(2011年11月現在)2008年5月、初代アルファードのモデルチェンジを機に新たにラインナップされたヴェルファイア。トヨタのフラッグシップミニバンとして、「力強さ」「先進性」をコンセプトに開発され、お客様の「憧れ」と所有する「喜び」を感じていただけるようミニバンとして新しい価値を発信してきました。
そのヴェルファイアに2011年11月、新たにハイブリッドモデルが追加設定されました。
パワーユニットにはリダクション機構付THSⅡを搭載し、直列2.4L4気筒エンジンの組み合わせにより、同排気量クラスの1.5倍の低燃費19.0km/L(10・15モード走行燃費)を実現し、ヴェルファイアが築き上げた最高位の風格と魅力に、さらに環境性能に磨きをかけたモデルとして登場しました。
そのヴェルファイアハイブリッドモデルの車両開発の総責任者であった丸山野悟が、環境性能を中心にクルマづくりを通じた社会への貢献について想いを語ります。
| ※ プロフィール | ||
| ヴェルファイアハイブリッドモデル 開発責任者 丸山野 悟 | ||
| 所属 | : | 製品企画本部 主査 |
| 略歴 | : | 1978年トヨタ自動車入社。 入社後、技術部に配属され駆動系部品の設計に携わる。15年間にわたる設計時代には、ノンアスベスト化、六価クロムの代替化、アルミ化や樹脂化などの軽量化に取り組む。1995年に第1開発センターに異動し、14年間にわたり歴代セルシオ/レクサスLSの製品企画を担当。2009年よりヴェルファイア/アルファードハイブリッドモデルの開発の指揮を執る。 |
フラッグシップモデルを担当し続けたことで、DNAに組み込まれた環境対応への意識
環境の世紀ともいわれる21世紀において、重要なキーワードの一つ「サステイナビリティ(持続可能性)」をどのように捉え、開発に取り組んでいますか。
私にとって環境とは、特段の意識を持っている事象ではなく、クルマとして当然持つべき商品力の一部として、むしろさりげなく対応することでそのクルマのポテンシャルを高めることだと考えています。
私は、入社以来15年にわたり駆動系部品などの設計に携わってきました。当時は、現在のような地球環境という視点ではなく、クルマが持つネガティブの要素を消すための方向として、アスベストや六価クロム等環境負荷物質の代替えなどに携わってきました。
こうした設計時代を経て、1995年に第1開発センターへ異動し、ヴェルファイア/アルファードハイブリッドモデルを担当するまで14年間にわたりセルシオ/レクサスLSの開発に携わってきました。
特にLSではレクサスモデルの最高峰であるため、常にトヨタの最新・最高の技術が惜しみなく注ぎ込まれ、様々な技術にもチャレンジしてきました。もちろん環境性能においても最新技術を数多く採用してきました。それにも増して、高級車をお求めになるお客様こそ、燃費をはじめとする環境性能に大変興味を持たれています。
高級車こその社会的責任を具現化させるための環境への取り組みは、入社以来の業務を通じ、私のDNAに組み込まれてきたもので、敢えて“特段の意識”が存在したわけではありません。あくまでも自然体で社会情勢としてやるべきことだということが業務の中で刷り込まれました。
ハイブリッドモデルを設定し、高い環境性能を盛り込むことは、トヨタのフラッグシップミニバンには確実に備わっているべき“スペック”
ヴェルファイアにおけるハイブリッドモデルとはどのような位置づけでしょうか。
ファミリー層を中心に求められるミニバンには、大切な家族のために使い勝手や利便性の高い装備が数多く盛り込まれており、市場では幅広い層から支持されています。
私は九州出身で、帰省の際に高速道路を走るミニバンの多さに驚いたことを覚えています。
軽自動車を除く乗用車の約3台に1台がミニバンであるということは知っていましたが、実際、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで見るミニバンの数には正直圧倒されました。こうした人気のミニバンの中でも、ヴェルファイアは最高級のミニバンに位置づけられ、市場では独自の地位を築いています。
ヴェルファイアハイブリッドモデル
そんなヴェルファイアのユーザー特性を調べようと開催したイベントで、小さなお子さんがいらっしゃる若い家族にアンケートを実施したところ、次期購入希望車の第1・2位はアルファードとヴェルファイアという調査結果がでました。若い方のクルマ離れが憂慮される中、ヴェルファイアを“憧れのクルマ”として選んでいただいたことについては時代の潮流を感じます。
また、法人需要の実績からもユーザー特性が伺えます。2010年には法人車登録でヴェルファイア/アルファードの合計がクラウンを超える実績を上げています。アルファードが官公庁を中心に公用車としてご利用いただいていることが多いのに対し、ヴェルファイアは芸能関係や接客業のオーナーの方たちからたくさんの支持をいただいています。
このように、ファミリー層だけでなく法人需要としても支持が拡大されるなど、多種多様な活用シーンが展開されるヴェルファイアにハイブリッドモデルを設定し、ミニバン市場においても地球にフレンドリーな技術で地球再生を牽引することはトヨタとしてのメッセージであり、確実に備わっているべき“スペック”だと考えています。
お客様の声がハイブリッドモデル復活を後押し
今回、ハイブリッドモデルを追加設定した要因の一つに、お客様からの強いご要望があったとお聞きしましたが、実際どうだったのでしょうか。
「ハイブリッドモデルを設定することは確実に備わっているべきスペック」というものの、私がヴェルファイアハイブリッドモデルの開発責任者になった当時は、様々な品質問題などで、全社を上げて克服すべき課題対応の時期でしたので、ヴェルファイアハイブリッドモデルのプロジェクトも一時中断している状況でした。
そこでまず手始めに全国の販売店約20社を直接訪問し、ヴェルファイアハイブリッドモデルについて販売スタッフの皆様や、時にはオーナー様から生の声をお聞きすることにしました。するとどこに行っても「何故ハイブリッドモデルを出さないのか」「ヴェルファイアのハイブリッドが欲しいというお客様がたくさんいらっしゃる」など、支持する声をたくさんいただきました。初代アルファードにハイブリッドモデルが設定されていたこともあり、新たにラインナップしたヴェルファイアにもハイブリッドモデルを待ち望むお客様がたくさんいらっしゃったんです。また、同じような声がジャーナリストの方々からも聞かれました。
こうしたお客様や販売店の声に後押しされ、ハイブリッドモデル復活のメドを立てることができました。
また、これらのお客様の声のみならず、ワンボックス車としての宿命である空気抵抗の大きさと重量の重いミニバンの燃費を向上するためにはハイブリッド化が不可欠だとエンジニアとして純粋に考えていました。
カタログの数値やデータで表せないヴェルファイアらしいノウハウや技術を盛り込み
ではハイブリッドモデルを追加設定することが決まってからわずか2年で市場に発表されましたが、苦労された点は何だったのでしょうか。
まず、追加設定のタイミングを2011年11月のマイナーチェンジの時期に合わせました。お客様のニーズに応えるのが私たち開発の使命ですから、お客様をお待たせするわけにはいきません。そして、限られた期間で新しいモデルを追加設定するわけですから、効率的な開発が必要とされます。そこで先に市場に本格投入されていたエスティマのハイブリッドシステムを採用することにしました。もちろん単に採用しただけではありません。
基本システムは、リダクション機構付THSⅡと直列2.4L4気筒エンジンを組み合わせています。このシステムの環境性能、特に燃費についてお話しすると、まずTHSⅡは、緻密なエネルギーマネジメントを行うとともに、電気が分担する役割を増やすことで燃費向上に貢献します。エンジンは、ハイブリッド車用に開発されたガソリンエンジンで、アトキンソンサイクルを応用した高膨張比サイクルを採用して熱効率を高め、低燃費化を図っています。
但し、ヴェルファイアはエスティマよりも価格も高く、重いクルマですから、基本システムをいろんな面でブラッシュアップすることが必要です。大きなクルマで使っているシステムや技術を小さなクルマに移行するのは比較的容易ですが、その逆は見直さなければいけない要素が多く簡単にはいきません。
たとえば、MG2というモーターを冷却するためにオイルポンプを追加して登坂性能を向上し、日本一厳しいと言われる山岳路を走ったり、あるいは高速での車両性能を確認するために、士別テストコースを最高速(180km/h)で連続走行したり、従来以上の試験評価でその性能を磨きあげてきました。
また高級車としての重要なNV性能(ドライバーが実際に体験する乗り心地や音質)も、エンジン音をより抑えるために吸音材や遮音材などを追加したり効率配置したことなどもそうした取り組みのひとつです。環境性能を含め、数字やデータで表せないところにヴェルファイアらしさが随所に盛り込まれています。
ヴェルファイアハイブリッドモデルのシステムイメージ
他に環境性能を向上した取り組みはありますか。
ハイブリッド車に標準装備された「ナノイー」リア吹き出し口
エンジン排気熱を利用した再循環速暖ヒーターは、冬場の冷間時のヒーター使用による電力消費を抑えて燃費向上へ結びつけます。ハイブリッド車は冬場の燃費悪化が課題でヒーティングのためにエンジンを回すことが要因の一つです。エンジン排気熱のエネルギーをエンジンの暖機促進に利用することで暖機時間を短縮するこのシステムは実用燃費の向上に貢献しています。
さらにハイブリッドモデルの象徴として、シートとフロアカーペットの一部のファブリック表皮に植物由来のバイオ素材を採用しています。
また、環境性能とともに、高級ミニバンならではの人に優しくきめ細かい心地良さを車内に入った瞬間に感じていただける新たな工夫も盛り込まれています。
特にお子様や奥様には車内で快適に過ごしていただけるよう、車内を爽やかな空気で包み込み、保湿効果も高いナノイーを設定したり、紫外線を約99%カットするフロントドアのスーパーUVカットガラスは、お肌に敏感な奥様にも喜んでいただけるのではないでしょうか。
トヨタを支えてくださる皆様の声に真摯に耳を傾け、改革を続けながら高い目標を目指します
今後、ヴェルファイアハイブリッドモデルは、どのような進化を見据えているのでしょうか。
さらなる軽量化に取り組んでいきたいと思います。ハイブリッドモデルはE−Fourを活用した4WD方式を採用していることもあり、同2.4Lのガソリン車に比べて約150〜200kg程度車両重量が重くなっています。軽量化は燃費に限らず、資源の節約、運動性能や乗り心地の向上にもつながるなど大きなメリットが存在するので、ハイブリッドモデルに限らず、サイズが大きくて車両重量の重いミニバン全体がもっと軽量化できれば、その恩恵は計り知れないと思います。
様々な情報やご意見、将来において必要とされる技術や装備のシーズを探し、いち早く商品化に結び付けることで、その先にあるお客様の笑顔につなげる。私たち企画・開発の人間は、お客様の笑顔で最高の瞬間を味わえますから。
