合理性ではなく、ロマンで選んだコロナバン。

コロナバンを選んだ理由は？

上京を機に学生時代から乗っていた古いクルマを手放すことに。合理性だけを追求すれば、交通機関が発達している東京での暮らしに、クルマは必ずしも不可欠ではない。しかし、心のどこかに「いつかまた」という気持ちも残っていて……まぁ、ロマンですよね（笑）。蓋をしていたその思いが再び強くなったのが約7年前。そして次なる相棒候補を探すなかで、出会ったのがコロナバンでした。毎日のように中古車販売のポータルサイトで全国の在庫を調べ、広島のとある販売店で見つけたのがこのクルマ。角ばったフォルムからなる独特の雰囲気は、愛くるしくも質実剛健。堂々たる佇まいに惹かれ、その場で購入を決めました。

マニュアル車との縁は幼少期から。

クルマを好きになった原点は？

子どもの頃から実家のクルマは全てマニュアル車でした。母がオートマを選ばない人だったので、免許を取って最初に運転したのも自然とMT車。操作する楽しさを身体で覚えた経験が、カーカルチャーへの関心を強くしたのだと思います。本格的に好きになったのは大学時代、知り合いの先生から旧車を譲り受けてから。そこから一気に日本の旧車文化に惹かれていきました。頑丈で長く乗れる日本車の魅力を知り、「いいものを大切に使う」という感覚が芽生えたのもその頃です。マニュアル車の操作感と、旧車ならではの手触りが現在のカーライフにつながっています。

コロナバンに宿る、日本のものづくりの美学。

気に入っているポイントは？

コロナバンに惹かれたのは、その角ばったプロポーションです。現代の車が丸みを帯びていくなかで、この直線的なフォルムは唯一無二。ブラウンの車体にシルバーのメッキが組み合わさった配色も僕好みなんですよね。さらにいえば、コロナの書体やGLのエンブレム、メッキの質感など、細部までこだわりが詰まっている。走りも意外なほどスムーズで、初めて乗る人から「乗りやすい」と驚かれることも少なくありません。こうした細部に宿る魅力に惹かれるのは、日本のものづくりの丁寧さや、機能美への敬意が根底にあるからだと思います。

日常を広げ、人との繋がりを生む存在。

クルマを持って変わったことは？

コロナバンに乗るようになってから、行動範囲が大きく広がりました。電車やバスの時間を気にせず、好きなときに好きな場所へ行ける自由は格別です。そして、旧車ならではの個性が周囲との会話を生むことも多い。年配の方から懐かしいと声をかけられたり、子どもが興味津々で見入ったり。ファッション面でも影響があり、ブラウンの車体に合う色を意識して服を選ぶようになりました。過度にギラつかず、当時の雰囲気を大切にするスタイルも、自分の生き方に合っている気がします。移動手段を超えて、日常を豊かにしてくれる存在。それが私にとってのコロナバンです。

古さも不便さも、自然体で受け入れる。

今後の付き合い方は？

旧車には不便な部分もあります。エアコンの効きは弱く、炎天下では少し苦労します。それでも「古いから仕方ない」と自然に受け入れられる自分がいます。乗る前に必ずボンネットを開けてオイルをチェックするのも日課になりました。外装は一度塗り直しましたが、今では経年による“やれ感”も個性として楽しんでいます。長く乗るには手間がかかるものですが、それを含めて魅力だと感じられる。派手にカスタムするのではなく、自分に馴染む形で、これからも自然体で付き合っていきたいと思います。

美学と価値観。「いいものを長く」使い続ける。

最後に、愛車への思いを聞かせてください。

コロナバンに乗ることは、私にとって「日本のものづくりへの敬意」を持ち続けることでもあります。商用車として作られた堅実なデザインに宿る機能美。当時の雰囲気を崩さず、フルノーマルで維持する姿勢。そして、経年変化も含めて受け入れる心持ち。「いいものを長く使う」という価値観は、クルマだけでなく日々のライフスタイルにも通じています。単なる移動手段ではなく、日常の真ん中にある相棒。これからも自然体で寄り添いながら、コロナバンと共に歩んでいきたいです。

撮影協力
株式会社tokyo basic car club

写真
Tomoro Nakasuji

記事
Kanta Hisajima