4年分の偏愛をまとめ上げた女。 | HEN-AI C-HR 18 | マネジメントチーム代表 田崎 香織 「ステージを見直さなければならない時こそが、進行の腕の見せ所でした」

マネジメント

新車を開発する上で重要となるのが、プロジェクトのスタートから開発に関わるすべての手配、そして実車のお披露目から発売までのスケジュールを全て把握し、関連する部署間の円滑な調整を図るという進行管理である。

進行管理とは、未然防止型トラブルバスターのこと。

トヨタでは「大日程」と称して、個々のステージの進捗状況を明確にした膨大な日程表としてまとめている。紙に印刷された、まさに「表」であることが興味深い。C-HRの場合、開発/生産拠点が日本と欧州に分散していたこともあって、それぞれの進捗状況を共有することが重要だった。その中で、進行管理担当者は考え得ることすべてを想定して、調整にあたることになる。

「ステージごとの到達ポイントをマイルストーンと呼んでいたのですが、そこでステータスを一度クリアにすることが重要でした」

大日程に記載されているステージは概ね4年分に渡る。実際には記載されていない初期コンセプトの段階も含めると、長いものでは6年に及ぶこともあるという。田崎が関わったのは最後の2年間だったが、大日程そのものは4年分を管理していた。その中でマイルストーンごとに期日を定め、個々の開発を完了しなければクルマは完成しない。そこで重要となるのは、地道な確認に尽きる。「期日はここです。みなさん大丈夫ですか?」というリマインド。しかし常に問題は起こる。

新車の開発作業というと、各部署間での衝突がありがちなのではと思うが、C-HRの場合は深刻なモノは無かったという。とはいえ、今回は「格好」と「走り」を徹底的に磨き上げたことに伴う新技術が数多く盛り込まれたことから、それに起因する細かな問題は常に現場を支配していた。最大級のヘッドライトを組み立ててみたら微妙な隙間ができてしまったといった問題は、完璧さを追い求めるがゆえに起きたことだが少々深刻で、進行担当にとっては「本当にやりきることができるのか? できなかったらどのステージまで戻ることが必要なのか?」といった、重い責任と共に素早い決断力も要求されることになった。

「常にフォローはしていました。リマインドも頻繁に行っていました。このチーム、ちょっと目を離すとスケジュールを無視して勝手に変更を始めてしまう、クルマを良くしたくて仕方ない人の集まりなんです」

個々のステージの進捗状況を明確にした膨大な日程表。

日本とトルコでかわされる二カ国言語の激論に割り込む。

C-HRは開発/生産を日本・トルコ・ヨーロッパの拠点で行うグローバルなプロジェクトだった。その過程で、日本国内だけでの開発作業では起こり得ない問題も出てきたという。トルコと日本で、エンジニア同士が直接やりとりする現場も多かった。使う言語は英語。しかしそこにいる人間の多くにとって、英語は母国語ではない。すると、話が熱を帯びるに従って、微妙なニュアンスの違いからあらぬ方向へと脱線してしまうことも多々。

「いや、それはそういうことではないのでは? と、途中で割って入って通訳をし直すこともありました」

こうした場面で重要だったのは、話の経過と結果を文書として残すことだったという。話の過程で誰が何を言ったのか曖昧になってしまったことも、文書に残しておけば次の会議で再確認できる。設計を担当するエンジニアに共通のメンタリティとして、「ここはオレが何とかしなければいけない」と思ってしまうことがある。それゆえに色々抱え込んでしまう。うまくいけば良いが、トラブルが起こるとまるでその人だけが悪かったような空気になってしまう。これは抱え込んだが為の情報共有のなさ故に、手を打つのが遅れ、プロジェクトとして選択の余地がなくなるためだ。こうしたことを避けるために、とにかくコミュニケーションを促進し続けた。そして、その記録は、万一予想外の事態が発生した時、フェアに迅速に対応を進める起点となった。ちなみに、海外拠点とのやりとりを重ねる過程で、日本人エンジニアの英語力はみるみるうちに上達していった。

クルマの開発が終わっても、進行管理は終わらない。

進行管理役の手帳には、恐ろしい数の付箋が挟みこまれている。プロジェクトで起こったこと全ての覚書である。それらの中には解決済のものも多いが、あえて残しているのは「この話、前にも出ていなかったっけ?」という現場からの質問に素早く答えるため。過去に起きた事例をまとめた、新車開発の辞典のような役割を果たす資料でもある。

「知らない人にこれを見られて、トラブルごとのまとめかと誤解されると困りますが、これは、問題化する前に「リスク」として取り上げ、プロジェクトを全員で徹底的に潰し込んできた案件。みんなの戦いの記録です」

新しいクルマが完成し、無事お客様の手元に届いた後も、進行管理には別の仕事が控えているという。それはプロジェクト自体の振り返りという名の総括である。関係した人物すべてから改めて話を聴き、それをまとめてプロジェクトリポートに仕上げる。ここではまだ情熱冷めやらぬ間に話を聴くことが重要だという。それもまた然り。良いクルマを作りたくて作りたくて仕方がない「熱き人々」が作り上げたクルマなのだから。

進行管理の仕事はまだまだ続く。

C-HR開発に関わるすべてのスケジュールを仕切ってきた田崎が、一番好きな部分はどこなのだろうか。

「ボディを横から見た時の、流れるようなラインとシルエットです。贔屓目も多少あるとは思いますが、このセグメントではやはり一番格好が良いと思っています」

進行管理役の手帳には、恐ろしい数の付箋が挟みこまれている。

その他の偏愛

  • HEN-AI C-HR 03 デザインから空気の流れを見る男。 空力性能開発チーム代表 楢崎 昭尋
  • HEN-AI C-HR 02 100枚以上のヘッドライト写真を持ち歩く男。 ヘッドライト設計チーム代表 岩村 勇介
  • HEN-AI C-HR 01 ボディで走りの質を作り込む男。 ボディ剛性評価チーム代表 天野 克彦

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