凝縮して、
よりダイナミックで、
よりアクティブに
今回、日本専用仕様のカローラとカローラ ツーリングのエクステリアデザインを手掛ける際に、チーフエンジニアからまず伝えられたのは「車体の寸法がグローバル仕様よりも小さくなります」ということでした。
小さくした理由は、日本国内のお客様がカローラというクルマに抱いている印象の中には扱いやすさとクルマそのものに対するサイズ感というものが明確に存在し、それを無視することはできなかったということです。
とは言うものの、原型というべきグローバルモデルに対してわずかであっても小さくなる(※1)ということは、ともすればマイナス要素にもなりかねない。それを防ぐために、小さくしつつもその中にお客様にもわかりやすいプラスアルファの商品価値を盛り込んで欲しいというものでした。
※1 グローバルモデルと比べた縮小幅
全幅:カローラ-35mm、カローラ ツーリング-45mm
全長:カローラ-135mm、カローラ ツーリング-155mm
ここで私がやらなければいけないのはどういうことなのか?ということについては悩みました。サイズを縮小するといってもフロント周りの印象を大きく変えるわけではない。変える部分は全幅を構成するフェンダーフレア(ホイールアーチの周囲)の部分とそこから連続する部分、そしてBピラー(センターピラー)から後方の側面部分です。悩んだ結果、最終的には単に小さくするのではなく、ある意味「凝縮する」ことによってダイナミックかつアクティブなイメージを実現させるということでした。
具体的にどんな過程でデザインをまとめたのか、ということについてもお話しましょう。過去のカローラの場合、まずカローラをデザインし、そこからカローラ ツーリングなどのバリエーションモデルを作るというのがセオリーでした。しかし今回はカローラ ツーリングからデザイン作業を始めました。理由は先に完成していたグローバル仕様からの流用ボデーパネルが多かったことです。
セダンはセダンらしく、
ワゴンはワゴンらしく
カローラ ツーリングのバックドアはグローバル仕様のデザインがとても良かったこともあり、そのまま流用しています。そのうえで、バックドアから前の部分、カローラを含めたフェンダー&ドアからクォーターパネルのデザインを考えました。小さくなったからといってカローラ ツーリングはあくまでワゴンであり、ハッチバックには見えないようにワゴンらしい存在感のあるボデー形状にまとめる必要があったことは、難しいポイントでした。
カローラはカローラ ツーリングをベースにトランク周りを整え、こちらもしっかりとしたセダンらしいボデー形状を導き出しました。カローラはセダンであるため、トランクリッド上面の部分はリアウインドウから連続するラインに存在感をもたせているのが特徴です。この部分は油断するとハッチゲートを持つセダン、いわゆるリフトバックに見えてしまうため、そうならないようにデザインするのが難しい点でした。
環境は国によって違う、
日本にベストなカローラを
光が強い欧米では、その強さに負けないようなボリュームをつける必要がある一方で、日本ではボリューム感よりも陰影やデザインラインの強さのほうが重要になります。そのため、ドアやフレア周りにコントラストのある造形を施し、日本専用仕様であってもダイナミックなイメージを失わないように工夫したのです。
幅は縮小されているものの、ボデーのショルダーの部分、サイドウインドウの下の辺りをわずかに張り立たせた上で、全体的に垂直面を強調したラインとなっています。
これによってフェンダーフレアとボデー側面との間のプレスラインが強調され、フレアの存在に加えてその上部のボデーライン全体がむしろ強調されるようになりました。上からの光で映えるボデーシルエット、これもまた単に小さくしただけではない、まさに「凝縮」という言葉が意味する結果のひとつと言って良いかもしれません。
日本車離れした
スタイリッシュさ
今回の仕事で1番気に入っている箇所は、苦労したリアのフェンダーフレアです。カローラを例に説明すると、Cピラー(クォーターピラー)からフェンダーまで連続する縦のライン、原型であるグローバルボデーのイメージを継承しながらも、よりダイナミックなラインが完成したと思います。ここはお客様にぜひ確認していただきたい。カローラ ツーリングはバックドアからクォーターパネルにかけてのシルエットも日本車離れしたスタイリッシュさを実現できました。新型カローラ、とにかく格好良いです。これは自信を持っておすすめできる最大のメリットだと思っています。