EVENT REPORT

サステナブルな社会と豊かな生活を両立させる

2024.04.04

3月22日(金)から24日(日)、東京・虎ノ門ヒルズで『CROWN “next-life” SALOON vol.1 -SENSE of NEXT-』というイベントを開催した。FCEV(燃料電池車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)といった環境に配慮した新しいパワートレインに焦点を当て、“少し先の未来のスマートなライフスタイル”の体験を提供することで、サステナブルな社会におけるさまざまな選択肢について知っていただくイベントだ。その模様についてお伝えしたい。

●クラウンの次のステージは、コミュニティづくり
今回のイベントではクラウンの価値観に共感する企業や活動と共に、未来のスマートなライフスタイルを感じ取っていただける展示や出店などのプログラムを自由にお楽しみいただきながら、クラウンの価値観を次世代リーダーたちやクラウンを愛する人たちとともに発信し、共感する仲間が募っていくコミュニティ『CROWN “next-life” SALOON』をつくろうと考えているのだ。

3月22日(金)から24日(日)にかけて東京・虎ノ門ヒルズで開催した、『CROWN “next-life” SALOON』の第一弾イベントのテーマは環境。『SENSE of NEXT』と銘打ち、未来の社会のあり方について、さまざまな分野で活躍する新しいリーダーたちや、参加者のみなさんと考えた。
具体的には、試乗をはじめとした、「水素」を活用した新しいライフスタイルの体験などを通じて、水素という選択肢が増えることの意義を伝えることが目的だ。

クラウンのチーフエンジニアを務める清水竜太郎は今回のイベントについて、次のように語る。
「今回は、水素のよいところを知っていただくためのイベントです。クラウンFCEVのほかに、コーヒーの焙煎機や調理用のグリルなども出展されています。このように、ライフスタイル全般で水素について理解していただくことには、大きな意味があると思います」
2023年秋に六本木ヒルズで開催したイベント「CROWN STYLE PARK」は、4スタイルのクラウンをライフスタイルに紐づけて紹介するものだった。いっぽう今回は清水が言うように、モビリティ社会におけるクラウンのミッションや先進性を打ち出す、テーマ性のあるイベントとなる。
革新と挑戦を続けながら継承と進化をする、というのはクラウンの大きな開発テーマでもあるのだ。

以下、どのようなイベントが行われたのかについて、リポートしたい。

●水素を使うと、おいしくなる
会場となった虎ノ門ヒルズステーションアトリウムには、クルマの本質的な楽しさと環境性能を両立するモデルということで、クラウンFCEV、クラウン(スポーツ)PHEV、クラウン(エステート)PHEV※プロトタイプの3台が展示された。また、希望者にはクラウンFCEVとクラウン(スポーツ)PHEVを試乗していただき、CO2排出削減と豊かなクルマ生活は両立することを、肌で感じてもらった。

会場では、環境に配慮した移動式店舗のキオスク「super normal market」が、マルシェを開催した。社会起業家/環境活動家の深本南さんがプロデュースした商品や、有機野菜、廃タイヤをリサイクルしたサンダルなどの商品が並んだ。
店頭ではスタッフの方が商品の内容や意義について詳しく説明してくださり、性別や年令を問わずに多くの方が足を止めていたのが印象的だった。

「super normal market」のマルシェの隣には、深本さんをはじめとする、トークセッションに参加する次世代リーダーたちを紹介するブースが設けられた。
ちなみに今回のトークセッションは、ただ話を聞いていただくだけでなく、参加者の方にも発言していただき、ともに考えるという趣旨で企画している。

香ばしい匂いが会場に漂っていたのは、UCC上島珈琲が水素焙煎コーヒーを振る舞っていたからだ。「2040年までにカーボンニュートラルの実現」という目標を掲げるUCC上島珈琲は、水素を用いることでCO2の出ない焙煎にチャレンジしているのだ。
コーヒーを淹れてくださったスタッフの方によると、高温から低温まで温度の調整幅が広い水素焙煎は、豆の性格にあった焙煎が可能とのこと。つまり、CO2を出さないだけでなく、より美味しいコーヒーを提供できるというのだ。

会場の一画で、見慣れないアイテムを見つけた。それは水素を燃やして調理をするHydrogen Griller。水素を燃料として持ち運ぶカートリッジには、トヨタがFCEV開発で得たノウハウが使われているとのことだった。
Hydrogen GrillerはCO2を発生しないばかりか、都市ガスより高温で燃焼できることと、含有する水蒸気の量の関係で、外側はカリッと、中身はふんわりジューシーに焼き上がるという。Hydrogen Grillerもまた、サステナブルと豊かな生活を両立するアイテムなのだ。

●いいクルマ、美しいクルマでカーボンニュートラルに貢献する
最後にトークセッションの模様をお伝えしたい。トークセッションは4つが企画された。
元サッカー日本代表で、現在はAuB(オーブ)株式会社の経営者として腸内環境を整える事業を行う鈴木啓太さんは、クラウンシリーズの車両性能開発を統括した多和田貴徳とともに、「ウェルビーイングが生む豊かさ」というテーマを掘り下げた。

福祉とアートで世界を変えることを目的としてヘラルボニーを立ち上げた松田崇弥さんは、「途上国に世界に通用するブランドを作る」という理念を掲げて株式会社マザーハウスを創立した山崎大祐さんとともに、「社会を変える、新たな革新と挑戦」について語った。

前出の「super normal market」のプロデュースなどで知られる深本南さんは、Forbes JAPANの谷本有香Web編集長と、「エシカルと豊かさを生むライフスタイル」というテーマを取り上げた。

デザイナー/アーティストの篠原ともえさんは、クラウンの開発責任者である清水竜太郎とのトークセッションで、「未来につなぐ、人を豊かにするプロダクトデザイン」について、意見を交換した。

冒頭で清水が、こんなアイスブレークで会場をなごませた。
「実は学生時代にテクノポップのバンドをやっていて、電気グルーヴの石野卓球さんが憧れでした。だから篠原さんが卓球さんのプロデュースでデビューしたことは、鮮烈な印象として残っています」

以下、おふたりの対談の一部を抜粋したい。
篠原
「2020年にアートディレクターの池澤樹と共に夫婦でクリエイティブスタジオ「STUDEO」を立ち上げた時に、ファッションとサステナブルは同じ考え方で届けるべきだと思っていました。森林被害を防ぐために捕獲されたエゾ鹿の革を用い、しかも通常なら廃棄してしまう端材の部分まで活かした革の着物がニューヨークADC賞で評価していただいたことは、うれしい出来事でした」

清水
「クラウンは来年で70周年を迎えます。ずっと大事にしてきたスピリットは革新と挑戦を続けながら継承と進化をする、ということです。今回のクラウンに関しては、若いデザイナーも参画しており、それが好評です。いいクルマ、美しいクルマであることを広く知っていただき、FCEVやPHEVでカーボンニュートラルに貢献したいというのがいまの思いです」

篠原
「クラウンのFCEVに試乗させていただいて、こんなに静かで滑らかなの! と声が出てしまいました。車内の静けさは極上で、そのうえCO2が出ないというのも素晴らしいと感心しました」

清水
「現在、水素ステーションは全国で160カ所とかなりの勢いで増えていますし、FCEVは3時間の充填で約820㎞も走行が可能なため、東京のような都市やその近郊での生活であれば生活に十分フィットする車だと思います」

このトークセッションは、参加者の方にも加わっていただくもので、参加者から清水に「技術の進化によって、どんなクルマが実現できそうか?」という質問があった。清水は、こう答えた。

「クルマは100年に一度の変革期とされていますが、楽しく、快適に移動する自由が大事だということは変わらないと思います。最近は、ちょっとしたソフトの変更でクルマの味付けを変えることができるように進化しています。たとえば僕と篠原さんが同じクルマに乗っていたとしても、まるで別の味付けにすることもできる。将来的には、ひとりひとりにぴったりの味付けにできるかもしれません」

参加者の声を聞くと、「クラウンのイメージが変わった。良い意味でチャレンジングで先進的」という意見や、「FCEVに乗ってみたくなりました」など、前向きなものが多かった。

今回の『CROWN “next-life” SALOON vol.1 -SENSE of NEXT-』では、水素を知っていただく良い機会を提供できたと考えている。お客様の身近な場所でクラウンを通じて、水素の意義を知っていただくという取り組みはまだ始まったばかりだ。