100年続く「美しい村」へ。VISONに懸ける想いとは?
V ISONの概要を前編にて紹介してきたが、思いのほか広い敷地と、その美しい風景に思わず感嘆する。この「美しい村」は一体どのようにできたのだろうか。代表の立花さんに詳しく話を聞いた。
立花 VISONと同じ三重県内で「アクアイグニス」という複合リゾート施設を10年以上運営しています。特に有名シェフたちと一緒に取り組んだ「地元食材を活かした食」が人気となり、たくさんの人が来てくれるようになりました。各地の行政からお声かけをいただく中、最初に訪ねてきてくれたのが多気町長だったんです。
三重県出身の立花さん。地元に貢献したいという思いから、日本一の地方創生モデルを創り上げようと、産学官連携プロジェクトの挑戦が始まった。
立花 世の中の商業施設は、土地を借りて数十年経てば建物を壊して返すという「終わることを前提」にしたものばかりですが、VISONは100年、200年と続く「未来に残る商業リゾート施設」にしようというのが根本にあります。我々は土地を買って、その土地の木で新しい社殿を建てる伊勢神宮の式年遷宮のように、20年ごとに木を張り替えながら成長していく。地元の林業も継続できるし、大工さんたちも雇用が継続される。ここで地域と一緒に成長し続けたい、というのがコンセプトで、そういう地方創生のモデルをつくりたかったんです。
VISONにはコンビニエンスストアも自動販売機も、いわゆるナショナルチェーンが1軒もない。あるのは、地元の漬物屋さんや、魚屋さん。地域の魅力を活かした「ここにしかないもの」しか存在しないのだ。その理由は2つあるという。一つは、商売として成り立たせるため。もう一つは、古き良きものを未来へ残すため。そう話す立花さんには使命感さえ感じる。
立花 遠方から来てもらうためには、この場所にしかないテナントに出店してもらうことが必要でした。今の時代、どこの町に行っても同じようなチェーン店があるだけ。それってつまらないじゃないですか。世の中の流れに逆らって、古くからあるいいものだとか、地方のいいものをもう一度大事にしないといけないなと強く思っています。それは、地域の食文化を守ることにつながりますよね。一方で、残すためにすごく不便で大変な思いばかりするのも違う。都会だけが便利になるんじゃなくて、やっぱり地域も、ある程度デジタルを使って便利にすることで成立させる。それが良いなと思います。
100年200年続く、ということは単なる流行り物をつくることではない、と語る立花さん。
地元の企業を多く集めることで自治体の支持を得やすくなるというメリットもあるのだとか。地域の経済や雇用を循環させることが、残すべき“いいもの”を長く残していく重要なファクターなのだ。
とにかく人を集め、都会や海外で流行っているものを取り入れるだけでないサービスづくりが、新しい時代のスタンダードになっていくのだろう。
地域の可能性を広げる最新モビリティ
人
口減少や、地域医療の減少、公共交通廃線など、多気町が抱える課題は日本の他地方と同様。様々な地域課題に対して、VISONは周辺5町と連携し、デジタル技術の活用による街づくりの中心となっている。
「HOTEL VISON」にはオンライン診療が受けられるクリニックがあるほか、デジタル地域通貨を採用するといった最先端のサービスを導入している。
さらに、モビリティ分野においては、地域の「移動」を支えるサービスに取り組んでいる。
立花 VISONの構想の段階から、自動運転のためのモビリティ専用道路は必要だと感じていました。デジタル技術は地域を残していくための大切な手段の一つ。観光だけじゃなくて、観光で成り立つモビリティに地域の方々も乗り合わせていく。そんな持続可能な移動手段として実現していきたいですね。
周辺観光地からも近く、三重県の交通のハブとしても知られるVISONは、訪れる人の9割が車利用だという。そのため国内最大級の車中泊エリアや、車好きも注目するバギーパークがあるなどドライブアクティビティも充実している。
立花 公共交通廃線などが今、地方の課題としていわれていますが、将来、技術が進化することでもっと車が便利になっていって解消されると思うんです。自動運転が実用化されれば、電車がなくなっても大丈夫。よりエコ化が進めば、電車より車の方が環境に良いということになっていきます。そういった「車社会」になった時に、VISONは立地的にも交通の要衝。いわば“クルマの駅”のようにターミナルのような存在になればいいと思っています。
“古き良き”の伝統のものやおいしいものが人気を博す一方で、課題となる不便さは解消しなければいけないという確固たる意思を反映させたサービスが、VISONには見られる。
滞在中に接する細かなサービスにデジタルが積極的に導入されており、「実証実験中」というものも多く見かける。挑戦をし続けていく姿勢が、立花さんのお話を聞くとともにVISONに滞在することで体感できるのは観光を超える体験だ。
挑戦を続ける プリウスの インプレッション
未来を見据えた革新的な挑戦を続ける立花さんに、プリウスに試乗していただき、そのインプレッションを伺った。
「初期の頃から比べると、デザインが随分と変わりましたね。こんなに格好良くなったんだと驚きました。室内も細かいところまで高級感があっていいですね。
VISONの施設内は元々の山の傾斜を活かした坂道が多いですが、上り坂も加速がスムーズでした。初めて乗ったと思えないほど、運転のしやすさと乗り心地の良さを感じましたね。
」
環境への配慮を怠らない立花さんは、ソーラー充電システムなど、プリウスのエコカーな部分も気に入ったようだ。
「太陽光があれば走行可能なシステムは良いですね。日常生活においてはほとんどEVモードで走れるというところも魅力的。今乗っている車は少し燃費が悪いので、買い換えの候補になりました(笑)。」
美しい循環が生み出す「心地良さ」
立花 VISONは自然との共生を大切にしているので、「暑い、寒い、暗い、歩きにくい」という声をいただくことがあります。けどそれこそが、素敵なことだと思うんです。世の中が便利になりすぎて、自然を感じるという大切なことが失われている。そう感じている人は、実は多いと思うんです。
夜は暗いもの。暗いからこそ満天の星が見えるんですよね。そこにさりげなく、不便を解消するためのデジタルがある。そういう心地良い魅力をVISONに来て感じてほしいなと思います。
自然や地域の豊かさを守りながら、新しい技術を積極的に取り入れることで地域の未来を担う、新時代の商業リゾート施設として挑戦するVISON。
それは、未来を見据えたモデルチェンジをしていくプリウスの挑戦とも通じるものがある。
VISONとプリウス、どちらも、五感を刺激する体験を提供してくれるだけでなく、その体験がサステナブルな美しい循環につながっていく。そして、それはとても心地良い。そんなことをVISONの旅が教えてくれた。