モニター期間を振り返る
脇阪寿一さんと考える、“わたし”に合った電動車

総括記事

脇阪寿一さんと考える、
“わたし”に合った電動車

2023.07.28

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、クルマの世界では電気の力を使ってよりCO₂排出が少なく、効率がいいクルマ“電動車(=xEV)”が求められるようになっています。

1997年に世界初の量産HEV「プリウス」を発売してから約25年、トヨタはBEV(バッテリーEV)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、HEV(ハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)の4種類のxEVを発売し、世界中で2,250万台を販売してきました。それでも、国内新車販売における割合はまだ半分にも届きません。

今回の「xEV長期モニタープロジェクト」は、そんなxEVについてもっと広く知っていただくための企画です。xEVの存在は知りつつも、エンジンで走るクルマに乗り続けてきた5人のモニターに、xEVを長期間保有して実際の生活に取り入れてお試しいただきました。xEVとともに過ごすことで、短時間の試乗では分からない、それぞれの使用環境やライフスタイル、クルマに求める価値との三者三様の関係が見えてきました。

xEVの4種類のパワートレーンは、それぞれどんな“わたし”に向いているのでしょうか。5人のモニターへのインタビューを終えた脇阪寿一さんに、改めて振り返っていただきました。

脇阪 寿一(わきさか じゅいち)さん

脇阪 寿一(わきさか じゅいち)さん

19歳でのカートデビュー後ステップアップを重ね、日本最高峰のレースであるフォーミュラニッポン、SUPER GTで輝かしい戦績を残す。2度のシリーズチャンピオンを獲得し「ミスターSUPER GT」の称号を得るなど黄金時代を築いた。2016年SUPER GTドライバーからの引退発表後は、監督としてSUPER GT 2019年シリーズチャンピオンを獲得。現在は、SUPER GT TGR Team SARD のチーム監督として、モータースポーツ界を牽引している。

レース活動以外にも、TOYOTA GAZOO Racingアンバサダー/イベントプロデューサー/日本体育大学非常勤講師として精力的に活動中。全国各地のイベントや販売店、大学教壇に於いて、『クルマの楽しさやモータースポーツの魅力を広く伝える』活動をおこなっている。

トヨタがさまざまな電動車をつくる理由

トヨタがさまざまな
電動車をつくる理由

——トヨタはBEVだけでなく、さまざまなパワートレーンを組み合わせてCO₂削減を目指す「マルチパスウェイ」の電動化戦略をとっています。これはなぜでしょうか。

脇阪:まず、何のためにトヨタがクルマの電動化を進めているのかというと、それは人類の共通目標である「2050年のカーボンニュートラル」を達成するためです。言い換えれば、CO₂排出を削減することで「きれいな地球を未来に届ける」ということが使命なのです。

これを実現するために、トヨタはお客さまの使用環境やライフスタイルに合わせて「多様な選択肢を提供する」ことが重要だと考えています。

例えばノルウェーのように電力のほとんどを水力発電でまかなっているような国では、BEVはCO₂排出を削減する有効な手段です。一方で、石油や石炭を燃やす火力発電が大部分を占めるような国で、単純にBEVを増やすことがCO₂削減につながるかといえば、そうではありませんし、そもそも電気が通っていない地域もあるなど、インフラ環境も異なります。トヨタは誰一人取り残すことなく、今すぐにできることからCO₂の削減に取り組むために、このような考え方を提示していると感じています。

4種類のパワートレーンは
それぞれどんな
“わたし”に合うのか

——現在xEVにはBEV、PHEV、HEV、FCEVの4種類があります。今回のプロジェクトを通じて、向いている環境や使い方が見えてきました。

脇阪:5名のモニターの 方々にインタビューさせていただいて感じたのは、これは自分も含めてなのですが、僕たちのクルマの捉え方はまだまだ“ガソリン軸”だ、ということでした。ガソリン車を基準にしてBEVやFCEVといった電動車を見ると、「今まではこんなことは気にしなくて生活できたのに」という違和感が目立つかもしれません。でも枕を替えると寝づらいのと同じで、「そういうものだ」と慣れてしまえば受け入れられるポイントもあるでしょう。

4種類のパワートレーンは“わたし”に合うのか

——長年ガソリン車とともに歩んできたレーシングドライバーとして、電動化はどのように感じますか。

脇阪:電動化をされても「操る楽しさ」は変わらないですね。僕は、200馬力なら馬200頭分の力の手綱を握ってねじ伏せるところに喜びを感じるので、それがモーターになろうが静かになろうが、操る喜びさえあればクルマの魅力は変わりません。特に今のトヨタのクルマづくりはそこを一番大切にしているので、まったく心配していないですね。もちろん、僕はやっぱり“ガソリン軸”の人間ですし、あのガソリン臭さがカッコいいものだとして青春時代を過ごしてきたので、それを取り除くのはなかなか難しいですが。でも、電動車がそれに変わる新たな魅力を私たちに与えてくれるはずだと僕は信じています。

だって、HEVの燃費について語るときの利根川さんの笑顔を見ましたか。やっぱりこういうクルマの進化が人々を笑顔にしていくのだと思います。

4種類のパワートレーンは“わたし”に合うのか

ライフスタイルによって
最適なパワートレーンは異なる

——各モニターさんの声を聞いて、いかがでしたか。

脇阪:滝田さんと遠藤さんがお乗りになったBEVについては、充電のストレスがもっと少なくなったときに、お二人がどう評価されるか興味がありますね。ガソリン車だって、ガソリンスタンドがないところで乗ったらストレスですよね。だからこれはクルマの問題というより、インフラの問題です。

ライフスタイルによって最適なパワートレーンは異なる

滝田さんは自宅で充電できるので充電のストレスはほとんど感じることがなく、「次のクルマはBEVにしたい」とおっしゃるほど生活にフィットしました。一方、遠藤さんはやはり充電がネックになってしまいました。でも今後充電インフラは充実してくるでしょうし、技術も進化します。充電時間は今後どんどん短くなっていくでしょうし、駐車しておくだけで非接触充電されるようになるかもしれません。充電のストレスさえ取り除かれれば、遠藤さんも「これ最高」ってなるかもしれないですね。走りは本当に気に入っていましたから。

窪川さんにお試しいただいたPHEVは、日常の移動ではEV走行を楽しむことができ、長距離を走るときはガソリンの利便性もあるという、楽しみと実用性のバランスが優れたパワートレーンですよね。集合住宅などでは、まだ充電が出来る環境は少ないですが、電気の走りを楽しみたいという人にとって選びやすいと思います。

FCEVに関しては、行動範囲に水素ステーションがあるかどうか、がポイントですね。給油と水素充填という点で、両者にかかる時間の差はありません。モーターならではの電気の走りは楽しめますし、長距離の走行も可能です。現状ではインフラ環境が適した人に向いているパワートレーンかもしれません。

田舎暮らしの利根川さんには、燃費が良いHEVが合っていました。年間2万kmも走られると、経済的なメリットも出てきます。ただ利根川さんはまだお若いから長距離移動もされていますが、歳を重ねると、長距離を日常的に走ることも無くなるのではないでしょうか。そうなると200km程度走れるバッテリーを積んだBEVが最適解になるかもしれません。「田舎ならHEVがいい」ということではなく、その人のライフスタイルによっても適切なクルマは変わってきます。

ライフスタイルによって最適なパワートレーンは異なる

僕は若いころクルマの販売店で営業をやっていましたが、昔のクルマの営業は御用聞きだったんですよね。クルマに関わるすべての相談に乗って、下手したら電化製品の修理まで頼まれるという(笑)。最近はそこまでの対応は少なくなったのではないかと思いますが、僕はこれからまた御用聞きが大切な時代に戻ると思っているんですよ。

なぜかというと、お客さま一人ひとりのライフスタイルとクルマの使い方を理解しないと、最適なクルマを提案できなくなってきているからです。そして、クルマ自体も、生活の様々なものとリンクをするようになってきました。

これからの時代では、いかにお客さまのライフスタイルに合わせて繊細な提案をできるかが、ますます重要になる気がします。極端に言えば、クルマだけに限る必要もないかもしれません。ですから、電動車についても、好みやライフスタイル、クルマに求める価値によって最適な種類が変わってくるのだと思います。

「誰一人取り残さない」
未来のために、
トヨタは選択肢を提供する

——使い方や価値観、住んでいる場所などによっても最適なパワートレーンは異なるのですね。

脇阪:だからこそ、トヨタは全方位で電動車を提供していく「マルチパスウェイ」にこだわっているのです。トヨタは「クルマで人々の生活を豊かにする」ことを目指して創業した会社ですから、誰一人取り残さず、すべてのお客さまに最適なクルマを選んでいただけるよう選択肢を提供することを使命としています。

今回、5名のモニターの方々に、xEVを長期でお試しいただきました。ぜひ各モニターのリアルな声を参考にして、“わたし”に合ったxEVを探してみてほしいと思います。

「誰一人取り残さない」未来のために、トヨタは選択肢を提供する