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「イノベーションそのものに乗る感覚」マザーハウス山崎大祐がクラウン「FCEV」にみた可能性
2024.04.23
途上国の素材や技術を活かしたビジネスを成長に導き、注目を集めるファッションブランド・マザーハウス。代表取締役副社長を務める山崎大祐が、新型クラウンに試乗。「後輪駆動のセダンがとにかく好き」というクルマ好きの山崎は最新の燃料電池車になにを感じたか。
2006年に創業し「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、途上国にある素晴らしい素材や技術に着目。そこに暮らす人々の可能性に光をあて、ものづくりを通して途上国のイメージを変えたいとビジネスを続けているマザーハウス。
現在ではグローバルに約50の店舗を持ち、バングラデシュでは約350人が働く工場も運営し、雇用も創出。マザーハウス代表取締役副社長の山崎大祐は「日本発のブランドとしてファッションで、世界で勝負できるブランドにしたい」と熱く語る。
ただし、いままでの道筋は順風満帆というわけではなかった。ゴールドマン・サックスの日本法人でアナリストという職と手持ちの資金を投げうってマザーハウスにジョインしたときには、周囲のみなから「山崎はどうかしている」と言われたという。社会が不安定な途上国ではテロが起き、災害があり、乱高下する経済状況に振り回され、経営危機も経験した。
社会を変える、“最初にやる”人たち
「現実と必死に向き合っているときには社会に向き合うことや人のことに想像力を働かせる余裕なんてありませんでした。そんな僕でも学生時代や20代のころには、社会はマイノリティーや弱い立場の人のことを想像しないとダメじゃないかって強く思っていたんですよ。でも自分がベンチャーを始めてみたらそんなことは言っていられなかった」
だからこそ、と山崎はいう。
「やっぱり余力のある人には社会のことを考えて欲しい。利他の心、という言葉がありますが、他にまなざしを向ける余裕がある人は限られています。そういう人からやっていかないと社会は良くならない。なにかを最初にやる人たちってコスト高いじゃないですか。リスクだってあるかもしれないし」
「でもその最初の部分を突破したあとには美しさとか楽しさとか、人の感情を動かすものがある。今日乗ったクラウンも水素で走るという新しい技術に挑戦しているクルマですが、運転していて想像以上に楽しいクルマでしたし」
常に革新と挑戦を続けてきたクラウン。2023年に誕生したセダンタイプの新型クラウンはカーボンニュートラル実現に向けた電動化の選択肢としてハイブリッド車に加えて水素を燃料とする燃料電池車を設定。トヨタの代表車種であるクラウンに、水素社会の広がりをリードするという役割を与えた。
想像以上のクラウンの走り
「クラウンってこんなに楽しいクルマだったんだ、って、いい意味で期待を裏切られたのが試乗した感想です。乗り心地が柔らかくて静かに走る、おとなしいクルマなんだろうなと思っていたんですよ。でも運転してみたら走る喜びみたいなものを感じられて、スポーツモードまでありましたよね」
トヨタのスポーツセダンであるアルテッツァに長年乗っていたという、実はクルマ好きの山崎。「運転していて楽しいし、乗り心地もとてもいい。面白さと快適さのバランスが素晴らしい」と絶賛する。
デザインについても「このセダンの形がクルマ好きの自分としては一番美しいと思う」と山崎。クロスオーバーやスポーツ、エステートといったSUVとセダンを融合させた新時代のクラウンが登場したなかで、このセダンというスタイリッシュなスタイルが好みだと話す。
「劇的なモデルチェンジですよね。クラウンがクロスオーバー!? と僕も驚きましたが、そのスタイルもかっこいいなとも感じていました。それでもやっぱりこうしてセダンを見ると、クラウンらしい大型の高級車の佇まいに、どこか安心するものを感じるんですよ。屋根の後端が伸びたファストバックのようなデザインも、モダンな印象があっていいですね」
試乗ではクラウンの挙動を仔細にチェック。発進や停止ではときにアクセルやブレーキを強めに踏み、素早くステアリングを操作して車線変更をするなど、さまざまな挙動を試した。
「大きなセダンですし、もっと穏やかに反応するのかなと予想していたんですが。走る、曲がる、止まるというクルマの基本的な挙動の中で、自分が動かしたいという感覚に対してしっかりと反応してくれたのが驚きでした。僕はクルマが好きなので、レンタカーで小さなクルマから大きなクルマまで色々借りて乗ってみたりするんですが、このクラウンのレスポンスは特によかったですね。運転しやすくて、楽しいクルマです」
“走行時CO2排出量ゼロ”の衝撃
力強くアクセルを踏み込んで加速するとき、山崎はひとつ気がついたことがあるという。それが燃料電池車ならではの静粛性だ。
「踏み込んでもめちゃくちゃ静かでしたね。モーター駆動だから加速がよく、後輪駆動ならではの走る楽しさもあって。会話が自然にできる静かさがありながら、少しだけ地面の状態を伝えてくる音もある。これって大事なんですよ、運転するうえで。まったくの無音じゃなくて必要なだけのインフォメーションがあるから、安心して運転できるんです」
ロードノイズにまで言及する山崎の言葉は、モータージャーナリストさながらのインプレッション。モーター駆動のうえにノイズキャンセル機能も搭載するクラウンの静粛性を的確に指摘。さらに、発電のために走りながら取り込んだ空気はフィルターでろ過され、排出される空気は浄化される。
「燃料電池車を持ってるって、なんかかっこいいですよね」。試乗しながらぽつんと山崎がつぶやいた。
「夢のクルマなんですよね、イノベーティブで。しかもそのインパクトのレベルが高い。僕らのような新しいビジネスに挑戦する人たちって、みんなイノベーションに憧れているんです。で、僕らが技術的な話をするときに20%削減、みたいな話はよく聞くんですが、それってあんまりくすぐられないんですよ。“走行時CO2排出量ゼロ”という言葉は強い。ゼロにした、という劇的な変化はかっこいいんです」
イノベーションそのものに乗っている感覚。クラウンに乗ることの意味を山崎はそう評した。伝統的に落ち着いたイメージを持たれるクラウンが、再先端の技術を搭載したイノベーティブなクルマになったということも、そのインパクトを高めていると語る。
そんなクルマが生まれたことを、社会課題にテクノロジーがついてくるようになってきたひとつの例だと山崎はいう。
「僕のまわりの面白いリーダーたちは2拠点生活を普通にするようになったり、環境問題や生物多様性ということに本気で向き合って、自分の生活とマッチさせる生き方を始めていたりします。でもなかなか技術がついてこないことってあるんですよね。その意味では彼らはきっとこのイノベーティブなクラウンにとても興味を持つでしょうね。若い世代のリーダーたちの豊かさの象徴的な生き方のシーンのひとつにキャンプがあるんですが、空気を綺麗にしながら走るこのクラウンが自然のなかにある光景って、とても想像しやすいなと思いますし、知人たちのいるキャンプにこのクルマでいったら、みんな飛びつくと思いますよ」
次世代リーダーたちがイノベーティブなクラウンに刺激されて繰り広げられる会話。ぜひ聞いてみたいものだ。
山崎大祐
1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部に在学中、ベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持つ。大学卒業後、ゴールドマンサックス証券でエコノミストを4年間務める。
2006年、代表兼デザイナー山口絵理子と共に「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念とする株式会社マザーハウスを立ち上げ、取締役副社長として経営に参画。2019年、代表取締役副社長に就任。途上国を中心に海外を飛び回り、マーケティング・生産両サイドに携わっている。
「思いをカタチにする」経営ゼミ「Warm Heart, Cool Head.」を主宰。(株)Que社外取締役、日本ブラインドサッカー協会外部理事を務める
Photographs by Kizuku Yoshida
Text by Tsuzumi Aoyama
この記事のクラウン
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