
CROSS TALK Vol.01
唯一無二を
切り拓く者たち
先代の想いをつなぎ、
世界の期待にこたえる。
ランドクルーザー“70”の40周年は、この二人なくして語ることはできない。ランドクルーザーシリーズ全体を牽引する森津圭太CE(チーフエンジニア)と、“ミスター・ランクル”と呼ばれる小鑓貞嘉主査が、開発責任者としての矜持、その精神の継承、森津CEが心がける3原則、そして、すべての70ファンへの想いについて対話した。

森津 圭太 CE
1999年トヨタ自動車入社。ボディ設計部を経て、2006年製品企画部門担当として北米に駐在。2010年に帰国して、「カムリ」、「4ランナー」、「タコマ」、「ランドクルーザープラド」などの製品企画に携わる。現在はランドクルーザーシリーズ、北米トラックシリーズのチーフエンジニアを務める。
※2024年3月時点

小鑓 貞嘉 主査
1985年トヨタ自動車入社。第1技術部に在籍し、ハイラックス およびランドクルーザープラドのシャシー設計を担当。1996年からは、トヨタ第3開発センターにて製品開発を担当、2001年よりランドクルーザーと、新型フレーム系プラットフォームの製品開発に、主査として従事。2007年、トヨタ第1開発センターのチーフエンジニアとなり、現在ランドクルーザー70系の開発に携わる。
※2024年3月時点





#01
いくつもの壁を超え、
辿り着いたナナマル
40周年

まずお二人の出会い、それぞれの印象についてお教えください。

小鑓主査
たしか当時の上司のご自宅で、一緒に食事をしたのが最初かなと思います。はじめは直接業務の付き合いはなかったよね。

森津 CE
そうでしたね。小鑓さんをはじめ開発責任者は雲の上の存在でしたから、お会いした時にとても緊張したことを覚えています。

小鑓主査
えっ!そうだったの?森津さんはいつもニコニコしていたから、全然気づかなかったよ。それにしても、ランドクルーザー全体の開発責任者としてプレッシャーがある中で、笑顔を絶やさないのは本当にすごいよね。

森津 CE
ありがとうございます。最近の小鑓さんとの関係性で言いますと、小鑓さんがランドクルーザー“70”の開発主査で、私はランドクルーザーシリーズ全体の責任者ですね。70の開発に関しては、小鑓さんを中心に70のチームメンバーに推進していただいていましたね。

小鑓 主査
そうだね。森津さんは常に全力投球というイメージを抱いています。逆に今の僕はどんな印象ですか?

森津 CE
なんか照れますね。小鑓さんはランドクルーザーの権威のような方ですが、世界中に足を運び現地でお客様の声を聴きながら、主体的に行動を積み重ねているところが印象的でした。やはり国内外問わずランドクルーザーを発信するためには、相応の努力と行動が必要なのだと、改めて感じましたね。

この度、70の再々販も経て、40周年を迎えますが、今の率直な心境をお聞かせください。

小鑓 主査
少し昔話になるのですが、私は1985年にトヨタに入社し、その前年の11月に初代70が誕生しましたので、このクルマとはほぼ同級生なんです。だからこそ、このクルマにかける思いは人一倍強いものがありましたし、40周年を迎えることには、言葉では言い表せない想いがありますね。

森津 CE
小鑓さんの70への想いは、私にもひしひしと伝わってきました。70はワークホースとしてお客様の期待に応えてきたクルマです。フルモデルチェンジをせずに、40周年までこられたのは、お客様の声をよく聞き、変わらないながらも必要なものだけを変化させてきたからですよね。この点は特に大切だと感じていました。

小鑓 主査
その通りです。現地のニーズを汲み取るためには、現地に赴く必要があります。そのため、70の“第二の故郷”とも呼ばれるオーストラリアに幾度となく足を運びました。たとえば2023年の再々販の時も、はじめは設計と性能検証を繰り返しても、いい結果を出せずにいたのですが、現地での使われ方や現地の声を反映していき、試行錯誤を重ねる中で少しずつ光が見えてきました。

森津 CE
いくつもの困難がありましたよね。70は必要最小限の変更を行いながら、安全性を担保し、すべての基準をクリアした上でお客様に満足してもらう必要があります。障壁を乗り越えて、再々販を実現し、40周年を迎えることができ本当に感慨深い気持ちです。

小鑓 主査
同感です。完成したクルマを見るのは開発者として大きなやりがいの一つですよね。ランドクルーザー“70”シリーズには無駄は削ぎ落とした“機能美”を追求しよう、という先代から受け継がれる想いが宿っています。その想いに向き合った結果、2023年モデルでは丸目を選択し、正側面などは40・60を彷彿させるものにしました。機能を突き詰めていけば、自ずとランドクルーザーだと一目でわかる意匠になるのだなと感じています。

森津 CE
確かに。極めて70らしい変化だなと感じました。お客様にも喜んでいただけるものになったのではないでしょうか。

小鑓 主査
そうですね。JMS(ジャパンモビリティショー)でも、若い方を含めていい意見をたくさんいただきましたし、現地テストを実施したオーストラリアでも評価をいただいています。このような結果に結びついたのは、ご協力いただいた現地の方達と開発チームメンバーのおかげです。

森津 CE
小鑓さんをはじめ70チームの皆さんの“期待以上”を生み出す姿勢など、見習うべき点は本当に多いと思っていますし、しっかり伝承していきたいなと思っています。
#02
自ら問い、自ら聞き、自ら走る。
それが開発責任者の第一歩

開発責任者として守り抜いてきたこと、受け継いでいきたいことをお教えください。

森津 CE
私は、小鑓さんや先代の開発者のみなさんから脈々と受け継がれてきた精神を守るために3つのことを意識しています。1つ目は、継承と進化です。先代の思いを継承しなければランドクルーザーをつくり上げることはできません。ですので、私が最初に取り掛かったのは小鑓さんたちの話を聴き、専門書を読み漁り、歴代シリーズについて腑に落ちるまで思考し続けることでした。

小鑓 主査
先ほど森津さんが話した通り、70は必要最小限の変化だけを行い、根本を変えないということだけ守っていただければ、あとはやりたいように突き進んでもらいたいですね。

森津 CE
はい。2つ目は現地現物ですね。小鑓さんは社外の人に対するホスピタリティや接点を大切にされています。私もその姿勢にならい全国のトヨタ販売店に出向いたり、ファンクラブにも参加したりして、生の声を聞いて、開発に織り込むことを意識しています。

小鑓 主査
大切なことだよね。70は世界の地域ごとに使われ方が本当に違います。地域ごとの使われ方を観察して、お客様の一番近い位置で、隠れた本音も含めて耳を傾ける。そして、その声に寄り添った開発をしてほしい。なにより、お客様目線が一番大事ですからね。

森津 CE
はい。そして3つ目が自らハンドルを握り続けることですね。国内外のオフロードを走り、現場メンバーと会話をしながらクルマづくりを実践しています。この3つを行なってようやくランドクルーザーの開発責任者の入り口に立つことができたなと感じています。

小鑓 主査
森津さんがいうように、私も学生時代からラリーに参加しドライバー視点から設計の着想を得たりしていましたし、世界中を回りながら開発をしてきました。これからもランドクルーザーの根っこにある精神は変えずに、さまざまな挑戦を続けてほしいです。森津さんならそれができると思いますので。

森津 CE
ありがとうございます。小鑓さんから責任者の役割をバトンタッチしましたが、ランドクルーザーの開発精神はブレずに守り続けたいと考えています。70は、40周年を迎えましたし、これからも50周年、そして100周年へと進んでいきたいです。
#03
開発陣、そしてファンとともに、
「唯一無二」を育んでいく

改めて開発メンバーに伝えたいことをお教えください。

小鑓 主査
ランドクルーザーは道なき道を走る、生活を守る役割を担っています。ランドクルーザーの使われ方、お客様の期待値などを熟知し、トヨタ社内の設計基準や評価基準だけにとらわれないでほしいです。

森津 CE
小鑓さんの言うとおりですね。これまでいろいろな車種を担当しましたが、特にランドクルーザーは、要求、スペックを満たすのが本当に難しいクルマです。その一方で、このクルマは一番過酷な道を走破できる、トヨタが誇るロングセラーモデルです。私自身このクルマに携われることに誇りを持っていますし、メンバーにも同じ気持ちで開発に臨んでもらいたいなと思っています。

小鑓 主査
誇りを持つのはとてもいいことですね。より具体的なことを言うと、ランドクルーザーは自然との戦いになるので「本当にこれで大丈夫か?」と、何度でも立ち止まって考える開発をしてほしいです。自分自身で問い続けて、探求してもらえたらと感じています。

森津 CE
自問自答を重ねた上で、クルマに乗り、クルマに触れ、図面を書き、評価をして、みんなと会話する。その先にしか人を感動させるクルマはできません。一緒に開発したメンバーは着実な開発ができる人としてこれからも活躍してほしいです。

70ファンへのメッセージをお教えください。

小鑓 主査
おかげさまで今でも世界の各地域の多くのファンの方とのつながりはあるのですが、みなさまには本当に感謝しかありません。ランドクルーザー“70”はどのような環境でも壊れないように、また壊れたとしてもすぐに直せるように必要な機能以外は削ぎ落としたシンプルな道具です。この70という道具をライフスタイルに合わせて手を加えていただけたらなと思います。私はこれからも世界の各地を回っていきますので、たくさん自慢話を聴かせてください。一人ひとりの話をお伺いできるのは、開発者としてこの上ない歓びですから。

森津 CE
私がファンのみなさまにお約束しているのは、必ず直接対話することです。開発者目線で会話をするのではなく、イベントや試乗会、レースに同じ目線で参加し、ともに楽しみ、会話したいと思っています。その中でランドクルーザーとは何か?70とは何か?を一緒に考え続けていきたいです。みなさまとの対話の中に、その答えはあると確信しています。

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