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Owner 寺田 昌弘 Photo
Owner 寺田 昌弘 MASAHIRO TERADA

ランドクルーザーに乗るのが好きで、気がつけば多くのランドクルーザーオーナーから親しみを込めて「親分」と呼ばれる寺田昌弘氏。
「土の上を走ってこそランドクルーザー」だとオフロードスクールを開催し、オフロード性能の高さをオーナー自身に気づいてもらったり、ミーティングを通じてオーナーどうしの交流を深めてもらったりと精力的に活動している。特にリジットアクスル、リーフスプリングのランドクルーザーにこだわりを持つ寺田氏に、その魅力について聞いてみた。

日本製の最強品質「ランドクルーザー」
海外に行き、現地の人が日本人を見つけると、20 年以上前であれば家電メーカーのブランドで声をかけられることが多かった。しかし10 年くらい前から自動車メーカーの社名に変わった。そのなか大陸の奥地に行けば行くほど社名でなく車名で声をかけられることがある。そのブランドがランドクルーザー。
「今もアメリカだったらネイティブ・アメリカンがFJ56 に乗っているし、オーストラリアだったらアボリジナルがBJ40に乗っている。大自然と物を大切にする先住民たちが、愛してやまないのがランクルなんです」 燃費、排気ガスのクリーン度を向上することは、とても大切なこと。同時にひとつのものを大切にすることも大事。日常的にいつまでも長く使えるクルマとしてランドクルーザーは世界中のユーザーに愛されている。
「都会と違って過酷な地に暮らす人々にとって、頑丈なクルマが欲しいと思うのは当たり前のことです」
相棒と呼べるまで1台のクルマと長くつきあう
寺田氏は「ランドクルーザーファンクラブ」という同じクルマに乗る人たちと走ったり、メンテナンスしたり情報を交換するクラブを立ち上げた。情報交換は日本だけに留まらず北米、オーストラリアなど世界中の「自分のランドクルーザーが一番」であると確信を持ってクルマと付き合う、ランドクルーザーを愛してやまない人たちと交流を深めた。
「英語もろくに話せないけど、ランクルという言葉だけで世界中の人とつながれる。外国人はランクルを作っている国として尊敬してくれる。日本人として誇りです」
クラブでは20 年以上もオフロードスクールを開校し、ランドクルーザーオーナーをオフロードへ誘い、性能の高さを知ってもらうとともに、操る楽しさを伝えていった。
「クロスカントリーを走れば、ランクルの走破性の高さにみな驚き、走れば走るほど自分のランクルが好きになってくる。またメンテナンスの方法などもベテランが若い人たちに教え、自分でできるようになるとなおさら愛着が湧いてくる。ランクルが相棒と呼べるくらい深く付き合っていきます」
リジットアクスル、リーフスプリング
現在40 系、55 系、70 系と3台のランドクルーザーを所有する寺田氏。もちろんどれもよく走る。これら3 台に共通しているのはサスペンションが独立懸架ではなく、リジットアクスルしかもリーフスプリングであること。
「私にとってランクルはこれが基本。頑丈で部品点数が少なく整備性がいい。特に40 系はちょっとしたパーツならホームセンターで売っているもので代用が利くほど。日本では驚かれてしまうかもしれませんが、海外の大陸の奥地ではクルマの故障は命に直結する。そんなとき、ランクルの40 系、70 系の部品やクルマは奥地にでもあるので、そこで直して帰ってくることができる。こんなクルマ、世界中どこを探してもないでしょう」 唯一無二の存在。どこでも走り、どんなところでも直して帰ってこられるとはカタログには載っていない。ランドクルーザーならではの特別装備だ。
味のあるクルマ、味の出るクルマ
現代のクルマで錆を見ることなど皆無。ただ数十年も乗っているクルマであれば、ボディはもちろん鉄製だから錆も出てくる。今も40 系、55 系、60 系、70 系に乗るオーナーたちは、サンドペーパーやペンキのハケを片手にそのリペアさえも楽しみのひとつになっている。クラシックカーに乗り、ガレージライフを楽しむ人と同じように。ヨーロッパやオーストラリア、アメリカなど、クルマ文化がある国々ではよく見かける光景だ。
「いいものは長く使い込んでくると、独特の深み、味が出てくる。鞄、靴といった革製品や、工具や食器、調理器具などの金属製品など。オーナーの使い方で、その風合いは変わってくる。ランクルはまさしくその域にいますね。以前、南極観測隊が使っていたランクルを見たことがあるんですが、真っ赤なボディが人参みたいな色になっていて。南極の風雨にさらされ、過酷さを映し出したそのボンネットを見て感動しました」
寺田氏の所有するランドクルーザーもみな、塗装し直していたり、小さな錆、傷があったりする。寺田氏のランドクルーザーとの付き合いかたそのものが、ボディに映し出されている。
代々乗り続けられるクルマ
「親から子へ。ランドクルーザーに乗る家族は、クルマで旅に出ることが多い。ランドクルーザーとともに家族で思い出を積み重ねていく。すると子供たちが免許を取ると、そのランドクルーザーを受け継ぐか、中古車でも自分で購入する人が多い。
「ヘビーデューティなクルマは必ず必要だと思います。ランクルはトヨタ車の耐久性の高さを世界中に知らしめたクルマ。しかしその代表車種である70 系は海外で販売されているのに日本ではラインナップされていない。これは海外のランクル仲間も不思議に思っています」
確かに世界に誇る日本製品が、自国で販売していないのは残念だ。
「一部でいいんです。ワインではないけど、毎年何台とか限定で、例えば今年のボディカラーは赤、来年は青みたいにイヤーモデルで出たらいいですね。アウトドアが好きだったり、クルマでオフロードを楽しむ大人が買って、しばらくしたら中古車市場に出回り、若い方々がそれを手に入れる。エンジニアたちがこだわりながら作る。作り手もとても楽しいと思いますし、乗り手もその思い、味を楽しめる」
代々乗り続けられるだけの耐久性、整備性の高さを持つ70系は、世界中で認められており、世界各国で熱狂的なファンを持つ名車である。70 系が国内で販売されることがあれば、寺田氏はまた新しいランドクルーザーオーナーにオフロードの走り方やメンテナンスの方法などを教えたいと言う。こうして人と名車によってクルマ文化は構築されていく。ランドクルーザーはクルマ文化を創造できる日本車だ。

記事:寺田 昌弘