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平和酒造株式会社 代表取締役社長 山本典正氏

伝統を受け継ぎ、未来へと繋ぐために。
“世界一の酒”を生み出した酒蔵社長の組織改革。

伝統を受け継ぎ、未来へと繋ぐために。“世界一の酒”を生み出した酒蔵社長の組織改革。

創業およそ1世紀。「平和酒造」4代目として蔵を守る山本典正氏が達成した“世界一の日本酒”という悲願。それは伝統を守りながら、さらに進化を続ける山本氏の信念により成し遂げられた。奇遇にも同じ4代目となるアルファードに乗る山本氏の心に浮かぶのは、歴史の重みか、さらなる挑戦への決意か。自身の仕事と車との不思議な符合が、山本氏を新たな目的地へと駆り立てる。

2020年12月。
世界最大級のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」SAKE部門の最優秀賞に「紀土 無量山 純米吟醸」が選ばれました。
蔵元は和歌山県海南市にある平和酒造株式会社。
世界で最も権威のある品評会での最優秀賞の獲得、つまり“世界一の酒”の称号。それは創業90余年にして獲得した悲願の栄誉でした。

技術、伝統、素材、環境、熱意。良い酒づくりには欠かせぬ要素が無数にあります。そしてこの栄誉には、2019年に4代目社長に就任した山本典正氏による組織づくりも、大きな要因となったのです。

平和酒造の創業は昭和3年。100年近い伝統がある蔵ですが、その歴史は決して順風満帆ではありませんでした。とくに第二次大戦中には国から酒造の休業を命じられ、戦後も再開許可がなかなか降りなかったといいます。だからこそ酒造りを再開した際、平和な時代に酒造りができるという万感の想いを込めて「平和酒造」という屋号に改められたのです。

平和酒造の歩んだ歴史を穏やかに、淀みなく話す山本氏。

「初代が立ち上げ、2代目が厳しい時代を耐え、先代が成長させてきた蔵。伝統への思いは、いつも心のなかにあります」

という言葉で先人たちへの敬意を語りました。

そんな歴史ある酒蔵の長男として生まれた山本氏。幼い頃から、いつか家業を継ぐという漠然とした思いは持っていたといいます。
山本氏が高校を出て、進学先に選んだのは京都大学経済学部。醸造そのものを身につける道ではなく、より俯瞰で組織運営を学ぶ学舎を選びます。さらに大学卒業後はすぐに家業に戻らず、人材系のベンチャー企業に就職。

「当時はベンチャーという言葉が知られ始めた時期。自らの手で道を切り拓くような在り方がかっこよく見えたんです。だから家業のための修業というよりも、自分を試してみたい気持ちが強かったかもしれません」

そう笑う山本氏。しかし27歳で家業に戻った後、経済学部での学びとベンチャー企業での経験は、山本氏の強い武器になりました。

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「平和酒造株式会社」に入社した山本氏。修業を経て経営を任されるようになると、さまざまな組織改革に着手しました。その最たる変革が人員。

「全国に1200ほどの酒蔵がありますが、当社がおそらく唯一、新規採用を大学・大学院の新卒に限定して酒造りをしています」

淡々と話す山本氏ですが、これは極めて異例のこと。というのも酒造りをする蔵人は、熟練を要する職人。必然的に技術の習熟までに時間がかかり、平均年齢は高くなります。そのなかで新卒採用のみに舵を切ったのは、単なる社の若返りという以上に、日本酒業界全体の未来のためでした。

「日本酒業界は一般的に、“技術は背中で学べ”という職人の世界。酒造りの時期にだけ集まる季節労働の蔵人の立場で考えれば、若い方に技術を教えて自分が用済みとなってしまったら困りますよね。だから経営者に不信感がある状態ならなおさら技術の伝承がうまくいかない。そういう不健全な状態をなくすため、正社員として採用し、技術を皆で共有していこう、ということにしました」

平和酒造株式会社では、入社した社員全員に作業手順書が配られます。気候や気温に合わせた発酵の状態、これまで酒造りの仕事の多くは職人の勘によって成り立っていました。山本氏はこの数値化が難しい部分をあえてデータベースにしてクラウドで共有しています。
それは決して職人仕事を蔑ろにすることではなく、むしろ先人たちの歩みに敬意を払い、それを正しく伝えていく手段。そしてその重みを感じることで、若い職人ひとりひとりが、自身の仕事に誇りを持つことができるのです。

「良いプロダクトを作りたい、良い評価を得たい。そういう思いは、ものづくりの根幹であると思っています。だから社員の皆が醸造家であることに誇りを持てるような体制を常に考えています」

さらに山本氏の改革は、それだけに留まりません。『平和酒造株式会社』では、全社員が定期的に集まり、40〜50種の酒の香りを確かめる官能試験を実施。酒づくりに直接携わる社員以外も、すべての社員が酒の香りを感覚的に理解できるよう意見が交換されます。

データを積み重ねる現代的な酒づくりに挑もうとも、最後に飲むのは人、目指すのは人が酒を楽しむ豊かな時間。その心、感性の部分を決して忘れてはいないのです。それはアルファードの根底に貫かれる“おもてなしの心”のように、すべてのものづくりに最も大切なものかもしれません。

このように醸造家が働く環境を整えることが現在の山本氏の仕事ですが、もうひとつ、山本氏には大切な役割があります。それは社の広告塔として表に立ち、日本酒を広く伝えること。小さな鞄ひとつで国内はもとより海外各地を飛び回り日本酒のPRをするのも、旅先でもジョギングを欠かさず自らの身体を引き締めるのも、茶道を学び日本文化への理解を深めるのも、すべてはブランドを伝え、守るため。

伝統への思い、先人への敬意を強く持ちながら、ただそれを守るのではなく、現代に合わせた姿に進化させ、未来へと繋げる。夢は日本酒文化全体の価値向上、目指す先は世界。その山本氏の在り方が、“世界一の酒”という栄冠へと繋がったのでしょう。

製品のPRのため、業界全体の振興のため、日々各地を飛び回る山本氏。「ひと月の3分の2は外に出ている」という生活の中、移動先ではこれまでもアルファードに乗ることが多かったといいます。

「移動中は大切な仕事の時間。アルファードのゆったりとした座席と集中できる車内環境にはいつも助けられています」

そんな山本氏が、初めて見る4代目アルファードの後部座席に乗り込みました。シートに体を預け、興味深そうに車内を見回す山本氏。

「重厚感と高級感。芯の通った“アルファードらしさ”が受け継がれていることは、はっきりと感じます」

そんな第一印象の後、こう付け加えました。

「一方で、これまで以上のおもてなしの心を強く感じます。たとえばこのシートはレザーの上質さがありながら長時間座っても蒸れないようベンチレーションがありますね。手すりや操作パネルの位置も見事なほどちょうど良い。本当に使う側のことを考え抜いて作られた印象があります」

それはきっと、同じものづくりに携わる山本氏ならでは視点なのでしょう。あるいは同じ4代目である自身の姿を、この車に重ねたのかもしれません。伝統、未来、挑戦、さまざまな思いはあれど、その行先はいつも「お客様のため」。そんな初心を噛みしめるように、山本氏は静かにシートに座り、物思いにふけっていました。

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    ※1. 2023年6月現在。
    ※写真はExecutive Lounge