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走るほど空気をクリーンにするクラウン「FCEV」。開発責任者と環境活動家・深本南が語り合う、Z世代にとってサステナブルなクルマとは?
2024.04.23
水素で走る燃料電池車、クラウンFCEVは環境問題へのどのような答えになるのか。社会起業家で環境活動家の深本南が、クラウン開発責任者と語り合う。
幼少期から環境問題に関心を持ち、ファッション業界を経てエシカルな暮らしにまつわる情報を発信するウェブメディアを自ら立ち上げ、月に100万PVのサイトにまで成長させた社会起業家/環境活動家の深本南。現在はアクティビストとして生活者と森をつなぐ活動に注力しながら、サステナビリティサービスを提供する株式会社UPDATERのエグゼクティブ アドバイザーに就任し、オーストラリア発のエシカル評価機関「Good on You」の日本版「Shift C」をサポートするなど、複数のソーシャルビジネスを手掛けている。
そんな深本に、地球環境問題についての世界の共通課題である、CO2排出量削減のために生活者ができることはなにかと尋ねると、答えはCO2を吸収してくれる森の再生だという。
「行き過ぎた資本主義社会がたくさんの森林を破壊してしまいました。それを人間の手でもう一度再生していくことが私の活動の主眼です。ソーシャルビジネスを設計して、生活のなかで必要なものを消費すればするほど森が再生されていくような仕組みをビジネスを通して作り上げる、といったことに取り組んでいます。同時に都市生活を営んでいる方には、都会にいながら森を再生するためにできることを伝えていくイベントも定期的に開催しています」(深本)
環境活動家として気候危機にも対峙する深本に、走行中のCO2排出量がゼロである、水素で走る燃料電池車であるクラウンFCEVはどのように映ったのか。
「感動的な体験でしたね。これが水素で動いているんだと思うだけでめちゃくちゃワクワクしましたし、環境に優しくて空気をきれいにしながら走るクルマに乗っていることに興奮すら覚えました。このクラウンFCEVのように、いよいよ私たちは、エシカルな暮らしが実現できる大きな歴史的転換点に立っていると確信しました」(深本)
ただしFCEVを取り巻く環境はこれからさらに整備が必要。生活者が不便を感じることなく使うには価値観の変容と、それにともなって行動の変容が必要だと深本はいう。
「社会が利便性や時間効率を追求していった結果、人間の経済活動によって、地球の限りある天然資源を自然界が再生しきれないスピードで消費しすぎてしまった。地球上に生息している多くの森林が破壊され、気候変動をもたらす結果を生んでしまった。これからはネイチャーポジティブがグローバルスタンダードな価値観として、ビジネスを転換していくことが求められます」(深本)
そんな深本と今回対談をするのが、深本が試乗したクラウンの開発責任者であるトヨタの清水竜太郎。トヨタのFCEVであるMIRAIの開発責任者でもある清水は、FCEVのみならず水素エネルギーとモビリティの関係を深く知る人物でもある。そんな清水に深本がクラウンFCEVに試乗した感想を熱っぽく語るところから対談が始まった。
深本:試乗しながらディスプレイに映し出されるエアピュリフィケーションゲージで、自分がどれだけ空気をきれいにしているのかが、人間一人あたりの呼吸の量で表示されるのがとても興味深く感じました。走れば走るほど空気をきれいにすることが実感できてワクワクしたんです。
清水:あれはCO2排出量がゼロであるだけでなく、空気をよりきれいにして排出するという燃料電池車ならではの機能ですね。バッテリーEVもCO2を出さないクリーンなクルマですが、FCEVは水素に酸素を反応させるために外からシステムに空気を取り入れるんですが、浄化能力の高いフィルターを通すので、副次的に排出する空気がきれいになります。僕らは「走る空気清浄機」なんて言い方をしますが、この効果を乗っているお客様に伝えたいなという遊び心から生まれたディスプレイ表示なんです。
FCEVをもっと社会のなかに
深本:これからの時代はクルマが走れば走るほど空気がきれいになる。持続可能な社会を作り上げるためにはどんどんCO2排出量を減らしていき、ネイチャーポジティブにしていきましょう。そんな価値観の変化がこれから重要になっていく中で、走ると空気がきれいになるクラウンというのは誰もが喜んで乗りたくなるクルマになっていくのではと感じました。
やっぱり自分で体感することって大事ですね。人間の経済活動によって地球や動植物まで喜ぶ、理想のサステナブルな暮らしが近い将来実現できるのではと期待して胸が躍ります。
清水:このクラウンというトヨタの代表車種が、FCEVを搭載したというのはまさに深本さんのように、広くみなさんに水素を知って頂き、FCEVの良さと価値を体感していただきたいからなのです。燃料電池車をもっともっと広げていくために、ひとりでも多くの方にFCEVに触れていただき認知をしていただいて、社会に受け入れられていく必要があります。ひとりひとりの体験の積み重ねというのは大変地道なことですが、こうやって社会受容性を高めていくことが必要だと捉えています。
Z世代にとってのクラウン=サステナブルになる
深本:私達、または私達の上の世代にとっては70年の歴史があるクラウンというのは懐かしさを感じるブランドかもしれませんが、そんな歴史を知らないこれからクルマに乗り始めるZ世代の人たちにしてみたらFCEVをラインアップに据えているクラウンというのは、サステナブルなクルマであるという新しい価値の創造の象徴として捉えられるのではないでしょうか。とても革新的な存在だと感じました。
清水:深本さんから革新という言葉を聞くことができて、鳥肌が立つような興奮を覚えました。実は、初代クラウンが誕生した1955年から現在まで大事にしてきた開発のスピリットが、まさに「革新と挑戦」なんです。FCEVをクラウンに採用したのも、その革新の精神からの挑戦です。わたしたちの思いを鋭く見抜かれて、驚きました。
──革新と挑戦というキーワードからは、今回のクラウンのモデルチェンジにあたって4つのボディタイプのクラウンが登場したということも衝撃的でしたね。
清水:お客様のニーズやクルマの使い方、クルマに求めるものが多様化しているなかで、クラウンはひとつの形じゃなくていいんじゃないかという飛躍が起こりました。同時にパワートレインも多様なものを用意しています。ハイブリッドがあり、プラグインハイブリッドがあり、燃料電池もあります。ライフスタイルの多様化とともにエネルギーソリューションの多様化ということにも対応しています。
深本:必ずしもすべてがBEVまたは、FCEVである必要はないですよね。今日クラウンFCEVに乗らせていただいて、温室効果ガスの排出を気にすることなく走ることができるクルマがもう実現しているんだということは実感しました。あとは多様な生活を送る生活者が、それぞれの暮らしにあっていてなおかつ地球のためになるクルマを選べる、そんな選択肢がもっと増えていくことを期待したいなと思います。
深本南
10歳で環境活動家を志し、大学在学中の2002年に環境団体を共同設立。ビジネスを通じた社会貢献を目指し、2004年にファッション業界に転身。
ラグジュアリーブランドを中心としたECコンサルティング、事業部長、クリエイティブ室室長などを経て、2020年にサステナブルな暮らしをガイドするメディアコマース「ELEMINIST」を創設。2023年に株式会社UPDATERエグゼクティブアドバイザーに就任し、オーストラリア発エシカル評価機関「Good on you」の日本版「Shift C(シフトシー)」をローンチ。
そのほか、エシカルなキオスク「super normal market」をプロデュースするなどサステナビリティをテーマにした事業を多数展開している。
清水竜太郎
1999年トヨタ自動車入社、車両系生産技術部門にてボディ生産ラインの生産準備や設備開発業務を担当。途中3年間のアメリカ赴任をはじめ、海外車種や海外工場の立ち上げに従事。2017年1月MS*製品企画へ異動。燃料電池車(FCEV)MIRAI、16 代目クラウンの開発主査として車両全体の開発を取りまとめる。2023年10月よりZSチーフエンジニアとしてクラウン、センチュリー、ミライの全体総責任者を担う。
*MS:ミッドサイズヴィークルカンパニー
Photographs by Seiichi Saito
Edit and Text by Tsuzumi Aoyama
hair & make-up by TOYO
styling by Sayaka Suzuki
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