TOYOTA COROLLA DEVELOPER STORY

ボデー設計とエクステリアデザイン

クルマは、かっこよくつくるところからはじまる。

日本専用仕様として国内最適化させるため、ボデーサイズがグローバル仕様に対してわずかに小さい。
それをいかに魅力的なものに見せるか。そこには全体のデザインを考慮しながら
ディテールに対して地道な修正を加えるという匠の技が込められている。

人物写真
トヨタ自動車東日本株式会社 ボデー設計部 グループマネージャー
出口 連
新型カローラの開発では日本専用仕様のアッパーボデーの骨格設計と艤装関係を総合的に担当する。
出口

求めたのは、
日本適応ではなく、
日本最適

今回、私が手掛けた日本専用仕様のカローラは、12代目カローラ全体の開発における、まさに集大成というべき存在となっています。チーフエンジニアからの最初の指示は「ユーザーサイドに立ったサイズ感を実現する」ということでした。

スタイリングや走りだけではなく、日本の環境にあった使い勝手の良さを実現するために、ユーザーの動向、市場調査から全長、全幅を決めています。そのためドアパネル、ドアを取りつけるボデー側のピラーも日本専用設計になっていますが、そこにも使いやすさの工夫を取り入れています。例えば、駐車場でドアを開けた時のスペースは、5ナンバーの現行型より6mmも余裕があり、乗り降りのしやすさも同等になっています。グローバルモデルに対してただサイズが小さいということではなく、使い勝手が日本最適なカローラを実現したということです。

国内専用仕様である新型カローラは、日本の狭い道や駐車場に合わせて作られている。

見た目の違いが
わからなくても、やる

ボデーの最適化にあたって、全幅ではグローバルモデルに対してカローラは35mm、カローラ ツーリングは45mm狭くなっています。これは、フェンダーフレアの部分が変わっています。数値的にはわずかであるという印象があるかもしれませんが、実はアッパーボデー全体に及ぼした影響は大きく、ドアパネルは全面変更、ドアを取りつけるボデー側のピラーも全部作り直すこととなりました。こうした変更はお客様にとって体感できる明確なメリットがあるところではありませんが、しっかりとしたまとまりの良いボデーを構成するうえでは極めて重要な工程でした。

画像はフェンダーフレアの部分。見た目の違いがわからなくても、こだわりが詰まっている。

設計を進めていくうえで、当初はカローラとカローラ ツーリングは同じリアのフロアパン(床板)を使うことを前提に設計作業を進めていました。ところが実際に製造する工程で計画通りに成立できないことが分かりました。最適なボデーサイズを実現するために熱意をもって何度も検討を重ね、リアフロアパンを新規に製造することを決定しました。これは、目標達成に向けた妥協のない取り組みの一例です。我々が行うボデー設計は、このようにあまり派手ではないが、見えない部分の設計にもこだわる地道な作業の連続です。

リア部分にも、見えないこだわりと苦労が隠されている。

こうして完成した日本専用設計のアッパーボデーは、カローラとカローラ ツーリングを比較した場合、たとえばドア周りの開口部などはカローラもカローラ ツーリングも見た目は変わりません。インテリアのレイアウトも含めてBピラー(センターピラー)より前方のデザインは共通となっています。カローラとカローラ ツーリングのデザインで異なるのは後方のCピラー(リアクオーターピラー)以降、すなわちカローラの場合はトランクルーム、カローラ ツーリングの場合はラゲッジルームのデザインです。グローバルモデルとともに完成度の高い造りになったと思います。

小さいのに、
むしろ魅力的なはず

グローバル仕様も日本専用仕様も基本的には統一感のある仕上がりとなっており、違いは微妙な外板のラインだけです。この違いは双方を並べて見てもぱっと見ただけでは気づかないかもしれません。しかし実際には日本専用設計のボデー後部のラインは、特にサイドウインドウ下のショルダー部をわずかに張り出させることで、全体として幅は狭いのに実際はそうは見えない。むしろグローバル仕様に対してリア周りがボクシーな(四角い)イメージがあることから、小さい感じがしない。こうした特徴は初めて見るお客様にとっても、非常に魅力的に映るのではないかと思います。

とにかくナローボデー化に伴って、ディテールに対する配慮を徹底することで、小さくなったことがマイナスイメージにならないように留意されているのが特徴です。基本骨格というべきアッパーボデーの設計を外板のデザインがしっかり活かしたという意味では見事な仕上がりであると自負しております。

クルマって、
かっこよくなきゃ、
はじまらない

カローラのようなベーシックなクルマの場合、多くの人は保守的な存在だというイメージを抱いていると思いますが、今回は実に多くの革新的な取り組みをしています。5ナンバーの枠を破ったのもその一例です。これからカローラをご覧になるお客様に対しては、「どうですか? 格好良いクルマに仕上がりましたよ」と伝えたい。どんなクルマでもそうですが、何よりもその人にとって格好良いものでないと買ってはくれない。そういう意味で今回のカローラは一度見ていただければ確実に気に入っていただける仕上がりになっていると思います。