風光明媚な伊勢志摩をドライブ
今
回の目的地は、三重県のほぼ中心にある多気町の「VISON」。伊勢本街道、和歌山別街道、熊野街道が交差する、交通の要衝として発展した場所だ。
伊勢神宮も近く、伊勢志摩エリアと合わせて訪れる人も多いという。
豊かな自然と歴史文化を味わえるドライブコースとしても人気の伊勢志摩エリア。伊勢方面からVISONへ向かう前に、まずは絶景スポットへとプリウスを走らせる。
伊勢と鳥羽を結ぶ全長16.3kmの「伊勢志摩スカイライン」は、天空のドライブウェイと呼ばれ、車好きたちがぜひ訪れたい場所としてよく知られている。
朝熊山頂展望台からは、伊勢湾に浮かぶ島々や対岸の渥美半島、天気が良い日は富士山まで望めるのだという。
車のパフォーマンスを最大限に感じられる山道も新鮮で良い。ドライブをしながら新たなプリウスの魅力を体感することができるだろう。
山を抜けて海岸線に出ると、待っているのは「麻生の浦大橋」だ。鳥羽と志摩をつなぐ「パールロード」の入り口で、牡蠣筏(いかだ)が並ぶ景観を眺めることができる。美しい海の色彩と緑豊かな山々。ただ美しいだけでなく、魚介などの生命が芽吹く、豊かな海だ。車窓からの景色に、心が解きほぐされていくのがわかる。
三重県・多気町の人気スポット「VISON」
伊 勢志摩方面から多気町に向かうと見えてくるのは、「多気ヴィソンスマートインターチェンジ」。全国で初認可の民間施設直結スマートインターチェンジとして開通した。伊勢自動車道上り線(名古屋方面)出口からは、直接VISON施設内にアクセスすることができる。
ダイレクトに足を踏み入れたからか、大々的な看板がなかったからなのか、なぜか「施設内に入った」という感覚がない。VISONという名の村に入っていたという自然な流れで辿り着く。山なりに続く道を進むと、そこに広がっていたのはまさに「美しい村(VISON)」だった。
その美しい村にはなんと東京ドーム24個分にも及ぶ広い敷地が広がっている。
ホテル、農園、マルシェ、アトリエなど9つのエリアがあり、個性あふれた約70店舗の店を楽しむことができる。
コンセプトは「すべては、いのちを喜ばせるために」。
衣・食・住のさまざまな体験を通して五感を刺激する場所でありながら、常に自然の中にあることを感じさせてくれる唯一無二の存在として、訪れる人々を魅了している。
自然と共存する「美しい村」
広 い空の下で山々を背景に屋根が連なり、道路は曲線を描くように延び、心地よい風が吹き抜ける。マルシェや商店には人々が集まり、レストランの裏には太陽の光が降り注ぐ農園が広がっている。自然との境界線がなく、調和し共存することも、ここのコンセプトの一つだと出迎えてくれた立花さんは語る。
立花 地域に馴染むような、自然と共存して100年続くサステナブルな施設を目指しました。山の斜面をそのまま活かしたり、オープンエアの建物にしたり、元々山にあった自然の素材も使う。外壁には開発の際に切った木と地の木をふんだんに使って、ペンキや防腐剤もできるだけ使っていません。その方が素敵だし気持ちがいいでしょう。
これまでにも同じ三重県内で年間100万人超を集める人気複合リゾート施設「アクアイグニス」を手がけてきた立花さん。2013年から地元自治体などと産学官連携の地方創生プロジェクトとして事業計画をスタートさせ、2021年日本最大級の商業リゾート施設VISONが誕生した。
VISONが大切にしている「地域と共に」は施設内のそこかしこに反映されている。
立花 VISONには、ここにしかないものばかりです。自然はもちろん、地元の野菜、地元の魚屋さん。今ある地域の魅力的なものをきちんと使う。旅して、美味しくて、健康って最高じゃないですか。遠方から来る人にも、地元の人にも、それを感じて楽しんでほしいです。都市部で流行っているものをここにつくる、のではそれは叶わないんですよね。
「地域と共に」を掲げることで、地域や近隣住民でも利用しやすくして愛されるようになる。地域企業や自治体とも歩みをともにできる。VISONを長く続けていくためには、地域との関係が不可欠なのだ。
立花さんの言葉通り、VISONを巡ると「自然と共存したここにしかない魅力」が見えてくる。
シンプルで洗練された「HOTEL VISON(ホテルヴィソン)」や日本を代表するクリエイターが4棟それぞれのインテリアをスタイリングした「旅籠ヴィソン」。客室から堪能できる山々の景色や満天の星、澄んだ空気を感じられるアプローチ。高いデザイン性のなかに、ホテルに滞在しながらも多気町の美しい自然に触れられる工夫が詰まっている。
旅の疲れを癒してくれる温浴施設「本草湯」も、ここならではだ。
VISONがある多気町は薬草の町としての歴史をもつ。施設内にある本草研究所が作るオリジナルレシピをもとに調合された薬草湯は、体がぽかぽか温まると評判だ。
夜は外湯から星空が眺められるが、条件が揃えば雲海が見えることもあるそうなので、時間帯を問わずその自然の風景を楽しめる。
“ここにしかない”を集めた「食」の魅力
多種多様なコンテンツが楽しめるVISONだが、その中心となるのが「食」だ。
マルシェや飲食店だけでなく、和食の味を支える醤油や出汁、みりんなどの専門店が軒を連ね、製造の様子を見学できたり、イベントが開催されたりと日本の食文化を学ぶことができる。
立花 美味しくても体に悪いものが少なくない世の中で、ここにはできるだけ日本に古くから伝わる、だし文化や発酵文化を取り入れています。何か一つの調味料に特化したミュージアムは他にもありますが、これだけ全ての発酵食品が集まった所はここしかない。地域の食文化を伝えて残す、食文化の拠点にしていきたいですね。
「VISONの食」は「おいしいものを食べる」だけにはとどまらない。
「マルシェ ヴィソン」にはいきいきとした野菜や果物に、水揚げされたばかりのまぐろ、上質な松阪牛など、三重県周辺の海の幸、山の幸の販売店や飲食スペースが集まっている。
新鮮な食材をその場で堪能したり、買って帰ったりできる、誰もが喜ぶ人気のエリアだ。
18人の有名シェフの料理を「作品」とする、食の美術館「AT CHEF MUSEUM」も面白い。三重県産の食材をふんだんに使用し、それぞれのシェフがひとり1品渾身の逸品を提供しているのだ。
フードコートのようなつくりの店内で、ミシュラン星付きシェフらの料理を気軽に味わえると人気を集めている。
マルシェから有名シェフの料理まで、「おいしい」の振り幅は大きい。VISONではさらに、その「おいしい」の過程を間近に見ることもできる。
ショップが賑わうメインエリアから車で10分ほど移動し、少し山を登ると農園が広がっている。
美しい景色を背景に、野菜がたくましく育っているのを見ると心が癒される。隣接するレストランで採れたて野菜を使った料理が楽しめ、自然の循環を大切にしている取り組みを間近に見る。食を通した体験によって、SDGsを自分ごととして考えるきっかけを与えてくれるのだ。
また、アートを通して食を学ぶ、という体験が用意されているのもVISONならではといえるだろう。国内最大級の土壁で作られた建物の中に、世界各国の調理道具を展示した博物館「KATACHI MUSEUM」がある。
アートのようにたたずむアンティークの道具の姿に、おのずと用途や背景を想像し、食文化への深い理解へとつながっていくだろう。
ゆっくりとした時間と自然の中で、地域の魅力を五感いっぱいに体感することができるVISON。ここに来る道中、プリウスで駆け抜けてきた車窓の記憶が蘇り、美しい海と山を思い返す。改めて、「おいしい」の源にあるのは、伊勢志摩エリアの豊かな自然なのだと気付かされた。
心も体も喜ぶ旅は、訪れる人だけでなく、地域にとってもプラスとなり美しい循環になっている。地方創生の拠点としての役割も担っているVISONの未来について、後半では立花さんの思いをお届けしよう。