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mont-bell C.E.O 辰野 勇 Photo
mont-bell C.E.O 辰野 勇 ISAMU TATSUNO

山を愛し、ワイルドウォーターに恋している辰野勇さんは、アウトドア用品メーカー「mont-bell(モンベル)」の創業者。
青春時代、山一筋に生き、トップクライマーになると日本で初めてクライミングスクールを開校し、登山のすばらしさを伝え、28 歳で起業。
「Leading Edge」を信条とし、「Function is Beauty」をコンセプトにしたモノづくりを実践されている辰野さんが思う、冒険の魅力とは。

51%以上の可能性を持って挑戦する
日常に大きな不満もなく暮らしている人から見れば、8,000m 級の山に登山することや、ヨットにひとりで乗って世界1 周することは、非現実的なことかもしれない。しかしその冒険者たちが時代を切り開いていることは事実だ。
「好奇心を満たし、超えていくことが人間ならではの特性。それが冒険だと思います。フィジカル的なことだけでなく、全身麻酔を開発した花岡青洲や黄熱病の病原体解明に挑んだ野口英世もそうです。先人たちが自身や家族を犠牲にしても、未知の領域に挑んでくれたおかげで、今、私たちは快適な生活を享受できています」
思いが半分では賭け事になってしまう。51%以上の可能性を感じたら、挑戦してみる。
「100%の可能性などなく、たとえ99%あったとしても残りは自分で行動して100%の結果を見せるしかないと思います。冒険のモチベーションとなる好奇心と豊かな想像力でイメージすれば、やってみたいことが夢となり、一歩を踏み出せる」
こうして辰野さんは、アウトドア用品に最先端の機能素材を取り入れ、その先進的な製品が愛用者に絶大なる信頼を得ている。
もう一度、冒険について考えた
自ら数々の冒険をしてきた辰野さんは、冒険の持つ価値が評価される社会の実現と、他人と比べることのない自らの冒険を目指す若者を応援したいと考え「冒険塾」を発足した。
講師は、自身を含め、海洋ジャーナリストの内田正洋さん、北極点、南極点にバイクで到達した風間深志さん、グレートジャーニーに挑んだ関野吉晴さんなど、自らの冒険を実践している方々。
「冒険は人と比べることではなく、自分との挑戦。今だからこそ、キリの刃先のように誰もやったことがないことに挑戦する若者が必要です。こういった価値観を持った人は、おそらく人口の0.5%くらい。しかし彼らが先人たちのように時代を切り開くと思います」
人と比べるのは冒険ではなく競争。今あるものを磨き上げ進化させていくにはいい。しかしまったく新しいものを見つけるには、やはり自分の可能性を信じる人が、轍のない冒険の旅に出るしかない。
道具を使って限界を超える
大自然を目の前に、ウェアやシューズ、装備など万全な体制で挑む者もいれば、軽装で分け入る者もいる。どちらも優劣なく冒険している。
「道具を持たずに冒険する人も、たとえば雨でも快適に歩けるようにゴアテックスのウェアを着たり、滑りにくいシューズを履く。道具を使って限界点を高める。モンベルは、<Function is beauty><Light and Fast>をコンセプトに、機能性からくる美しさ、そして装備の軽量化で行動力が迅速となり安全性を高める製品を提供しています」
よりよい道具を使えば、自分の限界点を高めたり、大自然の中へもっと遠く、もっと深く行ける。
「私にとってクルマに乗ることは、目的ではなく手段。目的地まで安全、快適に届けてもらうのに、ランドクルーザーは定番でした。チベットなど登山に行くとき、途中、ボンネットまで水がかぶる川を渡ったり、岩が散在する道を走ったりと普通のクルマでは走れないところをランドクルーザーは走破する。冒険家にとっては定番の乗り物ですね」
クルマで移動し、登山口に着いてからが目的となる登山家にとって、たくさんの荷物と人を確実に運んでくれるランドクルーザーに絶大なる信頼を置いている。
ランドクルーザーに敬意を
「どんなに過酷な環境であっても目的地へたどり着き、無事に帰ってくることができる」
というコンセプトを持つランドクルーザーと、「アウトドアフィールドで快適かつ安全に過ごすこと」を目指すモンベルがコラボレーション。カヤックや自転車、その他アウトドアギアを運ぶトランスポーターとして、ランドクルーザー200 が各地のイベントで活躍している。辰野さんは、なぜランドクルーザーを選んだのか。
「チベットやネパールなど、過酷な場所へ行くといつもランドクルーザーがあった。昔から多くの冒険家たちを安全、確実に目的地まで運んでくれる唯一無二の存在。私もそのたびにお世話になったランドクルーザーをリスペクトしているので」
アウトドア用品製造だけでなく、アウトドアフィールドへ誘うイベントを企画し、人と自然との親和性を高めているモンベルは、辰野さんをはじめ、スタッフがみなアウトドア好きでスペシャリスト揃い。各地のイベントでスタッフとともに相棒としてランドクルーザーが活躍している。
冒険は未来を切り開く
冒険は自己への挑戦だが、達成すると人間の可能性がもっとあることを証明する。今まで非常識、不可能だと思われていたことが、新たな常識、可能性としてあらゆる人の指標となる。だから冒険は自分のためだけでなく、未来の人々のために役立っている。「冒険のモチベーションは好奇心。自分にこれができるのか、この先はどうなっているのか、想像力を働かせる。するとやってみたい、その先を見てみたいという夢を抱くようになる。そこから先は自分の思いで行動する」
数々の冒険の扉を開け、誰も見たことがない世界へ飛び込んでいった辰野さんは、こうして数々の美しい山々を見続け、新たに挑戦する人々を応援している。

記事:寺田 昌弘