WHAT WOWS YOU.

WOW ACTION CLIP
「つくる現場をつくろう」篇

トヨタ
新工場では
”魚”を?

東日本大震災から6年の月日が流れ、
東北の各地では傷跡を残しながらも、復興の兆しが芽吹き始めています。
トヨタ東日本が東北の地元企業と一緒になり、復興の一端を担えればという想いから取り組んでいる相互研鑽活動。農業、水産加工業など業種の枠を越えて様々な異業種共に、お互いの良いところを学びあう活動です。
WOW ACTION CLIPで、2回にわたって紹介してきた相互研鑽活動ですが、今回は、水産加工業、それも新工場の立ち上げから携わる中で見つけたWOWをお届けします。

魚は、
陸で旨くなる。

床も、壁も、全長10メートルはある巨大グリルも、どれもがまだ新しいことが一目でわかる工場の中。
パチッ、パチッと、西京焼きの味噌だれが焼けて、芳ばしい香りが漂っていました。
株式会社モリヤは、トヨタ東日本が相互研鑽活動として、新工場の立ち上げをお手伝いした企業。
気仙沼で水揚げされる魚を中心に、煮魚や焼き魚などを製造しています。

「震災を機に、これからは付加価値の高い加工商品を作らなくてはいけないと思ったんです」と語る守屋社長は、食べた人においしいと言ってもらえる商品にこだわり、魚の骨を脆弱化ぜいじゃくかする技術(=柔らかくする技術)を開発。
今では全国の問屋さんから多くの引き合いを受けています。守屋社長は今だからこそ
「失敗の連続でした」と朗らかに笑いますが、新技術を開発し、新工場を立ち上げるまでには相当な苦労があったと言います。

「震災時は出張で東京にいました」。 守屋社長は、ホテルの部屋で気仙沼の燃える風景を見ながら、会社に電話をかけ続けたそうです。
23時にやっと繋がり、安否の分からない人が数名いるという話を聞き、すぐに帰ることを決断。
車を乗り継ぎながら気仙沼へと急ぎましたが、到着したのは13日の朝。20年かけて築き上げてきた工場が荒地となった光景を見た時は
「頭が真っ白になった」と語る守屋社長。その後、会社を畳む手続きに奔走することになりましたが、すぐに気を取り直し、
「僕が30歳で起業した時も、何もないところからスタートしたわけで。また元に戻ったんだ」と、自分の中で第二の創業と位置付け、守屋社長は煮魚を製造する機械を自腹で購入します。
そして、その煮魚を使った『メカトロのおにぎり』がコンビニエンスストアで200万食の大ヒット。
弾みをつけた守屋社長は、ついに、長年温めてきた“骨の脆弱化の技術開発”に取り組み始めたのです。

間違いが生んだ、
おいしい骨。

「若い頃に海外で魚の骨取りの切り身を作る工場を指導していたのですが、その時の製造工程に大変不満を持っていました。
要するに魚を骨だけでなく身の部分まで溶かしてしまったものなんですね。
自分で作っていながら、旨みが損なわれた魚を提供していいんだろうかと悶々としてまして。私の構想としては、何とかその骨を脆弱化すればいいんだなと考えていたんです」。

成功の基準は、そのまま食べられる骨の柔らかさであり、かつ旨みを損なわずに仕上がること。
骨の脆弱化の研究を行なっている大学教授がいると聞けば足を運び、試行錯誤を続け、実に400回もの実験を繰り返したと言います。
ブレイクスルーはある日突然訪れました。
なんと、偶然に間違って入力した数値で、理想とする切り身が出来上がってしまったのです。

そこから一念奮起。仮設だった工場を一新することを決め、
2016年10月、今までの9倍の広さを持つ工場が完成します。
「この規模の工場は、私にとっても初めてでした。そこで、一番に大切にしたのは、従業員の安全を守ること。工場が大きくなり、様々な機械の管理をしなくてはいけませんから、不測の事態など、心配は尽きませんでした」。
行政から、相互研鑽活動の話が飛び込んできたのは、守屋社長がちょうどこのような悩みを抱えている時期のことです。

おいしさのヒミツ(骨の脆弱技術)

現在、魚の骨を脆弱化する技術は様々あります。しかし、骨を柔らかくすると同時に筋肉組織が変化してしまい、肉と骨との差が不明瞭になり、おいしくなくなってしまうことが、実用化されることが少ない理由でした。ですから、魚の旨みを感じられる、しかも、高い栄養価を保ったまま骨の脆弱化ができる技術の開発は、大変、画期的なことだと言えます。

カイゼンは、
鍋に隠れていた。

様々な異業種と研鑚活動に取り組んできたトヨタ東日本にとっても、
新工場の立ち上げから関わったのは初めての取り組みでした。
担当者である戸塚さんは
「私たちが最初に来た時は、商品の製造は始まっていませんでした。本当に、ビフォーがないゼロからのスタートだったんです」。
と当時を振り返ります。
「守屋社長から、まずは社員が安心して作業できる環境を整えたいというお話を伺いました。正直、何から始めれば良いかと悩みまして…。でも、カイゼンの主役は工場のことをよく知る『現場の人』。そう思い当たった時、行動するべきことはひとつでした」。
戸塚さんは早速、現場に向かい、従業員の方に困っていることを1つ1つ聞いて回ったそうです。作業工程での悩み、やりにくいと感じるところを挙げてもらい、約70もの困り事が出てきました。
「トヨタでは、ムダという言葉をよく使うんですが。こちらに来て『ムダですね』と言うと、怪訝な顔をされてしまって。なので、つい言ってしまいそうな時はハッと思い返し、『もったいないですよね』と言い変えるようにしてました」と苦笑いをする戸塚さん。

社内で通用したことが全く通じない。だから、言葉を吟味して相手に伝わる言葉を選ぶ。
互いに心を寄せ合い現場の人たちと1つになることが、カイゼンの第一歩だったのです。
「例えば、タレを混ぜ合わせる寸胴型の鍋。元々は高さが胸元くらいまであり、作業も困難で掃除も大変でした。そこで実際にこの大きさが必要なのかを確認し、必要ない部分をカット。作業の手順を明確にすることでやりやすくなり、結果として、50分かかっていた清掃作業も35分になりました」。
その他にも、天井から垂れさがっているホースが床にそのままになっているのは危ないといった声から取り組んだカイゼンもあります。

また、工場内の整理整頓等は安全にもつながることを現場の人たちと再認識し、実際に作業しているところをビデオで撮影し、会議を開いて動画を見ながら標準書の作成にも取り組みました。
社員が安全に作業できる環境を整えたいという守屋社長の想いを実現するために、現場のひとり一人が考え、自分の持ち場に即したカイゼンを行っていったのです。
課題を共有し解決に取り組む姿には、もはや、業種の垣根や立場の違いなどはありません。

危険は、
風景になってしまう。

「我々にとっては風景になってしまうんですよ。毎日、いるものですから。そこに『これ危ないですよ』と指摘してくれてね」。
工場長の熊谷さんは戸塚さんとのエピソードを、当時感じた驚きを再現するかのように話してくれました。
「最初はね、やっぱり抵抗もありました。私たちが正しいと信じてやっていることに対して色々言うわけですから。でも、結果が出ると嬉しくなっちゃって」。

議論をして、現場に合った標準書に沿って作業することで、動きやすく、安全性も高まり、工場内が見た目にもとても綺麗になったと喜ぶ熊谷さん。また品質保証部部長の小林さんは、
「今回の活動を通して、安全と品質に関するベースとなる標準書を作れたのが大きいです」と語ります。
今後は生産においても活かしていきたいと語るその顔は明るく、意欲に溢れていました。

震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市。
元々あった建物が津波によって流されて荒れ地となり、不自然な空き地が今なお点在しています。
そんな街に、日本の食卓においしい魚を届けたいという守屋社長の想いに突き動かされ、また、その工場で働く従業員の安全を守るために立ち上がった人がいました。
現在、戸塚さんが工場内を歩くと、社員の方やパートの方が次々に微笑みながら話しかけてきます。
そんな、本当の信頼関係がなければ生まれない素敵な笑顔こそ、WOWだと感じた工場でした。

ちょっと変えると、変わる!

カイゼン解説コーナー

◎危険は、天井からもやってくる。

以前は、天井から垂れ下がっていた床清掃用のホースは、使用しない時もそのままだった。
そこで、使用しない時には、水滴が落ちないようカバーを装着し、ホースをまとめて天井に設置しておけるようマグネットを装着。
安全に作業できるだけでなく、動きやすくなる効果もある。

◎みんなのものを、アイツのものに。

工場内のフロアー毎に清掃用具を色分けし、それぞれに番号をふり、担当者を決める。こうすることで、
フロアー間で道具が行ったり来たりすることがなくなった。担当者を決めることで、
しっかりと管理することができるようにも。

◎立たせるな、寝かせておけ。

立てかけていた1.5メートル近くある台は、転倒を防ぐため床に寝かせるように変更。
利便性より、従業員の安全を最優先する。

◎蛇口まで歩くなら、蛇口を寄せてみる。

床を掃除するためのホースの先端にノズルを装着。それまで蛇口まで移動しなければ
水を止められなかったが、ノズルを装着することで、その場で水が止められるように。

東北WOW後記

TOHOKU WOW EDITOR'S NOTE

魚の骨を、旨みを損なわずに脆弱化させるという、誰も成し得なかった技術にまずWOWです!
そして従業員の方々と共に、安全という観点から実行していったカイゼン箇所も、
膝をポンと叩きたくなるWOWに溢れています。
街を見渡せば、まだ震災の傷跡が目立つ気仙沼にある1つの企業。
その工場は、より良い環境をつくり、さらに品質の高い商品を送り出そうとする気概に満ちていました。

HOW WOW YOU

みんなに質問!あの時、どんなWOWがあった?

  • 名前
    守屋守昭さん
    職業
    (株)モリヤ 代表取締役社長
    好きな魚は?
    サンマ
    商品を使ったオススメ料理は?
    サケの塩焼き。ほんっとに旨いですよ。
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    戸塚さんの明るさとまっすぐな人間性に驚きました。

    (株)モリヤ 代表取締役社長

    守屋守昭さん

  • 名前
    小林太一さん / 熊谷渉さん
    職業
    (株)モリヤ 品質保証部 / (株)モリヤ 工場長
    好きな魚は?
    いくら、サケ / サンマ
    商品を使ったオススメ料理は?
    サケの塩焼き、白いご飯に合うもの。 / サバの味噌煮(お酒のおつまみ、ご飯にも合う)
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    戸塚さんが「困っていることはないですか?」と一人ひとりに聞いて回るのを見た時。 / 当たり前のことを細かく追及していく姿勢。
    変わったことをやるのではなく、今やっていることを追求すること。

    (株)モリヤ 品質保証部
    (株)モリヤ 工場長

    小林太一さん
    熊谷渉さん

  • 名前
    戸塚優人さん
    職業
    トヨタ自動車東日本(株) ものづくり研鑽室
    好きな魚は?
    サバ
    商品を使ったオススメ料理は?
    (モリヤさんの)サバの味噌煮込み
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    社員の方々が元気良く挨拶をしてくれて、自主的にどんどん進めていっているところ。

    トヨタ自動車東日本(株)
    ものづくり研鑽室

    戸塚優人さん

  • 名前
    木村賢治さん
    職業
    (株)モリヤ 社員
    好きな魚は?
    ホッケ(居酒屋の)、サンマも好き。
    商品を使ったオススメ料理は?
    サバ味噌煮、めかぶと西京漬け
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    安心感を抱きました。

    (株)モリヤ 社員

    木村賢治さん

  • 名前
    梶原真由美さん
    職業
    (株)モリヤ 社員
    好きな魚は?
    メカジキ。
    商品を使ったオススメ料理は?
    つけ魚
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    大変だなと思う部分を当たり前のようにやっていた。
    困っていることを言ったら、対応してくれてとても楽になった。

    (株)モリヤ 社員

    梶原真由美さん

  • 名前
    三浦綾香さん
    職業
    (株)モリヤ 社員
    好きな魚は?
    グッピー
    商品を使ったオススメ料理は?
    サバ味噌煮
    研鑽活動の中でWOWだったことは?
    ちょっとしたことでも、ちゃんとやるところ。
    自分では考え付かなかったこともやっていた。

    (株)モリヤ 社員

    三浦綾香さん

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WOW ACTION CLIP
2017.03.22 IWATE

トヨタ東日本が東北の地元企業とともに復興の一端を担い、業種を越えて学びあう相互研鑽活動。震災を転機に、旨味を逃さず魚の骨を柔らかくする技術を開発した株式会社モリヤ。加工された魚は全国で大きな評判を呼びましたが、その裏側には並々ならぬ苦労があったそう。ここではどんな「WOW」が生まれたのでしょうか?