エクステリアデザインに込めた想い

Story of Engineer

クルマに込めた想いをご紹介

Episode.02

エクステリアデザインに込めた想い

あくなきデザイン開発への挑戦が生み出す、
2つの個性

記事協力:八重洲出版「driver」編集部

新型アルファード/ヴェルファイア

デザイン開発において、大ヒット作のフルモデルチェンジほど難しい仕事はないだろう。それが高級ミニバンとしてトレンドをリードし続け、今や海外からも動向が注目されるアルファードであればなおさらである。
「先代モデルがたいへん好評で、大空間の高級車として一定の認知を得ました。今回4代目を造るにあたって、ガラッと変えるのか、変えないのかというのが最初に議論した部分です。我々としては、高級車は(歴代モデルからの)継続性みたいなものも重要だよねと。造形のテーマでも、継続性をある程度持たせたなかでどれだけ進化させられるのかがチャレンジでした」(プロジェクトチーフデザイナーの江菅 誠さん)

トヨタ車体 デザイン部 デザイン戦略企画室 主査の江菅 誠氏

先代の記録的セールスにエクステリアデザインが大きく貢献したことはいうまでもないが、シリーズ全体としては課題もあった。
「先代モデルでは顔が4つありました。アルファードとヴェルファイアで、それぞれに標準とエアロ。ただ、実際の販売を見ると、(売れているのは)圧倒的にアルファードのエアロでした。一つのモデルに人気が集中していたことから、新型ではよりお客様が望むところに向けて、しっかり商品を造っていこうと」(江菅さん)

アルファードに対し、ヴェルファイアのあるべき姿を問い直し、先代とは違う方向性を見出すに至っている。
「時代性を考えると、先代のヴェルファイアは先進性やテック感を狙ったセグメントはしっかり出来ていましたが、単純にメッキなど加飾部品の量やあしらい方に課題があると捉えました。新型は全体に上質、上品で、品格を意識しました。でもスポーティでアグレッシブな部分もしっかり表現しようと」(江菅さん)

そして、“オラオラ・ギラギラ・ハデハデ”という従来イメージからの変化は、ヴェルファイアに限ったことではないのだ。
「ディテールが最初にメッセージにくるのはやめようと。せっかくこの大きなボディサイズで、面の大きさを表現できるのはこのクルマでしかできないことですから。先行開発でやってきたのは“塊ファースト、加飾セカンド”。先代モデルではそれが逆にきていました。この大きな塊でしかできない強さを表現したいなと」(エクステリアデザイン担当の横井 聡さん)

トヨタ車体 デザイン部 デザイン戦略企画室の横井 聡氏

メッキ加飾は使っているものの、明度を落としたりサテン調を用いたりなど、刺激を落としてクルマ全体の高級感を際立たせる脇役に。いわば“大人のアル/ヴェル”に生まれ変わっている。
もちろん、ミニバンならではの圧倒的な押し出し感も、見事に両立されている。最大の特徴は、フロント先端をハイピークにした逆スラントフェイスだ。

写真はアルファード

「イメージしたのは、闘牛の突進していく姿です。それをひとつのテーマとしまして、すべてはここから始まるといいますか。前へ向かっていく額の先端を頂点に、後ろへ向かって大きな面変化で流れていく。そこを強調するように造っています」(横井さん)
3眼LEDの薄型ヘッドライトも彫りの深い精悍な眼力で存在感をアピールする。

1枚目がアルファード、2枚目がヴェルファイア

2台のデザインの差別化も絶妙だ。
アルファードは、先代で上下方向に拡大したグリルが左右方向のヘッドライト下まで面積を広げ、さらに巨大化。グリル内の表現は横基調を強調した細いバーに代えて、立体感あふれるブロック状のパターンを採用している。そのなかに融合したクリアランスランプ&ウインカーもユニーク。
ヴェルファイアは歴代モデルで続いた2段ヘッドライトが進化。基本的にはアルファード共通としながら、クリアランス&ウインカーをその下に配置して新たな2段構成としている。グリルは上下をアルファードのように一体化しながら、これも歴代同様に太く逞しい横基調で構成した。

サイドビューも非常に考え抜かれた出来映えだ。見どころは大きく3つある。
一つはセンターピラーの形状だ。
「DNAはしっかり残すように。僕はセンターピラーがアルファードのテーマだと思っています。歴代モデルで見ていくと、特徴的な傾斜が徐々に強くなってきました。新型ではいっそう大胆に傾斜しています。ドライバーと後席を融合した広い室内をイメージさせるデザインです。より高級車らしい伸びやかさも表現しています。
さらに、車両のエンブレムを配置しました。乗車するときの高揚感、所有する喜びに寄与できればと」(横井さん)
エンブレムのセンターピラー配置は、フロントグリルのそれがトヨタマークに置き換えられたことに関係している。ヴェルファイアの車両エンブレムは先代までなかったが、新型では新規にデザインされている。

1枚目がアルファード、2枚目がヴェルファイア

先代と同じ全幅とは思えないダイナミックな抑揚も見どころだ。フロントショルダーやリヤクオーターを大胆に絞り込み、後方へ流れるようなキャラクターラインと力強いフェンダーを生みだしたデザインは、美しく逞しい。
進化したフラッシュサーフェイスキャビンも特徴。ルーフサイドからメッキモール・ウインドゥのサイド断面は、トヨタ車でもっとも薄い断面構造を実現している。見栄えのよさは欧州プレミアム勢に比肩する。

上がアルファード、下がヴェルファイア

リヤエンドもキャラクターは引き締まったウエストのようで、そこから連続するシャープなバンパーコーナーもスポーティ。ボディサイズを使い切る尖ったような両隅の張り出しは、後ろ姿を実寸以上に大きく見せる。リヤコンビランプは、アルファードはフロントと統一感のあるブロック調、ヴェルファイアは歴代で継承している4灯タイプに一文字ラインの組み合わせだ。

ボディカラーにも見どころがある。プラチナホワイトパールマイカとブラックは両車共通だが、新たな提案としてプレシャスレオブロンドを開発。アルファードに設定の新規色だ。
「外板色では、今まで売りにしたギラギラしたものではなくて、質感のよさを感じるようなカラーを提案したいと思いました。売れるのはほとんど白と黒で、有彩色を打ち出すのは結構勇気がいることですが、イメージを変えたいというのがあって。

ボディの抑揚を際立たせる新規開発色「プレシャスレオブロンド」。ライオンのたてがみから想起したカラーだ

高級感でいうと、白や黒は王道です。ブロンズというと、ブラウン系は高級感があります。ホテルなどでもブロンズブラウンとか。ベージュは質感とか上品さを感じられます。そのあたりの色で何か提案できないかと。細かい粒子とキラキラした粒子を混ぜて、ブロンズで落ち着いた色だけれど光が当たるとキラっとするみたいな。陰影もしっかり出るんです。抑揚あるボディの造形を色でもさらに強調できます」(カラーデザイン担当の小川真知子さん)

トヨタ車体 デザイン部 インテリアクリエイト室 小川 真知子氏

ヴェルファイアでは、Z Premierに注目したい。ツヤ有り黒塗装×漆黒メッキが特徴で、上質さをまといつつ、アグレッシブな雰囲気も醸し出すヴェルファイア専用のグレードだ。

ヴェルファイアの新グレード、Z Premier。フロントグリルのメッキが漆黒となり、これまでにないアグレッシブな印象

上品で格調高いアルファードと、大胆でアグレッシブなヴェルファイア。デザインで選ぶなら、今度は悩むこと必至だ。いや、果たして答えは出るだろうか?