走行性能
モータースポーツ
スーパー耐久シリーズで鍛え上げたGRカローラの基本性能。
モータースポーツの現場で、徹底的に鍛え続ける。GRカローラのアイデンティティはその継続にこそあります。競技の現場で素早くトラブルの原因を特定し、対策を施す。レースに勝ったとしても、さらに貪欲に進化させてゆく。エンジンの性能向上やフロント形状の変更はもちろん、リヤサスペンションのジオメトリー改善、シャシー・ステアリングの締結剛性向上など、クルマの表面には現れない進化も、すべてはレース現場で鍛えたからこそ実を結んだものなのです。
高精度な組み付け作業。
愛知県豊田市の元町工場のGR Factory。GRカローラはそこで通常より時間をかけて一台ずつ高精度につくり上げられます。スポット溶接の打点増しや構造用接着剤の追加塗布などボディ剛性の強化に始まり、特にアライメントや車高など走りに影響を及ぼす項目に対しては、パーツをひとつずつ測定して最適な組み合わせになるようにパーツを選別して組み付けを行っていきます。モータースポーツの現場でプロドライバーによって鍛え上げられた走行性能を、極めて高い精度で製品化しています。
高剛性ボディ
スポーツカーに求められる強靱さを目指して。
GR-FOURの走りをしっかりと支え、ドライバーの操作に俊敏に反応できる強固な基本骨格を目指してボディの高剛性化に取り組みました。愛知県豊田市の元町工場にあるGR専用ラインGR Factoryにおいて、溶接打点の間隔を通常よりも短くし、カローラ スポーツ比で349点ものスポット溶接増し打ちを実施。またボディ全体に使用する特殊な構造用接着剤の塗布箇所を2.7m延長。部品同士の結合剛性を向上させることで、運転操作に対する高い応答性、高G旋回・高速走行での優れた操縦安定性を身につけました。
異素材を組み合わせた軽量ルーフを採用。
形状自由度が高いSMC*1工法で成形されたCFRP*2素材のルーフパネルを採用。プラスチック(樹脂)を母材に、炭素繊維(カーボンファイバー)を強化材として加えたCFRP素材を使用することで、軽快なスポーツ走行に直結する軽量化と低重心化を実現しています。
スポーツ走行時の操縦安定性をレベルアップ。
GR Factoryで組み上げられた高剛性基本骨格を、ブレースの追加によってさらに強化しています。リヤホイールハウス間や床下トンネル、タンク前の床下に計4点のブレースを設置。スポーツ走行時の高度な操縦安定性に寄与します。
シャシー
GR-FOURの最適駆動力配分を余さず路面に伝え、意のままのコーナリングに貢献。
日常のドライビングからサーキット走行まで楽しめる卓越した足まわりを構築し、野性味あふれる走りを実現するために、フロントには高剛性かつ軽量なマクファーソンストラット式、リヤには高い応答性とグリップ力をもたらすダブルウィッシュボーン式のサスペンションを搭載しています。パワフルなGR-FOURの駆動力とハイグリップタイヤからの入力を受け止め、優れた操縦安定性を追求するために、GA-C*ワイドサスペンションを採用。ブッシュのピロボール化やスプリング、ショックアブソーバー、ホイールアライメントの最適化も行うことで、GR-FOURの最適駆動力配分を余すところなく路面に伝え、高度な旋回加速性能を実現しています。
更なる安定性と速さを実現する旋回性能の進化。
リヤアクスルの回転中心であるトレーリングアーム取付点を上げることで加速時のリヤの沈み込みを低減。アクセル操作に対する車両姿勢変化を抑えることで、駆動力の応答性を向上させるとともに安定した姿勢でのコーナリングを実現しています。
更なる安定性と速さを実現する旋回性能の進化。
前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵し、旋回時の車両姿勢と内輪の接地荷重特性を改善することで旋回中の車両安定性を向上しました。
リヤのコイルスプリングとスタビライザーのばね特性を見直し、それぞれのロール剛性の分担率を最適化することで旋回時のリヤタイヤの接地性を向上させ、車両コントロール性を高めました。
より対話できるクルマを目指し、クルマとの一体感をさらに向上。
シャシー部品の締結ボルトの一部に締結剛性の高い特別なボルトを採用。ロアアームとロアボールジョイントの締結部はステアリング操作に対する応答性を、リヤショックアブソーバーとボディの締結部はステアリング操作に対するリヤのグリップ感を向上させています。
より対話できるクルマを目指し、クルマとの一体感をさらに向上。
ステアリングコラムとインストルメントパネルリインフォースメントの締結部に締結剛性の高い溝付ワッシャーボルトを採用。直進安定性とステアリング操作に対するダイレクト感を向上させました。
ハイパワーに見合う制動力と優れたコントロール性を確保。
フロントアルミ対向4ポットキャリパー、リヤアルミ対向2ポットキャリパーに高μパッドを組み合わせ、高い剛性と耐フェード性を確保しました。ブレーキディスクはスリット入りの放熱性に優れた大径ベンチレーテッドディスクを前後に装着。さらに冷却性に優れたスパイラルフィンを採用することで、熱変形を抑えて安定した制動力を発揮させます。ブレーキフィーリングはペダルストロークをショートに、踏力を重めに設定することで、スポーツ走行時の優れたコントロール性確保と、ヒール&トゥのしやすさに配慮しました。
パワートレイン
最高出力304PS、野性味あふれる走りの源。
モータースポーツの現場で鍛えた軽量・コンパクトな1.6L 3気筒ターボダイナミックフォースエンジン(スポーツ)をさらに高出力化。最高出力304PS(224kW)/6,500r.p.m.を達成しています。また、レースでのエンジン使用領域を分析し、高負荷での使用に長時間耐えられるよう基本コンポーネントのポテンシャル向上に取り組んだ結果、現行型に対してトルクを30N・m向上。最大トルクを400N・mまで高め、特にコーナー立ち上がりの加速で必要となる中速域でのトルクアップを実現しました。
■徹底した軽量化による高レスポンスの追求
アルミダイカスト製シリンダブロックの浅底ウォータージャケット化と細径ヘッドボルト化に加え、中空組立カムシャフトを採用。
■高レスポンスを追求したターボシステム
大型ターボ採用の背反であるレスポンス向上対策のために、ボールベアリングターボとアブレダブルシール構造を採用しました。通常時にはターボのウェイストゲートバルブを閉じて走行し、アクセルONと同時にターボラグなくトルクが出る制御も採用しました。
高出力と静粛性、リニアな車両挙動に貢献。
回転数に応じて作動するセカンダリーダクトを設定。低回転時はダクトを閉じて優れた静粛性を実現し、高回転時はダクトを開けて低圧損化を図り、エンジンの出力アップに寄与します。空気量センサー部の帯電を減少させるアルミテープの採用により、アクセル開度にリニアに反応する車両挙動にも貢献しています。
エンジンの高出力化に貢献し、レーシーなサウンドを演出。
厚みのある新形状バッフルがリヤビューでひときわ目を引く3本出しマフラーを採用しました。中央マフラーには排気バルブを設定し、エンジン高回転時にバルブを開くことで低排圧化を実現。エンジンの排気抵抗を抑え、出力アップに貢献します。
トランスミッション
実戦で鍛え、つくり上げられた新型8速AT。
GRカローラに搭載された「1.6Lターボ×4WD」を楽しみ尽くすために開発されたGR-DAT。簡単に運転できることではなく、モータースポーツで勝つことを目的に開発されたこのATによって、どんな方でもGRならではのスポーティで野性味あふれる走りを体感できます。Dレンジにギヤを入れるだけで、プロドライバーと同じタイミングで素早く変速。車両状態を的確にモニタリングし、サーキットを最速で走るためのギヤを正確に選択します。これによりシフト操作によるタイムロスを低減し、誰もがGRカローラの性能を引き出すことができるようになります。また、AT内部にある各クラッチと各ブレーキの油圧を制御する、高応答小型リニアソレノイドを新開発。シフトレバーをMポジションにしたシーケンシャルシフトマチックモード時に、世界トップレベル*の変速スピードを実現しました(シフトアップ時)。GR-DATは、モータースポーツに馴染みのない方がスポーティな走りを体験するためだけのものではありません。上級者にとっても、シフト操作に気を取られず、ステアリングやブレーキング、アクセルコントロールに集中して走ることができるというメリットがあります。ギヤ比は、6速までMT同等に設定。そのため、ATであってもエンジンパワーを最大限引き出すことが可能となっています。さらに7速、8速を加え多段化することで、一般道を含めたカバーレンジの広さも両立しました。
SPORTモード時は、ドライバーの意思を読み取ることで、プロドライバー同等のギヤ選択をDレンジで実現。これにより、シフト操作によるタイムロスを低減し、誰もが性能を引き出しやすくなります。
最大効率での発進が可能に。
ローンチスタート制御を採用し、車両停止状態からの力強い発進加速を実現。ローンチスタート制御がアクティブの時は、通常のストール発進よりもエンジン回転数が高くなります。
コーナー立ち上がりのトラクション確保に貢献。
アクティブトルクスプリット4WDシステムの性能をさらに引き上げるトルセン®LSDをフロント&リヤデフに設定。常に変化する路面状況に最適なトルクを瞬時に配分し、コーナリングにおける鋭い立ち上がり加速や、安定したコントロール性能の確保に貢献します。
スムーズな変速をアシストし、スポーティな走りを楽しめる。
iMTスイッチを押すと、6速iMTがスタンバイ状態になります。この状態で変速動作(クラッチ操作、シフト操作)を検出すると、変速後のエンジン回転数を合わせるように制御し、スムーズな変速をアシストします。また、日常からサーキットまで気持ちの良い加速を楽しめるようにファイナルギヤを設定しています。iMTスイッチは、シフト前方位置に配置。運転操作系スイッチをシフトまわりに集約することで優れた操作性を実現しました。
4WDシステム
“GR-FOUR”としてトヨタスポーツ4WDのDNAを継承。
あらゆる路面状況において4輪へのトルク配分を即座に制御し、トラクションを余すことなく路面に伝達。発進から高速域までの幅広い速度域で、ダイレクトな操作フィールを可能にします。強烈なGが加わるコーナーでは4輪で路面をしっかりグリップ。前後輪に最適なトルクを与えることで鋭く旋回、ドライバーの意思に応じた車両姿勢へとクルマを自在にコントロールできます。
3つのモードから状況に合わせた走りを選択。
電子制御多板クラッチを用いたアクティブトルクスプリット4WDシステムにより、前後輪のトルク配分を「NORMAL(前輪60:後輪40)」、「GRAVEL(前輪50:後輪50)」、「TRACK(前輪60~30:後輪40~70で連続可変)」の3つの制御モードから選択できます。
■NORMALモード[前輪60:後輪40]
静的な荷重配分に合わせた前輪寄りの前後駆動力配分とすることで、通常走行領域における旋回性能と安定性を高いバランスで両立。安心感のある走りが体感できます。
■GRAVELモード[前輪50:後輪50]
加速時の荷重移動を考慮した前後駆動力配分で、トラクション性能を最大限に発揮することを狙ったモード。タイヤ摩擦円の限界領域でも4輪のトラクションを読みやすく、前へ車両を進める車両挙動としています。
■TRACKモード[前輪60~30:後輪40~70で連続可変]
ドライバーの操作と車両状態に応じ、駆動力をフロント寄りからリヤ寄りまで連続的に可変させるモード。アクセル操作に応答するリヤタイヤのトラクションによるコントロール性を重視しています。
走りのテイストを自由に選択。
ダイナミックな加速を楽しみたい時、穏やかに走りたい時、走行シーンやドライバーの気分に合わせて走りのテイストを選択できます。センターコンソール上に配置しているドライブモードセレクトスイッチで切替可能です。従来の4WDモードセレクトに加え、スポーツ走行と日常生活での使い勝手を両立するため、ドライブモードセレクトを新設定。CUSTOMモードではお客様のお好みや参戦するモータースポーツの特性に合わせ、電動パワーステアリング、パワートレーン、エアコンの設定ができます。
サーキットでのスキルアップなど、走りを追求できるモード。
ドライブモードがSPORTまたはCUSTOMモード時に、VSC OFFスイッチを短押しするとEXPERTモードが作動。自らの運転テクニックでサーキット走行を楽しめるよう、ドライバーによるコントロール領域を最大限に残しつつ、車両挙動が大きく乱れた場合には乱れを緩和させる制御が介入します。
エアロダイナミクス
車両の運動性能をさらに高めるボディへ。
圧倒的な運動性能を引き出す空力性能を生み出すため、徹底的なボディ形状のつくり込みを行いました。ダウンフォースの向上とドラッグ(空気抵抗)の低減、そして優れた安定性を実現しています。また、冷却性能と空力性能を両立するため、フロントバンパー・グリル造形を最適化しました。グリルの開口を拡大し、ワイドで低重心なプロポーションを構築。正面から受けた空気をスムーズにサイドに流すバンパーコーナー造形とすることで、ラップタイム向上に貢献できるフロントデザインを実現しました。
限界走行時でも安定的に高い性能を維持するための冷却対策。
エンジン冷却性能を向上し、高負荷での走行継続可能時間を延長するため、サブラジエーターを車両右前方に配置。さらに、GR-DAT(8AT)モデルには水冷のATFウォーマー&クーラーに加え、空冷のATFクーラーを採用。これらの冷却器に効率よく空気を取り込むため、フロントのグリル開口を拡大しています。
[A]サブラジエーター[RZにメーカーオプション]
[B]ブレーキダクト
[C]ラジエーター
[D]インタークーラー
[E]空冷ATFクーラー[GR-DAT(8AT)に標準装備]
より安定した制動力を確保。
富士スピードウェイなど、サーキットでの走行データをフィードバックし開発。フロントブレーキローターに直接風を導いて冷却効果を向上することで、ブレーキ温度の上昇を抑制します。
サーキットモード
サーキットでしか味わえない特別な車両セッティングモード「サーキットモード」
抑えていた制御を解放し、車両の本来持っている性能をさらに引き出す「サーキットモード」。GPSによる位置測位より、サーキットに入ると全国のサーキット特性に合わせて、再加速時のアクセルレスポンスを向上させたり、国内主要サーキットでリミッター上限にかからないように車速を引き上げたり、車両の設定を変更できます。
サーキットモードのON/OFF切替や各種設定変更は、スマートフォンアプリで操作。GRカローラのポテンシャルを引き出す各種制御変更、その場で細かなセッティングを行うことができます。
エンジン回転数やメーター画面上部のLEDインジケーター等の専用表示により、車両の状態やシフトアップタイミングなどをドライバーへ視覚的に伝達し、サーキット走行をサポート。