CROWN CROSSOVER RS "Advanced・THE LIMITED-MATTE METAL"を発表

EVENT REPORT

CROWN CROSSOVER RS "Advanced・THE LIMITED-MATTE METAL"を発表

2024.01.19

クラウン(クロスオーバー)の特別仕様車が発表されたというニュースは、一見するとなんの変哲もないものだと受け止められるかもしれない。だが、実はクラウンのさらなる挑戦のプロローグであるのだ。

マットメタルのクラウン(クロスオーバー)がアンベールされ、その全容が明らかになると、招待客のみなさんの表情がパッと輝き、瞳に光が宿った。

12月11日(月)トヨタ・クラウンの専門店である「THE CROWN 横浜都筑」において、CROWN CROSSOVER RS "Advanced・THE LIMITED-MATTE METAL"がお披露目された。「THE CROWN」の各店舗でオーダーできるこの特別仕様車は、ひと目で見る者を虜にする、強い存在感を放っていた。

デザインを一新し、4つのスタイルを提案するなど、クラウンは新機軸にチャレンジしている。けれども、それだけではない。「THE CROWN」という専門店を設立し、ここをオーナー同士のコミュニティの場にするなど、お客様とのコミュニケーションや、販売店との連携についても、新しい領域に踏み出そうとしているのだ。

この日は、特別仕様車に興味をお持ちの方をお招きし、開発陣と直接言葉を交わしていただく「THE CROWN MEETING」が開催された。

100以上のアイデアから生まれた1台

登壇したのはチーフエンジニアの清水竜太郎と、チーフデザイナーの宮崎満則。マット塗装およびコーティング技術の説明パートでは、堤工場塗装成形部の石垣佑樹とモビリティ材料技術部の竹谷美雪が加わった。

まず、CROWN CROSSOVER RS "Advanced・THE LIMITED-MATTE METAL"を開発する経緯について、清水は次のように振り返った。

「専門店ならではの特別なクルマを仕立てるにあたって、特別に格好いいクラウンを作りたいと考えました。個人的にマット塗装が大好きですし、さらに(顧客層に)広がりを持たせたい、という思いもあり、このような仕様になりました」
デザインを担当する宮崎は「実は、100以上のアイデアがありました」と明かす。

「何度も販売店に足を運び、100以上のアイデアを見てもらいながらご意見を伺った結果、マットメタルに決まりました。実車を見ると、クラウン(クロスオーバー)の“カタマリ感”をダイナミックに表現できたと自負しています。また、クローム部分の艶と、マットな部分のコントラストも鮮やかに仕上がりました」

従来のマット塗装は、メインテナンスが難しいという問題を抱えていた。汚れが付着した部分を磨くと、マットな部分に艶が出てしまうのだ。この問題を解決したのが、竹谷をはじめとするモビリティ材料技術部のエンジニアだ。
竹谷は「メインテナンスを容易にするために、コーティング剤を採用することになりましたが、なかなか理想のものが見つかりませんでした。そこで、自分たちで開発することになりました。素材の組み合わせを変えたコーティング剤を試作してはテストという作業を、地道にコツコツと繰り返しました。その結果、マットの凹凸を生かせるほど薄くて、しかも保護性能が強いコーティング剤が生まれました」と明かした。

生産の工程を担当した石垣は、「苦労しました」と率直に語った。

「マット塗装は、埃などの異物が入っても磨いて除去することができないので、通常の塗装より1時間以上かけてボディをきれいにする必要があります。これは実現化が難しいのではないかと懸念しているスタッフもいましたが、ある日、マットメタルの実車を見て“これは格好いいから絶対に実現しよう”という声が強まりました。」

トヨタの社内にはコーティング素材に関する知見も、コーティングを施す作業工程も存在しなかったので、ゼロからの挑戦でした。これまでGRにはマットメタルのボディカラーが存在しましたが、トヨタとしてはこれが初で、コーティングの組み合わせを実現したのは、GRも含めたトヨタブランドで最初の事例となった。

クルマを中心に幸せを量産したい

続いて、参加者の方から寄せられた質問に、清水と宮崎が答えた。いずれも興味深い質疑応答で、ここではいくつか抜粋したい。

まず「どのクラウンが好きですか?」という難問に、ふたりは頭を抱えた。清水は「本当に全部好きなんです」と前置きしてから、こう答えた。

「そもそもなぜ4つのクラウンが生まれたかというと、ライフスタイルが多様化し、さまざまなライフステージがあるなかで、クラウンはひとつでなくてもいいという判断からです。六本木ヒルズで4つのクラウンを展示するイベントを開催しましたが、その時に3人家族がお見えになって、娘さんはエステート、お父さんはセダンがいいと言う会話を聞きました。この時に、クルマを中心に幸せを量産したいという願いが少しかなったと感じました」

宮崎は 「どれもわが子のように感じています」と苦笑しながら、こう答えた。

「すべてのクラウンに思い入れがありますが、クラウンを変える、セダンを変えるという意気込みで最初に発表したクラウン(クロスオーバー)には、特別な感情がありますね」

続いて、参加者の方からは「なぜマットブラックではなく、マットメタルなのか?」という質問が飛んだ。この質問に、宮崎が答える。

「おっしゃるように、マットにもいろいろな色があり、印象も変わります。このクルマの“カタマリ感”と強さを表現するにはメタルが一番だと考えました。もうひとつ、新しさという意味でも、マットブラックよりマットメタルだというのが結論でした」

質疑応答が終わると、軽食と飲み物が用意され、ゲストと開発陣がフランクに意見を交換するクラウン懇親会へと続いた。

CROWN CROSSOVER RS "Advanced・THE LIMITED-MATTE METAL"を中心にあちこちに会話の輪ができ、話が弾む。招待客のなかには「初代から16代目まで、すべてのクラウンに乗っている」とおっしゃる方もいて、清水は「それはうちの(豊田章男)会長だけだと思っていました」と舌を巻くひと幕もあった。いずれの招待客も、クラウンやクルマに対する深い愛情と見識をお持ちで、テクノロジーの話からデザインまで、クルマ談義に花が咲いた。

イベントを終えた清水と宮崎、ともに「とても有意義な機会でした」とこの日を振り返った。
宮崎は「クラウンのオーナーやファンの方からダイレクトに意見を頂戴できて、楽しかったですね。もちろん、すべて実現できるわけではありませんが、創作の意欲が刺激されます。今後は、ぜひ若手のデザイナーも連れて来たいです」と綴った。

最後に清水は、次のような言葉でまとめた。

「クラウンのチーフエンジニアを務めた諸先輩方も、お客様のご意見を聞いてきたと思います。ただし、販売店でこのような形でお話しをうかがう機会はあまりなかったので、意見を聞くことを継承して、クラウンを進化させていきたいですね。THE CROWN 特別仕様車の今後については、乞うご期待としか言えませんが(笑)、アイデアはたくさんあります」

クラウンというクルマを開発するだけでなく、お客様とのつながり方や販売店との関係性も革新するというプロジェクトが動き出した。この日は、大きな目標へ向けて最初の一歩を踏み出した、記念すべき一日だったのだ。

THE CROWN 横浜都筑
イベント開催店舗
THE CROWN 横浜都筑

神奈川県横浜市都筑区荏田東2-9-30

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