RAV4 -time slip Story- 1998→2020 モータージャーナリスト・木下隆之のオレの一族が愛したクルマ

STORY 5

20年以上の道のり、走っても、走っても、
変わらないタフ&ラフのDNA。

 「我が家のしきたりのようになっちゃったね」
姉の次男が就職し、実家を離れることになった。ついに母を長野の山小屋に送り届ける”係”がついえたと思ったその役を、末の長女が受け継ぐことになったのである。
 僕が母にブレゼントしたRAV4は、姉の長男にとっての初めてのマイカーとなり、次男に引き継がれ、そして思いがけないことに、長女に継承されていった。
「まるで家訓みたい…」
 そう言って彼女は笑った。RAV4の距離計はもう10万kmを大きく超えていた。それでもトラブルを起こすことなく元気に走り続けてきた。
「せっかくだから新車が欲しいと思ったけどね。でもね、もうこれは伝承というんだろうね。おばあちゃんの元にやってきたRAV4は、鉄の塊のクルマなのに”宇宙船”だなんて滑稽なあだ名がつけられちゃって、もうこれは家族と一緒だから。それを受け継ぐのが、我が家の決まりごとっていうことで…」
 兄たちの青春を彩ったRAV4を受け継ぐことに、彼女も満更でないようだった。

一族の思い出づくりに、
どこまでも寄り添い続けた一台。

 それから数年が経ち、RAV4は姪が付き合い始めた彼氏とのデートに駆り出されることになった。気候のいい休日には母を送迎したり、山小屋に送り届けたりしながら、若いふたりのデートカーになったというのだからRAV4も健気である。
「私とRAV4とどっちが好きなのかしらね」
 彼氏とのドライブを笑顔で報告する。隠しごとのない家族なのだ。
「自分のクルマを持とうとしないんだよ。でもね、RAV4があるからいいんだって、あてにしているのよ」
 彼氏を助手席に乗せてゼミの合宿やスキーに行くというのだから、母と同じく孫の長女も行動的である。
 そんな彼女も社会人となり、その彼氏と籍を入れることになった。そして旦那の勤務先に引っ越すことに。母から受け継がれたRAV4は、三人の孫たちの人生にも寄り添い続けたのである。
「宇宙船、ご苦労様でした」
 そう言いながら彼女はかしこまってこう続けた。
「実は二つ報告があります」
 十数年前、RAV4が母から姉の長男に受け継がれた時の儀式のような家族会議だった。
「報告のひとつは?」
「お腹に子供がいます」
 祝福の言葉が投げかけられた。
「そしてもうひとつは?」
「新車のRAV4を買おうと思うの」 
「キャッ」
 母がはしゃいだ声を上げ、
「それって宇宙船号のRAV4がうちにやってきた時と同じじゃない」
 そう言って笑うと、家族のみんなもつられて笑った。十数年前にRAV4が母の元にやってきて、その個性的なスタイルを見るなり母が”宇宙船”と言い、あだ名をつけた時の団欒が鮮明に蘇ってきた。

RAV4があれば、いつだって楽しい。
時代も世代も超えて愛されるSUV。

 母もずいぶん歳を取ったけれど、まだ少女のような好奇心を秘めていた。皺は増えたし、運転はしなくなったけれど、まだRAV4と山小屋に通っているほどだ。
「もううちの家系は、RAV4でなくちゃダメみたいね」
「どんな期待にも応えてくれるのって、RAV4の他にある?」
「だとすると、今度の二代目”宇宙船”は、新しい子供に受け継がれるのかしら…」
 母はそう口にするとまた、あの日と同じように少女のような声をあげて笑った。

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    20年以上の道のり、
    走っても、走っても、
    変わらない
    タフ&ラフのDNA。

     「我が家のしきたりのようになっちゃったね」姉の次男が就職し、実家を離れることになった。ついに母を長野の山小屋に送り届ける”係”が....