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サステイナブルな開発ストーリー クルマづくりを通じた社会への貢献 ラクティスチーフエンジニア 三浦清克

「New Small Smart MPV」をコンセプトに開発された2代目ラクティス。初代で好評だった「コンパクトでありながらゆとりの室内空間」、「広い荷室」、「運転のしやすさ」、「使いやすさ」といったポイントをさらに進化させて2010年11月に登場しました。
その2代目ラクティスのコンセプト策定から設計・開発の責任者として現場の指揮を執り続けた商品開発本部の三浦清克チーフエンジニア(以下CE)が、クルマづくりを通じた社会への貢献とはどういうことなのか、乗用車部門の福祉車両としてトヨタの主力車種であるラクティスに何が求められ、どのような変革を盛り込んだのかをモノづくりの視点で語ります。

クルマづくりを通じた社会への貢献
(2010年12月掲載)

※プロフィール
ラクティス CE三浦清克
所属 商品開発本部 CE
略歴 1980年入社。セリカ・スープラ・ソアラなどのサスペンションの設計を担当し、その後初代アルファードの製品企画を行う。その後、CEとして現行ハイエースやイストなどの開発を手掛け、2007年からは2代目ラクティス並びにVERSO-S(ヨーロッパ仕様車)のCEとして企画と開発の取りまとめを行った。

技術力を高め、より人に有益なクルマづくりを目指して

環境の世紀ともいわれる21世紀において、重要なキーワードの一つ「サステイナビリティー(持続可能性)」をどのように捉え、開発に取り組んでいますか。

すべての人には移動の要求があり、それに対し、より快適に環境負荷が少なく、しかも安全に移動できることがクルマの使命であり、それがひいてはクルマが社会にとっての存在意義だと考えています。もともとクルマをはじめとした工業製品は、人のために作られ、人が暮らしやすくなる、人にとって有益でなければいけないと考えていたので、入社当時、「クルマづくり、モノづくりを通して社会に貢献する」という会社の理念に共感したのを覚えています。だからエンジニアの立場である私がやるべきサステイナブルな取り組みとは、技術力を高めて環境負荷を減らし、より人に有益なクルマをお客様にお届けすることだと考えています。

特に環境配慮と福祉車両としての使い勝手が2代目ラクティスのメッセージ

2代目ラクティスが社会に貢献するクルマであるために注力したポイントはどこですか。

大きく2つあります。一つは環境への配慮、特に燃費と資源にこだわりました。もう一つは福祉車両としての使い勝手をより高めることでした。
燃費は環境配慮の取り組みが目に見えて分かりやすく、小型車をお買い求めになるお客様にとっては直接維持費に関わることなので、そこにポイントを置かれているお客様も多い。2代目には1.3L車と1.5L車をラインナップしているのですが、両車とも初代に比べ8~9%ほど燃費を向上しています。1.5Lの4WD車はCVTを組み合わせて約24%向上することができました。
【ラクティス1.3L車と1.5L車の新旧燃費比較】
ラクティス1.3L車と1.5L車の新旧燃費比較
また初代ラクティスは福祉車両として発売後“3年連続販売台数トップ”というトヨタの福祉車両の主力車種という一面を持ち合わせていました。そのため使っていただいているお客様からの声も多く、その声を分析して介護する側とされる側の両面から課題とその対応策を検討しました。
今回、日本初の型式指定化で持ち込み登録の手間を不要にしたり、他社にはないシートアレンジでクルマ椅子の方の隣に乗車できたり、クルマいすを使わない時は5名乗車を可能にしたのも、そうした声に応えた結果です。
【福祉車両の販売台数シェア順位】
  2006年 2007年 2008年 2009年
1位 ラクティス ラクティス ラクティス C車(軽自動車)
2位 A車(軽自動車) C車(軽自動車) A車(軽自動車) A車(軽自動車)
3位 B車(軽自動車) A車(軽自動車) C車(軽自動車) ラクティス

環境への配慮はエンジニアにとって技術力を高める目的の一つ

低燃費を実現するための具体的な取り組みを教えてください。

エンジンの効率化はもちろん、燃費向上に効果的だったのが約30kgの軽量化です。
今回、2代目ラクティスには日本の高い鉄鋼技術による『高張力鋼板(ハイテン)』と呼ばれる材料をボディーの45%に採用し、さらにその一部より高い強度ランクに上げたり、デッキボードの材料に軽く強い植物原料由来のケナフを採用したり、銅線よりも軽いアルミ線への変更などによってトータル30kgの軽量化を実現しました。開発当初は10kgの軽量化を目標にスタートしたのですが、これじゃあ物足りないと思い、軽量化できる要素を徹底的に洗い出した結果です。
軽量化は燃費の他にも、資源の節約、運動性能や乗り心地の向上にもつながるので、環境の視点だけでなく、クルマを開発するうえでとても重要な取り組みなんです。
エンジンに関しては、1.3L車は吸・排気バルブの開閉タイミングを最適にコントロールするDual VVT-iというシステムを採用した新型エンジンを搭載し、低燃費を実現しています。
1.5L車は専門的な話になりますが、バッテリーサイズを大きくしてなるべくアクセルを踏んで燃料を吹いている際に発電させないようにしてエンジンの負荷を減らしたり、逆にブレーキで減速しているときにしっかり発電させることでアクセルを踏む際の発電を抑制したエンジンの効率の良い領域を使い、同時にスムーズな加速も得られるように、CVTとエンジンの制御を突き詰めていきました。
他にも目標値を達成するためにいくつもの改善を積み重ねましたが、それでも目標値に届かない。走行抵抗を下げることをいろいろ検討し、最終的にフロントバンパーの下にスポイラーを追加することでクラストップレベルのCd(空気抵抗係数)値を達成し、何とか目標値を達成しました。

高張力鋼板の使用部位 高張力鋼板の使用部位

空気抵抗を減らすために取り付けたフロントバンパー下のスポイラー(赤枠部分) 空気抵抗を減らすために取り付けた
フロントバンパー下のスポイラー(赤枠部分)

資源にこだわった点は何ですか。

資源については2つの視点で取り組みました。一つは資源をできるだけ使わないようにすること。もう一つは資源の有効活用です。
使用する資源を少なくするためには、先にお話ししたように軽量化がもっとも効果的です。30kg軽量化すれば、30kg分の資源を使わなくて良い訳です。
資源の有効活用については、まずは地球に豊富な資源を採用することが大切です。クルマには多くの金属が用いられてますが、中でも中国やインドなどの新興国の経済発展を背景に拡大する銅需要に対し、銅の持続可能性という課題が近年注目を浴びています。
銅はクルマにとってバッテリーからモーターへの電力ケーブルや制御用の配線などに使われる欠かせない金属です。2代目には、一部銅線の代わりに資源として豊富なアルミ線を採用しています。アルミは銅に比べ展伸性が低く、細く引き伸ばし束にしながら撚る場合、加工性が悪い。そういった課題を克服して今回採用できたことはトヨタにとって大きな取り組みだったんです。
【世界の主要金属資源の可採年数の推移】
  アルミ
可採年数(2005年時点) 32年 152年 105年
出典 U.S.Department of the Interior,U.S.Geological Survey
  Mineral Commodity Summaries 1996,2006

また2代目ラクティスにはケナフを荷室床面のデッキボードに採用しています。植物由来のケナフは成長が早く、収穫できる繊維も多い。それにCO2の吸収も良く、資源という視点だけでなく、ケナフを使ったデッキボードは軽量化にも有効でした(従来品に対し約2kgの軽量化)。

荷室床面のデッキボードに採用したケナフ(裏面を撮影) 荷室床面のデッキボードに採用したケナフ(裏面を撮影)

「すべての人に移動の自由」を提供するには、介護する側とされる側の両面からの取り組みが必須

福祉車両を開発する上で大切なことは何ですか。

特に大切なことは、介護される側だけでなく、介護する側も「簡単に、安全に」使えることです。
介護される側は、「迷惑をかけている」という気持ちから閉じこもってしまい、次第にコミュニケーションが悪くなってしまうことがあります。介護する側が楽であるということは、介護される側の精神的な負担を和らげるんです。
またドライバーであり介護する方に女性が多いので、クルマ椅子に乗られている方の乗り降りに、介護する方ができるだけ力を必要としないで済むような工夫が必要です。初代よりエアサスペンションで車高を60mm低くして緩やかなスロープで乗り込めるようにしていましたが、スロープの角度を9.5°にしたのもそのためです。もちろんエアサスペンションなのでクルマ椅子の方にとっても乗り心地が良いのも大きな利点です。

車高を60mm下げ、スロープを引き出した状態 車高を60mm下げ、スロープを引き出した状態

福祉車両として初代モデルから進化したところを教えてください。

2代目は室内高を40mm高くしたハイルーフボディーとしました。これはミニバンのノア/ヴォクシーと同レベルであり、これによって日本人男性の95%(185cmまで対応)がクルマ椅子のままでも乗り込めるようになりました。
今回のラクティスのように、福祉車両のためにボディー形状を変更して専用のハイルーフボディーを開発したのは、トヨタとして初めての試みだったんです。開発段階ではプレス成型が難しく、亀裂が入ったりシワが寄ったりという課題がありました。またハイルーフ車を成り立たせるために標準ルーフのデザインを見直したりと、フィードバックをかけながら両立を図るのが大変でした。
もう一つの大きなポイントは、日本初の型式指定化で持ち込み登録の手間を不要にしました。クルマ椅子を使わないときは5名乗車が可能ですし、クルマ椅子が乗車しているときにはその隣に介護者が座ることができるので、移動中も常に目を配ることができ、安心して乗っていただけます。

助手席側リヤシート付<型式指定自動車> 乗車定員:5名
助手席側リヤシートを格納状態にし、車いすのまま乗り降りできるスペースを確保しました。車いすをご利用にならないときは、5名乗車が可能です。

車いすご利用時:3名+車いす1名
※助手席側リヤシート
格納状態。

※写真は5名乗車時。

車いすをご利用にならない時:5名

介護する側のメリット 介護される側のメリット
  • シートベルトの装着手順を変更して介護者がより自然にスムーズに行えるよう配慮(下1参照)
  • クルマ椅子の出し入れをよりスムーズにするためにリアカーペットに車輪のガイドとなる傾斜を設置(下2参照)
  • 小柄な方でもバックドアをラクに引っ張れるストラップの設定
  • 専用のハイルーフ仕様で室内高を初代比40mm高くして日本人男性の95%に対応したゆとりの空間
  • クルマ椅子乗車スペースの快適装備と静粛性を向上(デッキトレイ(下3参照)、ハンドルグリップ、バックドアクッションなど)
介護する側・される側両方のメリット
型式指定化により持ち込み登録の手間が不要で納期も短縮
他車にはないレイウトでクルマ椅子の隣で介護可能(クルマ椅子非乗車時に5名乗車が可能)
エアサスペンションの採用で乗り降りしやすく、後席の乗り心地も快適
  • 腰を装着後(①)、そのまま上に移動(②)するだけの動線
    腰を装着後(①)、そのまま上に移動(②)するだけの動線
  • リアカーペットに車輪のガイドとなる傾斜をつけ、クルマ椅子の出し入れをスムースに
    リアカーペットに車輪のガイドとなる傾斜をつけ、クルマ椅子の出し入れをスムースに
  • クルマ椅子の右横に設置されたデッキトレイ
    クルマ椅子の右横に設置されたデッキトレイ
トヨタの福祉車両はウェルキャブと呼んでおり、「すべての方に快適な移動を提供すること」をコンセプトに、障がいを持つ方や高齢の方すべての人に快適で素敵な暮らしをサポートすることを目指しています。
2代目ラクティスは、一人でも多くのお客様に喜んでいただけるクルマをご提供できるようなバリエーションをご用意しています。ぜひお近くのウェルキャブ常設店舗やウェルキャブ総合展示場で実物に触れてみてください。そして試乗した感想などを聞かせてください。現場スタッフがお客様と一緒にお客様にぴったりのクルマ探しをお手伝いします。

ウェルキャブの詳細は、ウェルキャブ(福祉車両)をご覧ください。