2020.01.10
STORY 01
コンパクトカーの新基準への挑戦
コンパクトに凝縮されたパッケージ、今にも走り出しそうな躍動感のあるデザイン——。次の時代に求められるコンパクトカーの新たな価値を追求した新型車ヤリスは、どのようにして生まれたのでしょうか。開発ストーリーとともに紐解いていきます。
削るのではなく凝縮する
コンセプトは“Ready to Go!”。目指したのは、ドライバーの行動を後押しし、本当の自分らしさに出会えるクルマだ。その想いを実現するために、トヨタのクルマづくりを変革させてきたプラットフォーム「TNGA*1」の取り組みは必要不可欠だった。

プラットフォームとは、クルマの土台であり骨格、つまりは根幹を指す。クルマを根幹から刷新する「TNGA」の取り組みは、「Confident & Natural」をコンセプトに、これまでも多くの車種に安心で上質な走りをもたらしてきた。YARISは、さまざまな車種の開発で蓄積してきた技術や実績をもとに、コンパクトカー向けの新たなプラットフォームを生み出す挑戦から始まった。

*1 TNGA=Toyota New Global Architecture(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)
コンパクトカーの最大の魅力は、フットワークよく駆け抜ける走りの楽しさである。より走りの楽しさを増幅させるためには、優れた小回りとステアリングを操る快適な操作性が必要だ。先進の安全装置も、トップレベル*2の燃費性能も、室内空間の広さも欠かせない。

ボディの設計には、ミニマルな発想が求められた。開発チームは、小さくてもエネルギーに満ち溢れ、ふくよかで深いツヤがあり、ひと粒ひと粒に魅力が詰まった「黒豆」をYARISのイメージに重ねた。 また、ボディが小さくなれば比例して室内空問が狭くなる。しかし、開発チームにはその常識を覆す確信があった。室内空間もミニマルな視点から無駄をなくすことで、必ず広さを確保できると。削るのではなく、凝縮する。開発チームの合言葉は、Less Is more──“必要以上のものはいらない”。その信念の先に、今までにないコンパクトカーの価値が生まれた。

*2 2019年12月現在。ガソリン乗用車コンパクトクラス。トヨタ自動車(株)調べ。
1,000枚を超えるデザイン画
YARISのフォルムに投影されているのは、アスリートのように均整のとれたボディラインだ。短距離ランナーのようなしなやかな躍動感。スピードスケート選手のような低重心の安定感。あるいは、クラウチングスタートを彷彿させる前傾姿勢のフォルム。

新しい価値を体現する理想のフォルムに至るまでに、デザイン画を描いては議論を重ね、描き直す毎日が繰り返された。スポーティーなイメージの中にどう愛着を表現するか? 男性的なイメージに寄りすぎていないか? 1本の線の太さ、ミリ単位のズレに対するこだわり。細かなチューニングにより、いつしか1,000枚を超えるデザイン画が広大なスタジオを埋め尽くした。

全体のふくよかさを引き締めるシャープな顔つき。疾走するエネルギーを秘めたサイドの流線。いまにも全速カで走り出しそうな軽快さとカ強さ。まさしく、“Ready to Go!”を体現するデザインにたどり着いた。
ディテールがお客様の心を動かす
フロントグリルやインパネトレイの表面には、細かな模様が刻まれている。凹凸やシワによって傷をつきにくくする、シボという特殊加工による幾何学模様だ。シボの溝は、模様を転写した金型を何度も溶かすことで生まれる。紙の厚さにも満たないミクロン単位の溝の深さを見極める、職人の技と経験に裏打ちされた高度な加工だ。

しかし、量産によって金型に傷がつき、その模様にノイズが入る恐れがある。開発チームはためらう職人のもとを何度も訪れ、繰り返し想いを伝えた。幾何学シボは、目を凝らさなければ気づかないディテールかもしれない。けれど、開発チームはこだわらずにはいられなかった。シボが持つクラフトの温もり、幾何学模様に頭文宇の「Y」をあしらった遊び心は、YARISに豊かな表情をもたらし、指先に痕跡を残す独特の触感は愛着につながる。何より開発チームは、ディテールへの小さなこだわりの蓄積がお客様の心を動かすと信じていた。

職人は、その想いに共鳴した。前例のない量産体制を構築し、高品質の幾何学シボを開発チームと共に作り上げた。そして、YARISに“ジャパニーズクラフトの結晶”が刻まれた。