OCEANIA
ランドクルーザー“70”を語る上で、
オーストラリアほど雄弁な国はないだろう。
国土の約80%を「アウトバック」と呼ばれる
砂漠や荒野が占めるこの地では、
ある時は鉱業や牧畜を支える産業の道具として、
ある時は移動を支えるライフラインの道具として、
ナナマルは世界で最も酷使され続けている
ワークホースとなる。
それは、過酷な自然と対峙しながらもなお、
懸命に生きる人たちのために他ならない。
この国のあらゆる場所で力を発揮する、
ナナマルの働きについてスポットライトを当てた。
その一生を、
鉱山に捧げるクルマ
鉱山都市、マウントアイザ。この町の地中深くには、世界最大規模の銅鉱山が広がる。多種多様なミネラルを含む土に囲まれたトンネル内では、一般的にクルマは金属の腐食によってすぐに錆びて朽ちてしまうが、ナナマルならその優れた耐久性により長く稼働し続けられる。それを表すかのように、120台ほどのナナマルが土埃の舞う地下1,900mの坑道で駆使されていた。
これらの車両には、人員輸送用のシートが取り付けられたモデルや、伸縮式の高所作業台を装備したモデル、3ドアに改造されたロングバンなど、特殊なバリエーションがある。
地下作業場には、日常的な点検や部品交換を行うための整備工場が設けられていた。そのため、大きな故障がない限り、一度地下に降りたナナマルは引退するその瞬間まで二度と太陽を見ることはない。

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE
鉱山鉄道を見守る、
走るドクター
世界でも有数の鉄鉱石の産地、西オーストラリア州北部にあるピルバラ地方。この地で採掘された鉱石を港まで輸送するため、専用の鉄道が用意されている。鉄道網は1,700kmを超えるものもあり、ディーゼル機関車が鉱石を安全に運ぶためには、線路には一切の不備があってはならない。そこで力を発揮するのも、やはりこのクルマだ。
ある時は、線路上を走る軌道車として、レールや枕木の交換のために。またある時は、改造された6輪の車体で線路脇の「アクセスロード」という専用ルートを使用し、重荷物を運びながら点検作業を進めるために。十分な機動力とフレーム車ゆえのカスタマイズ性を兼ね備えたこのクルマは、業務ごとに姿を変えながら、鉄道の安全な運行を支えている。

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

s.koyari

アウトバックの
カウボーイ
アウトバックには、広大な面積を占める放牧場が数多く存在する。その規模は一つの市ほどのものから、県ほどの広範囲に及ぶものまである。果てしなく広がる草原の中で、スプリンクラーといった重機の牽引や、牛や羊の脱走を防ぐフェンス点検などの責務を果たすため、ナナマルは広大な土地を所狭しと巡回している。このクルマに乗って、金属の首輪をかけられた牛たちを誘導する彼らはストックマンと呼ばれている。その姿は、まるで現代のカウボーイのようだ。
どんなに重いものでも運ぶことができ、舗装されていない道を進む。どんなに酷使しても壊れない、壊れても容易に修理できる。だからこそ、信頼できる道具として、今日もナナマルは使われ続けているのだ。

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

Photo:GEOSCOPE
この国の命を守る
使命を宿して
鉱山や牧場だけでなく、人命救助のための行政サービスでもナナマルは活躍する。その代表例がキャブシャシーモデルを改装した消防車だ。ポンプなど消火活動に必要な機材を搭載し、現場の最前線で力を発揮する。ドアハンドルは、消防隊からのリクエストを踏まえて樹脂製ではなくアルミ製を採用。これは、樹脂製では熱でハンドルが溶解し、ドアが開かなくなる恐れがあるからだ。危険な場所で扱う道具だからこそ、細部までその機能性へのこだわりが光っている。
ほかにもアウトバックの警察隊ではパトカーとしても活用され、 70ロングバンモデルは救急車として利用される。それは、このクルマの機動性が評価されているからに他ならない。“この国の命を守る”という気高い使命を宿し、ナナマルは走り続けている。

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

s.koyari

愛車を超えて、
家族になったクルマ
タスマニア州を除くすべての州に「トヨタ ランドクルーザー クラブ オブ オーストラリア」と呼ばれるクラブがある。それらは確固たる運営組織を持ち、様々なイベントやツーリングを開催し、ナナマルを語り合いながら、その絆を深めている。さらに、定期的に各州のクラブが一堂に集まる大型イベントも開催され、お互いの信頼関係を築くのと同時に、将来的な発展や、総合的な活動方針について議論している。
これほどクラブ活動が活発なのは、国全体がアウトドア活動に適した環境であることも一因だろう。オーストラリアでは、週末のキャンプから数ヶ月にわたる長旅を楽しむ人も多い。ともに過ごす時間が長いからこそ、この国では、ナナマルは移動手段という存在を超えて、家族の一員として大切にされている。

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Photo:GEOSCOPE
オーナーの数だけ、
ナナマルがある
オーストラリアでは、日本でも販売実績のある70バンやダブルキャブのほかに、シングルキャブ、トゥループキャリアをラインアップ。全部で4つのタイプが、独自の純正アクセサリーを備え、それぞれのオーナーの目的に応えている。
例えば、「シュノーケル」と呼ばれるパーツ。これは、車体上部から空気を取り込むもので、エンジンルームに水や土埃が侵入するのを防止する。雨季に道路が冠水し、内陸では一年を通して土埃が舞う、この国独自の環境に順応するために搭載されている。またピックアップモデルでは、スペアタイヤを2本搭載可能な専用デッキを採用している。これは、荒野における長距離移動に適応するために設けられたものだ。
ほかにも、多くの企業においてオフロードで利用されるこの国では、日本以上に架装が盛んだ。それぞれの目的に完全にマッチするように改装されたこのワークホースは、徹底的に使い倒されている。オーナーの数だけ、ナナマルが存在する。

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE

Photo:Takeshi Namba/GEOSCOPE
汗、砂埃、笑い声。
人間のそばに、
ナナマルがいた。
鉱業、運送業、牧畜業から、緊急時の救命活動、さらにレジャーユースまで、
このクルマが活躍するフィールドは多岐にわたる。
そしてこれからも、人々の営みがある限り、このクルマはここで生き続けるだろう。
今日この瞬間も、この世界のあらゆる場所で、きっとナナマルは走り続けている。
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