デザイン
外観
設えという言葉は、古来、饗宴や晴れの儀式の日に寝殿に調度類を整えることを意味しました。日本を代表するショーファーカー、センチュリーの設えは、日本独自の美意識を貫き、伝統的な文様を織り込みながら、造形と意匠を丁寧に磨き上げることで生まれました。後席にお乗りになる方のお人柄に相応しい品格と新たな時代の華やかさを備えた姿には、日本の美が息づいています。
美的均整と後席への敬意を表した造形。
日本の美意識に通底する水平と対称の均整を保ちながら、後席を上座とする独自の思想を造形に表しました。その象徴がサイドビュー。傾斜を立てた重厚なクォーターピラーは、ゆとりと安心に満ちた後席の存在を物語っています。
サイドボディを飾る精緻な「几帳面」。
几帳面とは、平安時代の屏障具(へいしょうぐ)の柱にあしらわれた面処理の技法。端正に並んで走る2本の線を角として研ぎ出し、そのごくわずかな隙に淀みなく通した面を1本の線として際立たせています。精緻を極めた独特の面形状は、サイドボディに高い格調を与えています。
伝統の吉祥柄、「七宝(しっぽう)文様」と「紗綾(さや)形崩し」の美。
七宝文様は、無限に繋がる輪によって円満や財産、子孫繁栄などを表す伝統文様。また紗綾形崩しは、卍(まんじ)を組み合わせた端正で品格ある柄が、皇族や武家に好まれてきました。この2つの吉祥柄を随所に施すことで、日本の美を表現しています。
リヤコンビネーションランプに灯る、華やかな「和の光」。
横長のシンプルな構成からなるリヤコンビネーションランプは、趣ある「和の光」をモチーフとしています。線状に発光する立体的なレンズが華やかさを表現。レンズの光をランプ内に効果的に映し込むことで、表情に奥行きを持たせています。
サイドボディのラインに格調を与える几帳面。
几帳面的な造形を施したアルミホイール。
霧などの悪天候時の視界確保をサポートします。
内装
後席折り上げ天井には紗綾形崩しの柄織物。
七宝文様は時計の文字盤にも。
匠の技
センチュリーが誇る比類なき高品質。それを具現化するのは、「匠」と呼ばれる熟練の専任作業者です。高度な技能を持つ彼らがこの車に携わる誇りを胸に、感覚を研ぎ澄ませた手作業によって、ボディ生産から塗装、組み立て、最終検査に至るまでを担っています。また工程ごとに厳格なチェックを行い、1台ずつ検査結果をヒストリーブックに記すことで、高品質を揺るぎないものにしています。
吸い込まれそうな深みと鏡のような光沢を湛(たた)えるエターナルブラック<神威(かむい)>は、塗装の匠が磨き上げたものです。漆黒感を高める黒染料入りのカラークリアなど7層もの塗装に研ぎと磨きを加えて究極の平滑と艶を得る手法は、日本の伝統工芸の漆塗りを参考にしています。流水の中、素手で仕上がりを確かめながら、微細な凹凸を修正する「水研ぎ」を3度実施。その後さらに「鏡面仕上げ」を行うことで、塗装面の平滑性と艶は比類のないレベルに達します。ぜひボディにご自身の姿を映して、漆黒の鏡面をお確かめください。
伝説上の瑞鳥(ずいちょう)(めでたいことが起こる前兆とされる鳥)である「鳳凰」をエンブレムに掲げるセンチュリー。1967年の誕生時に当時の工匠が腕を揮(ふる)ったその手彫りの金型を、新たに江戸彫金の流れをくむ現代の工匠が継承・進化させました。鏨(たがね)と槌(つち)に魂を込めて彫り上げた金型は、品格を守りながら、躍動する翼のうねりや繊細な羽毛の表情を鮮やかに描き出しています。最新鋭の工作機械にも真似のできない匠の技から生まれた鳳凰の姿を、この車の随所でご覧いただけます。
端正な柾目(まさめ)の本杢パネルは、タモ材の中心部でしか採れない貴重な木目を厳選して使用しています。センチュリーに相応しい高い精度と耐久性、そしてパーツごとに優美な形が与えられた本杢パネルの木目を一段と際立たせるために、熟練の匠が1枚ずつ刷毛で彩色。塗料を丁寧に染み込ませ、また拭い取りながら、趣ある木目の濃淡を引き出します。仕上げにピアノにも用いられるクリアコーティングを施し、そこからさらに研磨。美しい艶と輝きを宿した本杢パネルが、室内を華やかに彩ります。