車入社。入社から1998年までエンジン設計として、VZ、JZ、1Gエンジンの開発を担当。2000年からは製品企画室でブレビス、クラウンを担当し、その後CEとしてマジェスタ、中国クラウンの開発を手掛ける。2010年より商用車を担当し、2011年からはプロボックス/サクシードの責任者として開発の取りまとめを行っている。

日本経済を底辺で支える“働くクルマ”こそ環境性能を向上し、大きな効果を期待

プロボックス開発責任者 下村 修之

-環境の世紀ともいわれる21世紀において、環境対応をどのように捉え、開発に取り組んでいますか。

私はプロボックス以外にもダイナ/トヨエース、タウンエース/ライトエースといった商用車を担当してきました。こうした“働くクルマ”こそ環境性能を向上することで大きな効果が期待できると考えています。
商用車は毎日仕事で使われるため走行距離が多くなります。たとえば営業回りの移動に使われることが多いプロボックスの月間走行距離の平均は1,500km(年間走行距離1万8,000km)程度で、自家用乗用車の年間走行距離の平均9,000kmと比較すると単純に2台分の環境負荷があるということになります。“働くクルマ”こそ環境性能を高める必要があるというのはこうした理由からです。
但し、商用車というのは荷物を積んでしっかり走れる丈夫なクルマであることが最優先されます。その上で燃費をはじめとする環境性能を追求するため、空気抵抗やタイヤの選定、積載効率など乗用車に比べ燃費向上に不利な要素が数多くありますが、そうした条件の中、今回のマイナーチェンジで大きく進化したプロボックスは、商用車ならではの顧客ニーズと環境性能を両立したクルマに仕上がっています。

開発の背景には「働く人を応援したい」というメッセージが込められていますが、そこには“働くクルマ”としての便利さや快適性はもちろん、環境を経営の重要課題と捉え様々な活動に取り組んでいる多くの企業の理念をも応援したいという想いがあります。
トヨタが初めて商品化した大型トラック「G1型トラック」の発売から約80年。その間、乗用車代わりにも使われた小型トラックや、乗用車ベースから生まれて商用車へと特化・独立していったものなど、トヨタの商用車は、時代や社会の進歩・発展にあわせて様々な歴史を辿ってきました。そして商用車の環境性能に期待を寄せるお客様の声が多くなったのも、間違いなく社会の変化と時代の要請だと思います。そんなお客様の期待に応え、企業全体をトータルにパワーアップさせるプロの道具となるクルマにしたい、そんな想いを込めて社会で活躍する商用車の開発にあたっています。

プロボックス開発責任者 下村 修之

経営者にも実際にクルマを使う人にも納得してもらえるクルマを目指して

-12年目の大きな改良で特にこだわったところはどこですか。

プロボックスはトヨタのビジネスカーのベースラインを担うクルマです。2002年の発売以降、毎年のように改良を積み重ね、累計販売台数は74万台(プロボックス/サクシード)を超えるほど多くのお客様に支持されてきました。そんな大事なクルマですから今回の開発にあたっては働く人の声を積極的にお聞きしました。
購入決定者の方からは、「荷物が積めて、丈夫で長持ち、ランニングコストが安く、安全に配慮されたクルマ」、現場で実際にクルマを使う方からは、「疲れにくい操縦安定性、快適な室内空間」というご要望を多くいただきました。こうした声にお応えするため、まず定評ある箱形の荷室やリアの商用車専用の足回りなど、大事なところはしっかりと維持したうえで様々な最新技術を投入して、商用車の基本性能をさらに磨き上げました。商用車は自家用乗用車と違い定期的にモデルチェンジするものではなく、最初に良いものを造ってできるだけ長く使う考え方で開発します。ですから、今回のような大規模な改良をやる時は、これから先も長く使えるよう、新しい技術を織り込んで高い性能を持つクルマに仕上げる必要があります。

今回のマイナーチェンジでは、荷室形状は旧型のプロボックスと同じにしています。街中ではコンパクトなサイズの方が扱い安く取り回しが良いため、必要以上にクルマを大きくする必要はありません。コンパクトなサイズの中でいかに大容量の室内空間を確保し、積み込みの効率性を高めるかがポイントとなります。この点、旧型は非常によく考えられた荷室パッケージでしたから変える必要がないと判断しました。お客様からも荷室を変えて荷物が積めなくなったら買わないといわれています。また、環境面でもコンパクトなボディーにコンパクトで効率の良いエンジンを搭載すれば燃費も良くなるというメリットもあります。

ボディーサイズとリアシートを倒した荷室寸法
ボディーサイズ 全長:4,245mm × 全幅:1,690mm × 全高:1,525mm
リアシートを倒した荷室寸法 全長:1,810mm × 全幅:1,420mm × 全高:935mm
  • プロボックス サイドビュー
  • プロボックス リヤビュー

ビジネスバン専用の設計で、積載対応、乗り心地、環境性能のすべてを両立

1.5L 1NZ-FE VVT-iエンジン
1.5L 1NZ-FE VVT-iエンジン

-プロボックスの具体的な環境性能について教えてください。

12年目の大きな改良のきっかけは「2015年の燃費規制」に対応することですが、多くの部品を変更できる機会なので、その変更を利用して「もっといいクルマにしよう」と考えました。
エンジンは1.3L車と1.5L車が用意されています。1.5L車はエンジン型式は同じですが、最新技術を織り込んだ新しいエンジンですし、1.3L車は可変バルブタイミング機構が備わる新エンジンを搭載、トランスミッションは従来の4速AT&5速MTから全車CVTに変更しました。
こうしたエンジンとトランスミッションの変更によって、1.5L車(2WD)はJC08モード・18.2km/L(従来比約18%増)、1.3L車(2WD)はJC08モード・17.6km/L(従来比約14%増)、1.5L車(4WD)はJC08モード・15.8km/L(従来比約18%増)を達成し、全車エコカー減税の対象車としています。

新エンジンやCVTを搭載するためにマイナーチェンジといいながらフロントプラットフォームも刷新しています。フロントプラットフォームの変更によりフロントの足回り、シート、エアコンなど新しいものを取り込むことができました。乗り心地や静粛性の向上、高速道路での安定感のある走りを実現、運転して疲れにくいバンに仕上げました。乗用車と大差のない乗り心地を実現できたのは大きな進化だと思います。

また、プロボックスには燃費チェックに便利な「エコドライブインジケータランプ」が搭載されており、燃費のことを気にした運転をしていただけるようになっています。

1.5L 1NZ-FE VVT-iエンジン
1.5L 1NZ-FE VVT-iエンジン
3モデルの圧縮比・燃費・エコカー減税の比較
  JC08モード燃費 エコカー減税率
自動車取得税 自動車重量税
1.5L車(2WD) 18.2km/L 80% 75%
1.5L車(4WD) 15.8km/L 60% 50%
1.3L車(2WD) 17.6km/L 80% 75%
1.5L 1NZ-FEエンジン/1.3L 1NR-FEエンジンの燃費向上のポイント
1.5L 1NZ-FEエンジン 現行の1NZ-FEエンジンをベースに、吸気ポートの改善、圧縮比アップ、バルブタイミングの最適化などによる燃焼効率の向上や、各部のフリクション低減などを行い、すぐれた出力・トルク性能を維持したまま大幅な低燃費化を実現。
1.3L 1NR-FEエンジン 実用性にすぐれた1NR-FEエンジンで、吸気・排気ともにバルブの開閉タイミングを最適にコントロールするDual VVT-i採用により吸気・排気効率を高め、低・中速域でのトルクと高速域での協調制御により燃焼を改善させ、燃費性能の向上を実現。

使用環境の向上によるモチベーションアップが、環境意識の向上にも寄与

-パワートレーン以外にも環境に考慮した取り組みはありますか。

環境というとどうしてもハード部分の仕様に焦点が当たりがちですが、クルマを実際に使う方の『使用環境』も大きく“エコ”と“安全”につながる要因だと考えています。
今回、毎日仕事でプロボックスに乗っていただいているたくさんのお客様に話を聞きました。最も参考になったのが「クルマの中で過ごす時間が長い」「仕事で使うからこそ楽なクルマがいい」ということでした。クルマの中にいる時間が長いのであれば、商用車として本当に使いやすい快適な室内空間を追求すること、走りを楽にしてストレスをなくすことが大切なことだと思いました。
車内での快適性という点では、インパネ部分を大きく見直し手の届くところに必要な物がおけるようにしました。運転席のすぐ横にバッグを置くスペースを確保したり、サイズアップしたインパネテーブルにパソコンやお弁当が置けたり、使える収納スペースが豊富な点など、実用性を重視した便利装備を設定しました。動くオフィスのような感覚で使っていただければと思います。
仕事での移動時間が楽であったり、休憩をとって気力を充実させることができたら、仕事の効率が上がる“エコ”、気持ちや体力に余裕ができれば“安全”につながるものと考えています。
働く人を元気にして企業全体をパワーアップさせることができるプロボックスが、色んな側面から社会や環境に貢献できるプロの道具として、これからも長く日本経済を支えていってくれるのを期待しています。

  • 運転席左上に設置したマルチホルダーと充電に役立つアクセサリーソケット
    運転席左上に設置したマルチホルダーと充電に役立つアクセサリーソケット
  • お弁当やノートパソコンが置けるインパネテーブル(ペンなどが置ける溝も設置されている)
    お弁当やノートパソコンが置けるインパネテーブル(ペンなどが置ける溝も設置されている)
  • 座ったままバッグの中身を取り出せるよう、運転席のすぐ横にバッグが置けるスペースを確保
    座ったままバッグの中身を取り出せるよう、運転席のすぐ横にバッグが置けるスペースを確保
  • A4バインダーが収納できるインパネトレイは、走行中に滑り落ちないようゴム製ストッパーを設置
    A4バインダーが収納できるインパネトレイは、走行中に滑り落ちないようゴム製ストッパーを設置

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