TOYOTA COROLLA DEVELOPER STORY

ボデー設計とエクステリアデザイン

自己満足かもしれない、でも、こだわらないわけにはいかない。

あらゆるクルマにとってフロントマスクはそのクルマを象徴する「顔」である。またテールデザインは
走り去るクルマが周囲に残す「余韻」でもある。そんな顔と余韻に込められたデザインを
実車において具体化したエンジニアの思いとは。

人物写真
トヨタ自動車東日本株式会社 ボデー設計部 グループマネージャー
松田 清臣
外装全般の設計を担当。カローラとカローラ ツーリングの設計においては外装の中でも主としてフロント周りとリア周りの設計を手掛ける。また、外装だけではなく内部も含めたモジュール全体の設計を手掛ける。
松田

クルマは顔で決まる

私は、カローラのグローバルモデルから日本専用仕様まで外装設計を担当しています。今回のモデルでは先にグローバル市場での展開があり、そして日本専用設計となるカローラとカローラ ツーリングが出ることになりました。私が担当したフロント周りに限って言えば、まずはグローバルモデルとして共通にデザインした精悍なマスクを日本の性能に適応できるよう設計することが大きなポイントでした。

デザインと性能の両軸から設計をした。

実際、クルマにとって「顔立ち」というものは極めて重要で、昨今は若者が好むようなシャープなものに集約されつつあります。そうした印象的な特徴そのままに、日本国内での多くのお客様にとって使いやすいサイズ感にまとめるというのが、今回取り組んだポイントでした。とにかくデザイナーが出してきた案をいかにして製品として具体化するかが私どもの仕事であり、機能部品はもちろんのことグラフィックも含めて地道に取り組んだ部分です。特にカローラシリーズは累計約4750万台にも及ぶロングセラーカー。世界有数の販売台数を誇っているクルマの顔を作るということは、やりがいのある仕事でした。

おそらく気づかれない、
だからこそこだわった

今回のカローラとカローラ ツーリングのフロントマスクは、グローバルモデルと共通のデザインテイストで日本専用仕様に仕立てています。お客様にとっては、その違いがなにか影響するというような話ではありませんが、日本専用仕様に仕立てるうえで苦労したことに、フロントロアグリル内のインテリジェントクリアランスソナー(接近警報装置)のレイアウトがありました。

こうした補機をフロントロアグリル内に装着するということは、別体部品として取りつけるということを意味します。ソナーとしての機能性はともかく、別体部品が別体部品に見えてしまうのはデザイン上おもしろくないし好ましくない。いかにして別体部品が見えないように感じさせるか、しかも機能部品として理想的な位置にレイアウトするか、ここがとても苦労した箇所でした。おそらくですが、別体部品であることに気づかない人がほとんどだと思います。お客様が外観において違和感を感じることがないように頑張った部分ですね。設計の自己満足かもしれませんが、普通には気づかれない部分へのこだわりと言い換えても良いかもしれません。

きっと、かっこいいと
感じてもらえる

リア周りについては、上から見た時の全体のラウンド感、つまり全体の伸びやかなシルエットの中で、幅が狭くなり長さも短くなったことをいかに感じさせないようにするかということを、デザイナーと議論しながら最適な解答を見つける努力を惜しみませんでした。ここで最終的に決まったリア周りの曲率は、テールランプを薄型にするなど綿密な検討のうえで決定したものです。これは特にカローラにおける大きなポイントであると言って良いでしょう。多くのお客様にとって、短くなったことのデメリットを感じることはないと思います。

カローラのリア部分。綿密な検討の末、完成した。

一方、カローラ ツーリングのリア周りに関しては、欧州仕様を基本にテールランプを日本専用仕様としています。見た目の印象を大切に、かつテールランプとしての機能に一切の妥協をすることなく、満足のいくものとなりました。このテールランプのデザインは一般のお客様にとっても、第一印象の時点で「格好良いね」と感じていただけるものと自負しております。

ツーリングのリア部分。「格好良い」と感じていただけるはずだ。

全てのグレードを
見てほしい

繰り返しになりますが、私の仕事はスタイリング担当のデザイナーが出してきた案を、いかにして実車にまとめるかということにあります。その意味で、私とデザイナーの思いが詰まった全グレードをしっかり見ていただきたい。そして「格好良いね」と感じていただければ何も言うことはありません。最後になりますが、私が最初にチーフエンジニアに言われたことは、「みんなで気持ちをひとつに、見て楽しい、走って楽しいクルマを目指していこう」ということでした。そうした思いが今回のカローラとカローラ ツーリングに込められています。