セオリーとベルトモールを曲げた男。 | HEN-AI C-HR 10 | ドア設計チーム代表 浅井 隼 「数百描いて、数百作って。もう隙はありませんよ」

ドア設計

ベルトモールというパーツをご存知だろうか。サイドウィンドウの下端にセットするモール(水切り)のことを指す。具体的な役割としては、第一にボディのウエストラインの上部におけるデザイン上のアクセント。第二の役割として、サイドウィンドウの開閉と同時に表面の雨水などの水分を切るための機能を持つ。

ベルトモールを曲げる。新しいチャレンジ。

「ベルトモールを曲げる、というのがすでに驚きでした。まず、これほどまでに曲がっているのを見たことがありませんでしたから」

窓の下端に位置する機能部品、ベルトモール。機能面から見ても、通常はまっすぐに押出成型されたプラスチック材をシンプルにレイアウトすることが多い。しかし、C-HRの場合はデザイン上の都合から大きく湾曲させる必要があった。結果、設計と製造に特に苦労したパーツになったという。

「もちろん、芯などが入っていれば曲げることは可能です。しかし、デザインを見ると、芯を入れられる太さでもありませんでした」

最初のデザインスケッチの段階でデザイナーがこの湾曲した形状案を出してきた時、製造サイドからは明確に「できない」という判断がなされた。

とにかく、今回のような大きな曲げ加工は初めてだったためだ。曲げるためには樹脂素材に熱を加えなければいけないわけで、ノウハウが全然ないこともあり、一からの試行錯誤となった。

「これは熱を加えて曲げているんですが、仕入れ先メーカーとどういう曲げ方法があるか、品質をどうやって保証しようかを、何回も繰り返して、課題をひとつひとつ消していきました」

画面中央の黒いラインが、ベルトモール。後ろに行くにつれて、大きく持ち上がるように曲がっている。

「しばらく経つとまっすぐになる」問題。数百を超える試作で、ついに量産可能に。

ベルトモールはメッキ仕上げの設定がある。つまり、押出成型の他にメッキフィルムを貼るという工程が加わっている。満足のいく仕上がりを量産するには、高いハードルを越えなければならなくなった。

「われわれエンジニアができることは、製造現場の職人の皆さんと知恵を出し合いながら試行錯誤を繰り返すことだけでした。熱を加えてベルトモールを成型すること自体が前代未聞だったわけですから」

熱を加えない状態、すなわち冷間で曲げてみることにもトライしたが、それも上手くいかなかった。

「苦労の末に何とか上手く成型できたと思ったら、時間が経つとまっすぐに戻ってしまったり、想定内・想定外織り交ぜて様々なトラブルとの戦いでもありました。その間の試作数は数えきれません。ゆうに数百個のオーダーは超えていたでしょう」



熱を加えて曲げている部分は、ウィンドウ下の大きなアールの部分だけではない。実は一番後方の跳ね上がった先端部分も、同じ曲げ加工にプラスして薄くカットするという複雑な処理を施したという。そしてこの部分もやはり時間が経つと形状が戻ってしまうという問題に直面し、それをクリアするまでには時間がかかった。

ベルトモールはサテンシルバー仕上げ。クルマのサイドのラインを引き締めている。

シワなんて許さない。デザインにこだわることで見えた、新しい困難。

ボディサイドのシャープかつ格好良いラインをどう具体化するか。そのラインに一本線を引くことの意味の深さ、そこに力を注ぐことができたことへの達成感は、何物にも代えがたい。

「曲げ成型機を使って熱を加えながらパーツを作るわけですが、最初の段階ではどうしても曲げた部分が歪んで微妙にしわが寄ってしまっていました。まっすぐなフィルムを曲げるんだから当然なのですが、その当然を許すわけにはいきませんでした」

クロームの色もピカピカではなく、渋いサテンシルバーにしたのは、他の部分に合わせての選択だ。サイドウィンドウ全体をぐるりとメッキモールで囲むという案もあったが、あえてこの色を選んだ。

このベルトモールはグレードの違いによってクロームの他にブラック仕上げも採用されている。もしもブラックだけだったらここまで苦労することも無かったはずだ。

機能だけでなく、デザインにもこだわったから、2倍も3倍も大変だった。しかし、その先にできたベルトモールは機能部品を超えた格好良さを明らかに備えている。

ベルトモール試作。このパーツにも、格好良さへのこだわりが詰まっている。

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