12代目となる新型カローラを手掛けたチーフエンジニアにとって、歴代カローラの多くは、新規に購入を
考えている人にとって「ちょっといいなと思って貰える一台」、そしてオーナー経験者にとっては
「次々と楽しかった思い出が蘇ってくるような一台」というイメージだったという。
そんな歴史あるクルマは今回どう変わったのか?
そこに込めたエモーショナルな思いを語ってもらった。
- トヨタ自動車株式会社 MS製品企画ZEチーフエンジニア
- 上田 泰史
- 1991年トヨタ自動車入社。駆動関係の実験部署に配属され、その後、製品企画を担当を経て、2011年より欧州開発拠点TMEに赴任。2015年日本に帰任し、製品企画部署に戻り、カローラの開発を担当することとなった。
自由であり続ける。
楽しく乗ってもらうために。
新型カローラを開発するにあたってまず大切にしたことは、これまでのカローラと同様、お客様に安心して楽しく乗っていただけるクルマ、そして、お客様の期待を超えるクルマにするということでした。そのうえで最新モデルらしく直感的に格好が良いと思っていただけるダイナミックなスタイルと作り込まれたディテールを盛り込む。これらの方向性からは、自ずとクルマに対するエモーショナルな憧れや満足感が生まれます。こうしたことは新しいカローラというクルマをまとめるうえで、絶対にブレてはいけない中心となる柱でした。
過去、カローラは長い歴史の過程でさまざまなモデルがリリースされてきました。セダン、ハードトップ、クーペ、ハッチバック、ワゴン。いずれもその瞬間の時代の要請に応えてのことであり、時代時代のお客様のライフスタイルや自動車社会を取り巻く日本独自の環境なども踏まえたうえでラインアップが考えられてきたわけです。こうした事実は、見方を変えると別の価値が見えてきます。それは、「伝統あるモデルでありながら、その伝統に縛られることなく、自由に形を変えながらさまざまな楽しみを自由に提案できるクルマ」ということ。これは今も昔も変わらぬカローラならではの強みだと思っています。
三台の違い、
それは
ライフスタイルの違い。
こうした歩みを踏まえて、新型カローラそれぞれのイメージと込めた思いを説明させていただきます。まず先行で市場に投入されていたカローラ スポーツの場合は、純粋に操ることが楽しいクルマ、ステアリング、アクセル、ブレーキ、それらが一体となってドライバーの思い通りに動かせることにこそ価値がある一台です。ここではドライバーズカーであるカローラ スポーツの良さを体感できると思います。
ワゴンであるカローラ ツーリングは、カローラ スポーツから引き継いだ走りの良さはもちろんですが、さらにドライビングそのものだけではなく、行先で何をするのかという目的を持ったドライブが楽しめる一台です。「今日はちょっとアウトドアに遠出してみようか。ラゲッジルームに遊び道具もいろいろ積んで行けるし。」と、気軽にアクティブに活動するためのクルマというイメージですね。
セダンであるカローラの場合は、荷物はトランクルームに収めることで、キャビンはドライバーとパッセンジャーだけの空間にできるのが最大のメリットです。上質で居心地の良い部屋のような空間で楽しく会話するのも良し、自分1人で運転を楽しむのも良し。インテリアは、ちょうど良いサイズ感の部屋の気持ち良さを感じることができるように上質に仕立てました。
変えたかったのは、
カローラを手にした後の
暮らし。
クルマの使い方、楽しみ方は人それぞれだと思います。ただしそんなライフスタイルの中心となるのはやはりドライバーでありお客様であることは間違いありません。それを大前提に、カローラは普段使いにちょうど良い、日本の道路事情にマッチしたサイズであるとともに、何よりもドライバー自身が豊かな楽しみを感じられるクルマです。会社への通勤、週末の買い物、気晴らしのドライブ。あくまで主役はドライバーの自分である一方で、家族でも友人でも恋人でも、「誰かを誘って」「誰かと一緒に」と思い立った時にフットワーク軽くすっと出掛けることができるクルマ。カローラはそういった「自分+アルファ」の使い方が日々の生活の中でナチュラルに楽しめるクルマだと思います。
こうした自由で親しみやすいイメージを別の言葉で表すなら「余裕と遊び心が導き出した機能美」だと言えるかもしれません。ベーシックカーとして、機能性と合理性を追求しながらも、愛車としての所有する喜びをしっかり感じることができる一台。そうした「価値ある一台」の実現を目指して、格好の良さと走りの良さを両立するために努力を重ねました。さらに今回のカローラから先進のディスプレイオーディオと最新のデータ利用システムであるコネクティッド機能が全車標準装備となります。このこともカローラに新たな魅力を創造するうえで重要なことだと思います。
車名以外、
そのすべてが新しい。
新しいカローラは、過去のカローラに親しみを抱いて接していただいたお客様に加えて、「カローラ」という車名に対して伝統などの既成イメージを持っていない若いお客様にもぜひ乗っていただきたいと考えています。そしてステアリングを握って、たとえわずかの距離でも実際に運転していただきたい。意のままに扱うことができるハンドリングの良さ、ちょうど良いサイズがもたらす扱いやすさ、インテリアの上質さ、エコなだけではなく走りが楽しいハイブリッドの新しい価値感などを体感していただけるものと確信しております。